第2話 クラス転移

足が地面につく感覚とともに、自分たちの服装が変わっていた。

制服だったはずの服装はいかにも異世界といった感じの服装だ。

それに、スマホを握っていたはずの手の中には槍のような武器を握っている。


周りのみんなも服装はローブを着ていたり、鎧を着込んでいたりと様々だ。

みんな動揺する中で、金と銀を主色とした鎧をまとったクラス長が前に出ていった。


「これはなんだ!なんの冗談だ!ここはどこだ!説明しろ!」


その言葉にみんな声を上げた。

男子は「そうだ!」や「もっと言え!」など急かす奴らもいる中、女子は泣いている人たちもいる。


「まさかの異世界かよ」


俺は基本ぼっちだ。

なので周りに聞こえない程度の独り言を言って気分をそらしている。

実際今、恐怖や不安がある半面、ドキドキと期待に心を躍らせていた。


そんな事を考えていると、ひとりのおじさんがクラス長のそばに寄っていった。


「ああ、勇者様!我々の行いによってこの様な事になったのは深く、深く謝罪いたす。

ですが、どうか!どうか我々をお救いください!」


そう言いながらクラス長の前で跪いた。

俺は悟った。勇者やら、おじさんの言葉使いがなんとも日本とは思えない。

本当に日本ではない、地球ではない世界に来てしまった。

その時にはドキドキや期待など一瞬で吹き飛んだ。

よろしくない。

本当によろしくない。


異世界系の本を読んだことがあるならこの気持ちがわかるだろうか。


異世界だやったー!

となる本があったとする。

たしかに憧れだ、それに一度は行ってみたいと思った者も多いいだろう。

しかし、それはあくまで想像だ。

これは違う。

この世界で死んだら本当に死ぬし、お腹も空く。

そう。これは現実なのだ。

RPGのゲームをしたことあるならわかるだろう。

キャラクターを作り、チュートリアルをしてついに好きに動くことができる。

そんなゲームの中のキャラクターを自分の操作で何回殺したことがあるだろうか。

でも、ゲームなら復活する。

なら現実ならどうだ?

死んだら終わり。ゲームオーバーだ。

死んだ終わりのゲームなら皆口揃えて言うだろう。

「クソゲーだ」と。

そんなクソゲーにこのクラスは巻き込まれてしまったのだ。

そんな中自分勝手な俺凄いだろ主義のクラス長はそんな危険な世界にいるとは思っていない様でいい気になっている。

まずい。

おそらくあのクラス長が勇者なのだろう。

だからどんなに周りが言おうと勇者の言葉は絶対になってくる。

力では勝てない。それに高い地位にいる。

こんなモブみたいな俺や周りの奴らが何言ってもおそらく王様であろうヤツには伝わらない。

祈るしかないのだ。


俺凄いだろ主義のクラス長に俺たちの命を預け祈るしかないのだ。

「どうか変なこと言いません様に」と。


そしてクラス長は口を開きだした。


「面を上げよ」


「はっ、勇者様」


「召喚した理由を述べよ」


「はっ、勇者様」


跪いていた王は顔を上げ、喋りだした。


これはまずい。

あのバカクラス長が調子乗って変な言葉使いだし、あのまま行くと「俺が助けてやる」展開になりかねない。

最善は、帰る方法を聞き出し、それに向かって一直線がいい。

多少の犠牲が出るかもしれないが仕方がないことだ。

お願いだから変なこと言いださないでくれ。


周りも静かになり、王の話を聞いていた。

勇者も静かに聞いている。

王は言った。

魔王の勢力が拡大してこの世界に大きな影響を与えている。

そしてそれを阻止してほしい。と。

最後に帰還方法を言ってくれた。

その言葉に俺は絶望するしかなかった。

「帰還するには魔力が足らない。なので魔王の心臓を贄として帰還する」と言ってきた。

それを意味するのはボスを倒さないと帰れない。と言う意味だ。


ボス戦まで何年かかる?


死んではならない分、慎重に進むしかない。


その分遅くなる。


同時に魔王が勢力を拡大していく。


そのため魔王が勢力を拡大するよりも早くこちら側の勢力を上げる必要がある。


しかし、急ぐとその分危険。


王の話を聞き流しながら考えた。

頭を回転させろ、最善の方向に行け、自分で考えろ。

悶々と考えていた。


「うおおおおおおおおおお!!!キタコレ!!!」


考えている脳みそにその声が響いた。

声を出したのは勇者の取り巻きだ。

なぜこんな時にそんな事をを言っていられるのか。

しかし男はまだ言っていた。


「おい!みんな!!ボックスって言ってみろよ!!すっっゲーぞ!!!」


ひとりで盛り上がっている取り巻きは興奮していた。

そして数秒後に男子のほとんどは叫び出した。


「「「「おおおおおおおおお!!!」」」」


女子は不思議に思っているのか、キョトンとしている。

ボックス、か。


そっと独り言を言ったら自分の持ち物が脳内に流れ込んでくる。服装にその服の耐久値やら。


なるほど。


これは興奮するわけだ。

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