02.温泉に入ろう!
翌朝、早々にキャンプを畳んで一路温泉へ。
ナツは助手席に置いた籠に厚めの布を敷いて簡易ベッドを作って座らせてあげたら大人しくしてくれた。紐で籠を落ちないように固定しておく。
「よし、行くぞ」とナツを撫でながら言うとナツは「ペロペロ」と指を舐めてくる。それを見て微笑みながら安全運転で進む。
秘湯と言うだけあって道中は険しい。道なき道を走れるウニモグとて限界があるので慎重にルートを選びながら進む。
そして谷川に突き当たった。最大四五度の斜面までは降りられるウニモグの能力を発揮して慎重に降っていく。
谷底に着いたら今度は渡河だ、水深一二〇センチメートルまでなら渡河可能だ。増水もしてないし流れも速くないので渡れそうだ。
無事に渡りきって今度は崖登りだ。最大傾斜四五度まで登れるウニモグで運転席からは垂直に見える崖を登っていく。
がっしりと対岸の崖上の路面をタイヤがグリップして谷川を渡り切ることが出来た。
そして幾つかの難所があったが昼には目的地の温泉についた!
エルフの秘湯は山中の少し開けたところに忽然とある。源泉は岩肌の裂け目から湧き出しているようで小さい滝のような感じになっており当然かけ流しである。滝壺にあたる所がちゃんと湯船として整備されているようだ。土魔法あたりで造成したのかもしれない。お湯に手を入れてみた所、日本人好みのちょっと熱めの湯加減でちょうど良い。湯の色は若干白く濁っている感じで青白い。なかなか良さそうな感じだ。
「とりあえず、キャンプの準備をするか」とナツに話しかけるとナツも嬉しそうに尻尾をブンブン振りながらついてくる。
何時ものように日除けを用意して椅子やテーブルを並べる。本日の昼飯はパスタ。パスタは電子レンジで調理すると簡単で楽して出来るので、最近はもっぱら電子レンジで作っている。出来合いのトマトソースにきのことベーコンを入れて軽く炒めて茹で上がったパスタに絡めてからフライドガーリックと粉チーズと乾燥パセリをふりかけて完成だ。
ナツにはドッグフードを皿に盛ってあげた。
秋の山中、紅葉を見ながらランチを食べるのはなんとも良い気分だ。一度死んでしまったけれど、こちらの世界に来れてよかったとしみじみと思いながらパスタを食べた。
さて、食後のコーヒーも飲んだので、いよいよ温泉だ。周囲には誰もいないしウニキャンが守ってくれるのでサクッと素っ裸になると、まずは体を軽く洗ってから湯船に入る。もちろんナツの体も洗ってあげる。ナツは体を洗われるのは慣れているようで大人しい。
「ふへぇ〜」となんとも言えない声が思わす出た。ナツも気持ち良さそうに目を閉じている。
「苦労して来たかいがあったな」とナツを撫でながら思った。
しっかりと温泉を堪能していると夕方になったので晩飯をどうしようかと考えて、ふとあれをやってみようと思い立ち、とりあえず軽く晩飯を食べると清酒とお猪口に徳利と肴を用意して温泉に入るのだ。
酒は幾つか持ってきている中から山形の
そうして呑んでいると盃に注いだ酒に月が映る。この世界の衛星が出てきたようだ。この世界には地球の月みたいに大きくはないが衛星が三つある。それぞれ大きい順にアチェイロス、キュンティア、メーネと言う。青白く光る月に侘び寂びの心持ちになる。月を肴にというのも乙な物だ。
温泉で浸かりながら晩酌なんてなかなか出来ない体験を心ゆくまで堪能するのであった。
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