第二十四話 市場散策
翌朝、ナツに顔を舐められて起きる。
「ナツ、おはよー」
「わふっ!!」
寝ている時に急に舐められるとびっくりするけれどナツが可愛いから許す。いやこちらから頼むからもっとやって欲しい。お返しにワシャワシャと撫でる。そうするとナツも嬉しくなってペロペロが激しくなる。これは無限ループだ。俺はあったら詐欺と疑えと言われている永久機関を発明してしまったぞ。
就寝中はウニキャンの窓のシェードを閉めているのでシェードを開ける。シェードを開けると朝日が飛び込んできて寝起きの目には眩しい。今日は清々しい晴れ日和のようだ。
軽く朝食をとってナツと一緒に散歩に出かける。昨夜調べた市場を見に行くのだ。昨夜泊まった場所は、中心から少し離れたところにあるキャンプ場。街の中心では路上で車中泊できるような場所もないのでキャンプ場を探して泊まったのだ。
市場まではウニキャンで行っても駐める場所がない場合もあるので、今回は公共交通機関で行く。乗合魔導車が運行されているのでそれで市場まで出かけるのだ。
乗合魔導車の停留所から運賃先払いで乗り込む。一定区間は定額運賃で乗り換えする時にまた運賃を支払うのだが、乗る時に乗り換え札を貰っておくと一回だけ追加の運賃を支払わなくても乗り継ぎが出来るようになっている。ちなみにナツも一緒に乗っていいことは前もって確認済みだ。
市場に近い停留所で乗合魔導車を降りて市場に向かう。すると市場のある一本道の通りには両側にずらっと簡易的な庇を設置した屋台が並ぶ。すでに買い物客が集まってきていて通りは賑わっている。そしてどの店からも威勢の良い呼び込みに溢れている。
「朝採れた新鮮なキャベツだよー!!」
「そこの美人の姉さん!! 特産品の芋がお買い得だよ!!」
「今は七味豆がお得だよ!!」
「南方から仕入れた香辛料が今ならお買い得!!」
わかっていたけれど、見事に肉は無いね。野菜関係ばかりだ。住人はベジタリアンのオークさんたちがほとんどなので肉屋をやっても売れないのだろう。ガイドブックにも肉屋はオーク以外の住人のために数件あるにはあるが、全量輸入品なので他の国で買うよりも割高らしい。
とりあえず目についた野菜を色々と買っていく。
「村の特産の甘くて美味しいイポモエアはいかがですかー」
今日のお目当てのイポモエアを売っている店だ。少年が一人で店番しているのかな? 周囲の大人の売り文句に押し負けて客がいないな。ちょっと行ってみるか。
「イポモエアを見せてくれないか?」
「あっ、いらっしゃいませ!! 自由に見ていってください!! 村の名物なんですよ!!」
少年はやっと来た客を逃がすものかと売り口上を早口で捲し立てる。なんとも微笑ましい。
「どれ、どれ」
俺はカゴに盛られたイポモエアを一つ一つ手にとって見てみる。イポモエアは見た目はジャガイモで色は紅紫色でサツマイモに似ている野菜だ。どれも皮の色や艶が良く、丁寧に収穫したようで傷んでいるようなところも無さそうだ。
「ひとカゴいくら?」
「20クローナです」
「じゃ、5カゴ貰おう」
「100クローナになります」
俺は100クローナを支払ってイポモエアを受け取ってトートバッグに入れる。たぶん5kgはあると思うが、トートバッグが一杯になってしまった。
「ありがとうございました!!」
少年に手を振って俺はそのまま帰る事にした。もうバッグに入らないしな。
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