第2話 手紙

 遠く星の海を隔てたところにいるあなた。愛しいあなたに、手紙を書くと約束しましたね。

 ですが残念なことに、わたしとあなたの間には、十六光年もの距離が横たわっています。十六光年。電卓をお持ちなら叩いてみるのも良いでしょう。想像もできないくらい、遠い。いったい何と綴れば良いものか、手紙は白紙のまま、時間だけが過ぎてゆきます。

 通信手段が光速を越えられないのを前提に、敢えて「もしも」を語るとして。

 もしも、時間空間を超越しうる通信技術が見出されたとして――その日こそ、手紙という文化の終焉ではない?

 悲しまないで、愛しい人。わたしは元気です。でも、返信を手にするはずの三十二年後のわたしは、果たしてどうかしらね。

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