第十六話 豆煮会 その2
豆煮会に呼ばれた俺たちが用意された座席に座ると、さっそく鍋からスープを椀に掬ってパンと共に手渡された。
大豆やひよこ豆や小豆といった数種類の豆が赤い色のスープに入っている。色は赤いが辛そうな匂いはしない。
スプーンで一口掬って食べてみる。これは酸味があるトマト風味の味だ。地球で似たようなスープといえばミネストローネを思い出すが、オークさんたちは草食なのでベーコンなどの肉類は入ってはいない。
それなのにうま味を感じる。野菜からの出汁以上のなにかが……。
椀の中に黒緑の欠片を見つける。スプーンで掬って繁々と眺めているとオークさんに話しかけられた。
「それは海藻の昆布だよ。昆布を入れると良い味が出るんだ」
「なるほど」
食べてみるとやはり昆布の味がする。うま味はここからきていたのか。醤油味じゃないトマトベースの煮物で昆布が入っているとは思わなかったけれど、これはこれで良いものだ。
周りを見てみるとパンをスープに付けて食べている。なるほど、ここではそうやって食べるのが流儀か。
俺は硬めのパンを食べやすい大きさにちぎってスープにつけてみる。スープにつけることで硬めのパンも柔らかくなり食べやすくなる。
これは、これで美味しいな。今度はパンの上に煮豆をゴロっと乗せてから食べてみた。これはこれでなかなか美味し!! これはパンが進むね。日本人ならご飯が進む感じだ。
ところで俺だけが食べているとナツにはかわいそうなので犬用のビスケットをあげている。今はおやつだけだよ。ご飯は夜だからな。
「さあさあ、おかわりあるからたんとお食べ」
そう言ってオークさんがおかわりをよそって渡してくれる。
「ご馳走になります!」
俺は祝いの席で遠慮するのも悪い気がしたので素直に受け取って食べ始めた。この素朴な味が五臓六腑に染み渡る感じでいいよな。特に自然豊かな野外で美味しい空気を胸に満たしながら食べる、この豆煮は特別な感じがするほど美味。
このままだと食べすぎて動けなくなるかも。いや、それはそれで良いじゃないか、キャンピングカーなら停車した場所がホテルだ。このまま夜を過ごすのもよいだろう。
「兄さんは、酒は飲むのかい?」
「ええ、飲めますよ!!」
「そうかい、なら地元産のワインがあるから飲むか?」
「よろこんで!!」
俺はどこかの居酒屋のような受け答えをして酒杯を受け取った。これで今日のキャンプ地は決定だな。運転のことは気にしないで飲むぞー!!
こうしてのんびりと楽しい時間を過ごす俺たちであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます