第十五話 豆煮会 その1

 エアボード乗りを存分に楽しんだエアボード場を出発して一路北へと向かう。相変わらずの山道を川沿いに降りながら走る。


「やっぱり、国境越えたからと言ってガラッと景色が変わる物ではないなー」


「わふー」


 運転しながらふと呟いてしまうが、ナツがいるから独り言じゃないよ!! そんな心の言い訳をしながら何気なく川をみるとなにやら河原沿いで人が集まって何かやっている。


 なんだろうと思って俺はウニキャンを路肩に停める。パック旅行のような制限もないキャンピングカーの旅。気になった場所には、ふらっと立ち寄れるところがいいところだ。


 ウニキャンを止めた場所は丁度川を渡るための橋の手前。今走っている道は川の対岸に続いている。


 ナツをウニキャンから降ろして橋に向かって歩いていく。川に架かった橋の上から川を見る風景はいつ見ても絵になる。そんなことを思いながら橋の上から河原沿いを覗いてみる。ナツも欄干の隙間からマズルを出して興味深そうに覗いている。


 長く伸びた河原には数組のグループが点在しており、なにやら料理しているのか湯気が立ち上っている。湯気と共に微かに美味しそうな匂いも漂っている。


 ナツを見ると涎を垂らしながら見ているではないか……。


「そろそろ、ご飯にするか?」


「わんっ!!」


 河原で料理を作っている人たちがナツの鳴き声に気がついたらしく手を振っている。折角なので俺も手を振りかえす。


 すると河原にいる人たちが、「こっちに来い!!」みたいなジェスチャーをするので「俺たちのことか?」と俺自身を指差してみたら「そうだ」と頷くので河原に降りることにした。


「こんにちは」


「良く来たな!! まぁ、こっちに来て座りな」


 俺が挨拶したら、とあるオークのおっさんが席を空けて座るように勧めてくれたので遠慮なく座る。混み合った時のフレンドリーな居酒屋とかの雰囲気だ。


「ここには初めて来たのですが、何の集まりなんですか?」


 俺はこの集まりが何なのかを尋ねてみた。


「これはな、この時期だけにやっている豆煮会だよ」


「豆煮会?」


「見ての通りに秋の豊穣を祝って皆んなで集まって鍋を囲んで豆料理を食べる会だよ」


「へー、美味しそうな会ですね」


「そうそう、うまいもん食べてひたすら飲む!! そんな楽しい会だぜ!!」


 日本にも似たような会があったな。山形の芋煮会ってやつだったか? 異世界になっても似たような行事があるものなんだな。


 折角なので俺はご相伴に預かることにした。

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