第二章 エルフの都

01.子犬を愛でよう!

 年末の大晦日の前日。仕事納めも終わったので実家に帰省するために電車に乗って移動。年末なので車内は超満員だ。実家は都内から電車で三時間ほどの田舎にある。

 電車を乗り継ぎ実家に辿り着いて玄関を開けるとタッタッと足音がする。実家で飼っている犬のタロウが迎えに来たのだ。

「タロウ、ただいま。元気にしてたか?」

 タロウは尻尾をブンブン振りながらそれに答える。俺は頭をワシャワシャと撫でてやると「わんっ!」と一鳴きして飛びついて顔を舐めてくる。

「わはは、くすぐったいよ」

 何故か何時の間にか見かけない子犬も一緒に俺の上に乗ってきて顔を舐め始める。実家に子犬はいなかったはず……?


 これは夢か……。


 どうやら、本を読みながら寝てしまったらしい。懐かしい夢を見たもんだ。しかし実際に顔を舐められているような……?

 目を開けると目の前に子犬がいた。嬉しそうに顔を舐めてくる。あー、あの子犬だ。元気になったんだな。よしよしと頭を撫でてやると気持ち良さそうにしている。


 そっと両脇に手を入れて抱えて見ると首輪が見えた。

「お前は飼い犬だったんだよな、飼い主を探すか?」と首輪を見てみるとネームプレートに『ナツ』と日本語で書いてあった。

 日本語ということは俺と同じ彷徨い犬なのか?そうすると一度死んでこちらの世界に来たことになる。


「お前のお父さんや、お母さんは?」と聞いても無駄か。子犬も首を傾げている。

 子犬の状態を見ながら考えて見るに、たぶん倒れていたのも飼い犬の子犬では狩りも出来ないので食べることが出来なくて衰弱したのではなかろうか?このまま一匹にしておいても路頭に迷うだけであろう。


「お前も、いやナツは俺と一緒に来るか?」

「わんっ!」

 元気よくナツは返事したので頭を撫でてやる。


 そろそろ夕方なのでここでキャンプすることにした。季節は秋の山の中、日が落ちれば寒くなってくる。周囲で薪になりそうな落ちた枝などを拾って来て焚き火台を用意して焚き火にした。なんでか人類は炎を見ると安心するんだよね。元々田舎暮らしだったので焚き火するのは慣れている。会社でのバーベキュー会で都会子の後輩が上手く火がつかないと嘆いていた所を何度も助けたことがある。俺にとっては簡単だったしな。


 村人から餞別で貰ったソーセージを焚き火で炙って、レタスを載せたパンに挟んでレリッシュとケチャップとマスタードをかけて食べる。肉汁が溢れて美味しー。

 アメリカに出張した時にホットドッグスタンドにあったレリッシュ(きゅうりと野菜の刻み甘酢漬け)が気に入ったので、その後に国内で探して買っておいたものを持ってきて正解だった。


 ナツにも炙ったソーセージを皿に載せてあげてみると喜んで食べている。


 ソーセージにはビールだよなとハートランドを持ってきて飲み始める。ビールグラスに注いで綺麗に泡が出来ると何か達成感があるよな。キャンプで焚き火に当たりながらビールを呑むって一度やってみたかったんだよね。


 そんな感じでキャンプチェアーに深く腰掛けてナツを膝に乗せて撫でながらビールを呑みつつ焚き火を眺めながらゆったりと過ごすのであった。

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