第二十三話 オーク国 首都オリス

 どこまでも続く大平原を走っていると、だんだんと森や農地が少なくなり、ぼちぼちと住宅が増え始める。


 街道の両脇に樹木が立ち並ぶ並木道へと入る。まるで飛行場の滑走路のように遠くまで続いていて異世界感がある。いや、ここは異世界だった。


 並木は落葉樹なのか、今は葉もなく寂しい限りではあるが、またそれも侘び寂びというか、風情があって良いものだ。葉が生い茂ってないので遠くもよく見えるから見通しも良いので運転がしやすい。


 川に架かる石造りの橋を渡ると大きな森に入る。森というより公園のようだ。それもかなり大きめの公園を横断するように真っ直ぐの道路が続く。


 そして森林公園を抜けると大きなラウンドアバウトがあり、それを抜けるとまた直線道路が続く。


 すると遠くに石造りの大きな門が見えてきた。あれが今回の目的地であるオーク国の首都オリスの入り口だ。


 門があると言っても城壁があるわけではなくて象徴的な門のようだ。記念碑として建てたものかもしれない。日本で言うと時々道路に建っている大鳥居みたいなものかもしれない。あとで観光ガイドブックでもみてみよう。


 門を抜けるとそこには中心街まで続く大通りがある。街路樹と石畳が美しい大通りだ。地球の感覚だと、だいたい8車線ぐらいの道幅だと思う。そして街路樹がやたらとでかい。このあたりは異世界だと感じる佇まいだ。その大通りの突き当たりは広場になっていた。広場を抜けた先は公園になっていた。


 俺は公園の手前の道路脇でウニキャンを止めるとナツを連れて降り立つ。長時間ウニキャンに乗っていたので体も鈍ってきたのでそろそろナツを運動させてあげようと思ったのだ。広々とした公園はナツとの散歩にちょうど良さそうだ。


 公園の右側は川に面している。ガイドブックによると川の名前はオーヌ川といって、首都オリスの中心部を流れて海へと繋がっているようだ。この都市も例に漏れず川を中心にして栄えて行ったようだ。


 公園は日本でいうところの西洋式庭園風。幾何学模様的に整備された公園で歩道は全て石畳で他は芝生だったり植栽だったりしている。


 芝生エリアではオークの人々がグラウンドシートを敷いて寝転がったり、家族や恋人同士で話し合ったりといった長閑な風景が見える。


 公園の入り口には屋台が並んでいた。今後の商売の参考にしようと思い覗いてみる。購入している人が受け取った物を半分に割ると、親子と思われるオークさんたちが二人で美味しそうに食べていた。なにやら湯気も立っており暑そうで美味しそう。近頃は寒くなってきていることもあり一つ購入してみることにした。


「お姉さん、それ一つちょうだい」

「あいよ」


 おばじゃなかった。お姉さんは石の上に置いてある食べ物を紙に包んで渡してくれた。俺は代金を払って受け取った。


 受け取った物を半分に割ってみる。割った途端にふわっと湯気がたちのぼる。みるからに熱々だ。中身は金色で見た目は柔らかそうだ。俺はごくりと唾を飲み込むとかぶりつく。


「あまー!!」


 こっ、これは!! さつまいもではないか!?


「お姉さん、これはなんていう芋?」


「なんだい、初めて食べたのかい? これはイポモエアという芋だよ。わたしたちオークの大好物さ」


「へー。ありがとう!! 美味しかったよ」


「そうかい、そりゃよかったね。また買いに来てね〜」


 さつまいもじゃなかったイポモエアか……。これは商売になるのでは? と心のメモ帳にメモをした。

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