第八章 雨傘

 この世界にやって来てから(あるいはこの世界に誕生してから)、私は一日の終わりにカレンダーにバツ印をつけるようにしている。

 今日が何月何日であるかを全員が見失うことはないだろうから、そういう点では必要ないと思うのだが、こうして日々を刻んでいないと、時間が前に進んでいるということをうまく掴めなくなる気がして不安なのである。


 何しろ変化というものがここにはない。季節感もまったくない。

 本来なら、そろそろ本格的な寒さが到来する時期である。着る物も変わるし世間の色も変わる。

 しかしここは常に朝晩変わらず摂氏二十四度のままであり、どの時間に外を眺めてみてもそこを支配しているのは灰色と茶色だ。

 唯一の救いは庭の植物達である。いまも使用人達が水をやり続けていて、敷地の中だけは普段通りの風景を保っている。それだけでも気分はだいぶ違うものだ。ほんの少しでも「自分達の風景」と言えるものが周囲に残っているのは、とても貴重な鎧になり得た。


 このままの生活が続けば、やがてカレンダーのバツ印は大晦日までをすべて埋め尽くす。

 そのあとはどうしよう。

 来年のカレンダーはまだ入手していないと銀見ぎんみさんは言っていた。なら自作するしかない。どうせならメモ用紙に日付をすらすら書いて済ませるのではなく、パソコンを使って本格的なのを作ってみようか。

 紙とインクなら倉庫にある。いくらでも試行錯誤は可能だ――プリンタを壊してしまわない限り。


 ◆


「良いアイディアかもしれませんね」とほこらはゲームのコントローラーを握ったまま言った。「そうか、カレンダーなんてその気になればいくらでも自作できますものね。いままで考えたことなかったのですが、面白そうです」

「あなたなら画像とかたくさん持ってるだろうから、カラフルなのが作れるだろうね」

「ただ正直なところ、来年のカレンダーに出番があるようなことにはなって欲しくないです」

「それは私も同感。まあ、もしものときはということで。そのときはここのパソコン借りていい? 画像を物色したい」

「いや、それは……お嬢様にお貸しするにはちょっといかがわしいマシンになっておりますので、すみませんが勘弁して戴けないでしょうか」


 祠の部屋である。

 私が遊びに来たとき、彼女はテレビゲームに興じていた。ただ雑談しに来ただけだからそのまま続けてていいよというと、祠は、では失礼して――と断ってから続きを遊び始めた。

 私はその横で何の気なしにテレビ画面を眺めながら、あれやこれやと思いついたことを彼女に話しかけていた。この部屋ではしばしばこういう時間が流れる。


 祠は仕事も真面目だが、趣味に対しても至って真面目な人である。

 しかしその九十九パーセントはインドア、とりわけオタク趣味に向けられていて、色気も何もあったものではない。そこが面白いところであり、他人事ながら不安なところでもある。


「パソコン、いかがわしいことにしか使ってなかったの?」と私はからかうように訊ねた。

「いえ、そんなことはないですよ」真剣に祠は答える。「消費するだけでなく作るほうもやってましたし――というかやってますし。絵を描いたり、小説を書いたり」

「どんな話?」

「個人的に夢を書き留めてまして、それを元ネタに――まあ、たいしたものではないです」

「……この世界が誰かの作ったお話の中だったりする可能性、あると思う?」

 祠は画面を凝視したまま、うーんと唸る。「どうでしょうね。そういうストーリーの作品はありますけど」

「私達が小説の中の登場人物でしかないなら、もう最後のページまでやることが決まってるわけだ。なるようにしかならないね。まあ、こういう説は考えないほうが健全か」

「そう思います」


 ――そのとき、ドアをノックする音がした。


 祠がゲームを中断し、「どうぞ」と声を張り上げる。

 私と祠が注目する中、そのドアはいかにもためらっているという風に、自信なさげにゆっくりゆっくりと開かれた。

 その向こうから現れた姿に、私達はどちらも少なからず驚いた。


「うずまき。どうしたの。部屋間違えたわけじゃないよね?」

「祠……さんに訊きたいことがあった」

「私にですか?」

「よく一人で来られたね」と私は素直に感心する。「あんたがここに来たのって初めてじゃないの?」

「……姉さんが中にいるの知ってたから、何とか」

「とにかく、お入り下さい」


 祠が気を取り直して言った。立ち上がり、ソファに誘導する。

 羽子うずは音を立てずにドアを閉めると、その誘導のままにソファに向かい、吊るした紐を切ったみたいにちょこんと腰を下ろした。少し堅くなっている印象だ。

「それで、ご用件は何でしょうか?」

「私が横で聞いてても大丈夫な話?」と私はいちおう確認する。「もしいないほうが話しやすいなら席を外すけど」

「大丈夫。むしろ一緒に聞いて欲しい」

「ほう」

「何でもお訊ね下さい。私にわかることなら良いのですが」


「……使用人達って」と羽子は口を開く。「仲、良い?」

「仲ですか?」と祠は言い、顎に手を当てる。「特に悪くはないですね。大親友かと言われると違う気はしますけど」

「祠さんは弥々ややのこと、どう思う?」

「頑張ってるんじゃないでしょうか。一見ドジっぽいけど、実際はそんなドジでもないんですよね。仕事はちゃんとできてますし」

「嫌いじゃない?」

「嫌いじゃないですよ、全然」

「好き?」

「好き――まあ、何だかんだで好きなほうですかねえ」

「じゃあ――」と羽子は間髪を入れずに続ける。「糸氏いとうじさんはどう思ってるんだろう」

「糸氏さんは……そうですね、あの人が一番ビジネスライクな付き合い方をする人で、好きとか嫌いとかを読めないところがあります。でも逆に言えば、お嬢様の見てないところでも常にあのまんまなので、そういう意味ではわかりやすいと思いますよ」

「銀見さんと春沙はるささんはどう?」


「うずまき」と私は言った。「要するに、雨傘あまがさのことが心配なんだね」

 羽子はちらりと私を見てから足下に視線を落とし、頷く。

「最近、急に心配になってきた」

「自分のことがうまく行き始めたからかねえ」

「……そうかもしれない」と羽子は認める。「弥々本人は、大丈夫です、うまくやれています、皆さんにも良くしてもらっています、元気です、っていつも言う。でもあんまりいつも同じ調子で言うから、本当はそうじゃないのかもって感じるようになった」

「あんたに心配かけたくないんだよ」

「それはわかる。でも結局それで心配になってる」

「まあ、話を聞く限り、ちょっと元気アピールしすぎかな」私は苦笑する。


「弥々は私のことでよく叱られる」と少し言いにくそうに羽子は言った。「だから弥々は皆に無能だと思われて嫌われてるんじゃないかって、ずっと思ってた」

「言ってたねえ、そんなこと」

「それが急に心配になってきた。これまではそうじゃなくて、弥々を嫌いそうな人のことを嫌って、それで終わってた」

「それは成長だよ、あんたの。お姉さん嬉しいよ」

 私は羽子の頭をぽんぽんと撫でる。されるままになっている羽子の姿が何だか可愛い。


「いずれにせよ、使用人は誰も雨傘を嫌ったりはしていませんよ」祠は微笑んだ。「無能とも思っていません。あの子はよくやっています」

「――つまり」と羽子は顔を上げる。しかし目線は誰とも合わせない。「嫌ってるのは冠奈かんな姉さんだけってことかな」


 私は祠と目を合わせる。祠は明らかに気まずそうな顔をしていた。私からは答えかねるのでお嬢様にお任せします――という無言のメッセージを私は受け取る。


「……そういうことになるかなあ」と私は役割として言った。「程度はわからないよ。ほんの少しだけ性格が合わないとか、その程度の話かもしれない。姉さん、おどおどしてる感じの人に苛々するタイプだから、雨傘はそのへんがアウトなのかもしれない」

「仲良くさせたい」と羽子は言った。「私は冠奈姉さんと少し仲良くなった。最近話すようになった。弥々だけ取り残されてる。それを改善したい」

「改善」と私は繰り返す。なかなか堅い表現だ。「うずまきとしては、どういう作戦が考えられる?」

「馬鹿みたいかもしれないけど――弥々と仲良くして、って直接お願いする」


 ストレートな内容だ。しかし現実的といえば現実的である。搦め手で行くような器用さが自分にないことを、羽子はよく自覚している。この子が自力で状況を変えようと思ったら、実際そうするしかないだろう。

「勝算はある?」

「――わからない」

「たぶん、言われる姉さんのほうもどう反応していいか困るだろうなあ」


 冠奈はいまの羽子の触り方をまだよく掴めていない。

 子供の頃のノリで近づいてはいけないということだけをわかっていて、おっかなびっくりアクセスを試みている状況だ。

 自分の中の繊細な問題を羽子に突っつかれたら、さぞやうろたえるのではないかと想像する。そのぶん効果があるかもしれないし、無いかもしれない。


「……無責任な進言をしてもよろしいでしょうか?」と祠が唐突に言った。

「どうぞ。どうせなら徹底的に無責任にお願い」

「ここは真都衣お嬢様が一肌脱ぐところ――なのではないかと。私達使用人には出過ぎたことで、とても冠奈お嬢様にそのようなことを働きかけることはできません。そうなると羽子お嬢様にお力添えできるのは真都衣お嬢様しかいないことになります」

「……そうなるねえ」


 私は目を閉じて、あれこれと考えを巡らせる。

 愉快と言えば愉快な話だ。どことも知れぬ荒野のまっただ中で、私達はずいぶんとドメスティックな相談事に花を咲かせているものだ。

 しかしそれを良い機会と捉えるならば、良い機会でもある。

「――うずまきは」と私は目を開けて羽子を見た。「手伝って欲しい?」

 羽子はほんの少しだけ考えてから、私に顔を向けた。

「手伝って欲しい」

「左様ですか」


 私は頬を掻いた。こういう流れになったら、やらないという選択肢はもうあるまい。

 ……いや、この言い方は間違っている。私自身、すでにやる気になっていることを否定できない。自分でも不思議である。私はこんなにお節介が好きな人間だっただろうか。

「んじゃ、まあ、可愛い妹のために脱いじゃいますか」と私は言い、羽子に笑いかける。「でも何も確約はできないからね。そこそこの期待だけして、しばらく待っててちょうだい」

「わかった」羽子は頷き、それから思い出したように付け加えた。「――お願いします」


 ◆


「――というわけなのよ」と私は締めくくった。

 夜の十時過ぎ、冠奈の部屋である。

 私は羽子の依頼を引き受けてからまる一日、どういう切り口で冠奈に話を持ち出そうかと考えていたのだが、それは思っていた以上に難問だった。

 基本的にこの件に関して私は外様であるわけで、しゃしゃり出てきて余計な世話を焼いている、という感じをまったく出さずに事を運ぶのは不可能である。

 それをどれだけ少なく済ませるかということを、私はとても気にしていたのだ。


 しかしなかなか良いものが思い浮かばず、結局私は羽子の案に負けないくらいストレートなやり方を選ぶことにした。

 すなわち、羽子が言っていたことをそのまま伝え、冠奈の意見を仰ぎつつ要望していく、というやり方である。


 部屋に行ったとき、冠奈はちょうどお風呂から出てネグリジェに着替えたところだった。顔には大きな赤い縁の眼鏡。冠奈はいつもコンタクトレンズを使っているが、自室では眼鏡着用の人となる。

 冠奈は日課である日記をノートに書きながら私の話を聞いていた。

 私が一通り話を終えてもまだ書き終わらないようで(というより話を聞いていたぶん筆の進みが遅れたのだろう)、いまも万年筆を額に当てて次の文面を考えている。

 人の話を適当に聞き流す人ではないから、その点については心配していない。


「――眼鏡とコンタクトの予備って、倉庫には無いんだよね」と私はあえて話を脱線させる。

「そうね、大事にしなくちゃ」と冠奈はノートから目を離さずに言った。「他にも化粧品とか、この部屋に予備を置いてあったから、戻らなかったのよね。この状態が長引くようだと困ったことになるわ」

「倉庫に化粧品、いちおう置いてなかったっけ」

「いちおうよ。私の使っているものとは違うから」冠奈は言いながら万年筆を走らせる。「あなたもそろそろ本格的にお化粧を覚えたほうがいいんじゃないかしら?」

「んー、まだいいよ。化かす相手もいないし」

「特定の相手がいなくても、化ける必要は出てくるものよ。社会に対して化けるの」


 冠奈はこう言っているが、しかし彼女自身、どこまで社会の中でうまく化けることができているかは疑問である。

 聞くところによれば、大学においてとりあえずの友達づきあいはあるらしいが、カラオケにも行ったことがないし、未成年の本分を頑なに守ってお酒は一滴も口にしようとしないし、ましてや下ネタで盛り上がるなんてことは断じてないらしい。

 純度百パーセントのお嬢様なのである。それは化けているのとは違う気もする。


 ふう――と冠奈が息をつき、万年筆を置いた。

「終わりました?」

「最後にこのやり取りを書いておしまい」と冠奈は言い、傍らでくつろぐ私に向き直った。「それで、あなたの用件なのだけど」

「うん」

「まず最初に言っておきたいのは――私、少なくとも雨傘のことを、仕事のできない無能だと思ったことはないわ」

「あ、そうなんだ」

「ええ。でも言われてみれば、そういう風に捉えられても仕方がなかったかもしれない。雨傘に思うところがあるのは事実だから」

「思うところって、曖昧な言い方だね。早い話、雨傘に対する嫌悪感はあるわけね?」


 冠奈はどう答えるべきか迷っているように少しのあいだ下を向いて黙っていたが、やがて低い声で、そういう言い方もできるわね――と認めた。

「はっきりした理由があるの? 性格の不一致とか」

「……真都衣ももう子供じゃないし、話してもいいかな」

「なにそれ」と私は笑う。「そんな大人な話なの?」

「私、雨傘がこの屋敷で働くことになったとき、とても違和感があったの。うまく説明することはできないのだけど、本来あるべき基準とは違う何かで選ばれて連れてこられたような、そんな印象を彼女に持った。車の運転もできない歳だったとか、そういうのを抜きにしても」

「――まあ、わからなくはないかなあ、その感覚」私はほんの僅か時間を置いて同意する。「昔の思い出だからあれだけど、祠とかは最初から結構鍛えられてた気がする。その点、雨傘はこう、何もないままうちに来て、ゼロから仕事を身につけていった感じはあったね」

「それで私、糸氏に頼んで調べてもらったの。彼女のことを」


 急に話が深刻になる。調べてもらった?

「それって探偵の身辺調査みたいなこと?」

「そう」と冠奈は流すように言う。「驚くほど簡単にいろいろなことがわかったわ。糸氏の使ったつてが優秀だったのか、運が良かったのか、その辺りはわからないのだけど――順番に話すわね。まず、雨傘の家は母子家庭だった」

「祠なんか孤児だよ。そこはべつに――」

「それはもちろんそうよ。次に、雨傘の母親は、お父様から長年、生活費を援助してもらっていた」

「お父様が?」

「そう。雨傘が生まれる一年ちょっと前くらいから、ずっと」


 何だろう。胸のあたりがむずむずする。冠奈の心の中が感染でもしたのだろうか。

「雨傘の家庭はうまく行っていなかった。雨傘は母親から、物理的にも精神的にも、かなり暴力を振るわれて育ったらしいわ。物心つくかつかないかの頃から」

「酷い」と私は思わず言った。私にとってはまるでお話の世界の出来事だ。「だったらむしろ雨傘に同情するところじゃないの? いままでのぶんを取り戻させてあげるくらいの気持ちがあっても――」

「そして」と冠奈は遮るように言い――やがて冷たく響く一言を放った。「雨傘はある日、母親を刺し殺した」


 私は絶句する。絶句というものを経験したのは生まれて初めてのことかもしれない。

 次々に現実離れしていく話に、理解がうまく追いついていかなかった。

 これは他の誰でもない、あの雨傘の話なのだ。いつもおどおどしていて、そのぶん優しくて、羽子によく懐かれている、あの雨傘。

 彼女の笑顔といまの話がまるで重ならない。


「直感的に思ったの」と冠奈は言った。「雨傘はお父様の隠し子なんじゃないかって。そんなことを考えるのはお父様に対する大変な冒涜だと思ったのだけど、でも私はそう直感してしまった。そしてその隠し子が――つまり私の腹違いの妹が、人を殺してしまったのだと」

 私は黙っている。何を言ったらいいのかわからなかった。

「雨傘を蔑んでいるわけではないわ」冠奈は自分に言い聞かせるように言う。「彼女のことを人殺しとして責めようという単純な話ではないの。でも、この話のすべてが忌まわしかった。その忌まわしさに私は耐えられなかった――ううん、いまも耐えられない。彼女が目に映るたびに、そして彼女がこの家にきちんと溶け込んでいることを思うたびに、私は説明できない気持ちに追い立てられるの。雨傘を嫌いというのとは少し違う。そうじゃなくて――」

 冠奈は言葉を探すように自分の足下を見つめる。しかしそれは見つからないようだった。


「……とりあえず、話はわかった」と私はやっと口にした。「想像してたのと全然違う。どうしたらいいのか、まったくわからないや。どうしよっかな」

「羽子には言わないでよ」

「言ってくれって頼まれても言えないよ。うずまきにはちょっと刺激が強すぎる」


 そこで私達の会話はいったん止まった。

 私に必要なのは予想もしていなかったところへ飛んでいった情報の整理であり、冠奈に必要なのはずっと溜め込んでいたものを吐き出したあとの気持ちの整理だった。

 壁掛け時計の針の音がいつもより大きく聞こえた。私も冠奈もお互いに目を合わせようとしないまま、二、三分ほどの時間が流れた。


 ……先にいちおうの整理をつけたのは私のほうだった。

「姉さんにもちょっと同情する。ある意味、予感が的中したってことなのかもしれないけど、まさかそこまで、って感じだったろうね」

「……そうね。調べさせたことを後悔はしていないけど、開けてはいけない蓋を開けてしまったような感触はあったわ」

「でも私としては、それを踏まえた上で、やっぱりお願いしたいんだ。雨傘への態度」


 冠奈はすっと目を閉じ、一つ大きく息を吐いた。溜め息というのとは違う、何か悪いものを体の外に追い出して自分を清めようとするかのような吐息だった。

「……妥当なお願いだと思う」と冠奈は言い、ゆっくりと目を開けて私を見た。眼鏡越しに見える瞳の輝きが、心なしかいつもより柔らかい。「羽子を傷つけたくないしね。これからは雨傘と普通に接することを心がけてみる。気をつけていればたぶん、彼女を蔑ろにしてしまうことはないと思う。――真都衣まといは大丈夫? この話を聞いて、彼女への態度が変わってしまいそうな感じはしない?」

「それは大丈夫、だと思う。私そのへん雑だから」私は少々無理して笑顔を作る。

「きっと私がそういうことに弱すぎるのね。ずっと引きずりっぱなしで今日まで来た」

「お願いしておいて言うのもなんだけど、無理はしなくていいからね。少しずつでも意識が変わってくれれば、うずまきも喜ぶと思う」

 冠奈は短く、ええ――と言って天井を見上げた。


 私は腕を組んで少し考える。「雨傘にそのへんのいろんなこと、一度きちんと確認したい気もするけど……でもなあ」

「訊ける? そんなこと。私はいままでそんな機会はまったく作れなかった」

「確かに――」

 難しいかもしれない。

 あなた母親を殺したんだってね。それからあなた、お父様の隠し子って説があるんだけど?

 ――地獄に落ちてしまいそうだ。あるいはここがすでに地獄なのかもしれないが。


 ◆


 敷地内をランニングしながら、私は今日も雨傘のことを考える。

 冠奈から雨傘のことを聞いた次の日、私は羽子にとりあえずの成功報告をしておいた。

 冠奈は雨傘をそれほど嫌っているわけではなかったが、苦手意識を持っていたこと。以後はそれを改めて、普通に接するよう努力してみると言っていたこと。「苦手意識」の詳細についてはすべて隠しておいた。少し後ろめたさもあったが、その選択に迷いはなかった。


 私の報告を聞いた羽子は、まずあまり表情を変えずに「そう」と短く返事をして、それからとても言いにくそうにもじもじしながら顔を伏せ、「ありがとう」と言い添えた。どうやらとても嬉しかったらしい。

 羽子にとってはこれでこの件はいちおうの解決を見たわけで、私としてもそこは肩の荷が下りた気分ではあった。


 しかし個人的な問題は残った。冠奈の話に裏付けが欲しい。

 糸氏さんが責任を持って調べたというのだから、事実関係に間違いはないのだろうと思う。母子家庭、お父様の援助、家庭内暴力、そして殺害。

 でも冠奈の感情の肝は、そこから彼女が独自に想像した「お父様の隠し子」という可能性と、殺人との結びつきにある。それが私の中でもやもやしたものとして残っていた。

 真実であるにせよ誤解であるにせよ、話をはっきりさせたい――しかしそんなこと、どうやって切り出せばいいのか。


 この世界で暮らすようになって二日目から、私は敷地の中を毎日ランニングしている。

 まがりなりにも陸上部所属の身、定期的に動かさないことにはどうにもうずうずして落ち着かないのだ。

 また、走ることは気持ちを安定させる上でも有効だった。特にいまのようにもやもやを抱えているときには。

 屋敷を囲む柵にそってぐるぐると何周もする。門の前を通り過ぎるとき、気紛れに郵便受けを覗き込むのも習慣になっている。ダイレクトメールみたいな感じで世界の主から何かメッセージが届いていやしないかという、百億に一つの可能性をチェックするのだ。

 ……今日もメッセージは届いていない。

 走る時間はまばらなので、庭の植物に水をやる使用人達と出くわしたり出くわさなかったりする。

 水やりは当番制で、三人の付き人達が交代でやっているので、出くわすのが誰かは毎回ばらばらだ。


 今日は雨傘と一緒の時間になった。

 私が周りをひたすら走るあいだ、雨傘はシャワーヘッドの付いた長いホースを引きずって、あちこちの木々や草に水を撒いていく。

 普段なら特にそれを眺めたりはせず、黙々とまっすぐ前を見ながら走り続ける私なのだが、今日に限ってはついつい雨傘の様子をちらちらと窺ってしまった。

 雨傘は慈しむように、それでいて同時に無邪気に水遊びをする子供のように楽しそうに、あちらこちらの草木の根本を水で濡らしていく。

 私は頭の中で、その光景に冠奈の話を何とか重ねようとしていた。


 ――合わない。

 どうしても合わない。雨傘がしたこともされたことも、彼女の立ち居振る舞いから逆に辿っていくことはまず不可能だ。

 そういう意味では、雨傘はたいした人物なのかもしれない。これまでのすべてを乗り越えて、さながら生まれ変わったかのように前向きに生きていることになるのだから。

 そして私は、この人物が自分の姉である可能性についても考える。

 こちらはもう、まるでピンとこない。私にとって姉妹とは親を同じくする血の繋がった存在のことを指すのではない。物心ついたときからこの屋敷で一緒に育ってきた同世代のことを指すのだ。

 血の繋がりは両親から見た姉妹の定義であって、当人である私の視点で言えば、血と姉妹はあまり関係がないのである。

 ――とてももやもやする。


 一通り走り終えて私が足を止めるのとほぼ同時に、雨傘も庭仕事を終え、ホースを片付け始めた。

 私はその様子を見ながら、軽くストレッチをする。日頃部活での集団行動に慣れているので、一人で走るのはどこか寂しさを感じる。祠を誘ってみたい気もするが、とにかく彼女はインドアな人なので、恐らく丁重にお断りされてしまうことだろう。


 私はそんなことを思いながら玄関に向かう。すると横から雨傘に呼び止められた。

「あの、真都衣お嬢様」

「え?」

 ちょっと意外だったので、私は少し声をひっくり返してしまった。

「あの……もし私の勘違いだったらすみません」

「うん。なに?」

「もしかして、お嬢様は私に何かご用があるのではありませんか?」

 どきりとする。悪事がばれたときの感覚に近いものを感じる。

「……どうしてそう思った?」

「あの……ここ数日、よく私のことを見ているように感じたもので。気のせいでしたら申し訳ありません」


 私は頭を掻く。そして思わず苦笑いする。「これは――私が下手なのか、あなたが鋭いのか、どっちなのかな。うん、白状する。実はちょっと訊きたいことがあった」

「そういうときは、何なりとおっしゃって下さい」雨傘はにこりと微笑む。「私にわかることでしたら、何でもお答えさせていただきます」

「訊こうかどうか何日も悩んだことだよ。それでも訊いていいの?」

「はい。遠慮なくお訊き下さい」

 この屈託のない笑顔は、本当にすべてを受け止めるつもりで作られたものなのか、それともこちらの抱える問いについて、そこまで深刻に考えていないだけなのか。

 私はそれを推し量ろうとするが、答は出ない。

「――じゃあ、二十分くらいしたら、私の部屋に来てくれる?」と私は言った。「それまでにシャワー浴びて着替えちゃうから」

「わかりました。ではそのくらいの時間に伺わせて戴きます」


 ◆


「何日か前、姉さんと二人であなたの話をしたの」と私は切り出した。

「はい」

「あなたの――生い立ちというか、この家に来るまでの話。私は初めていろいろ聞いた」

 雨傘の顔がいつになく引き締まる。私はその顔が悲しみや怒りといった負の感情を含んだものに変わることを内心恐れたが、幸いにもそういうことにはならなかった。

「……軽蔑されましたか?」

「びっくりしたけど、それは違ったな」と私は否定する。「正直な感想を言うと、大変だったね、って思った」

「ありがとうございます。――あの、羽子お嬢様には」

「もちろん言わない。っていうか言えない」


 雨傘の表情が少しだけ和らぐのがわかった。

 羽子が雨傘を必要としているように、雨傘にとっても羽子は大切な存在なのだ。いつかすべてを話すときが来るのかもしれない。でも少なくともいまはまだそのときではない。


「それでね――こういう軽い言い方もどうかと思うんだけど、あなたがしたこと、されたことを掘り下げる気はないの」と私は慎重に言った。「訊きたいのはそこからちょっと外れたこと。姉さんがね、あなたのことを、その――あなたのお母様と、私のお父様のあいだにできた子供じゃないかって考えてるのよ。これ、真相はどうなのかなって、それが訊きたかった」


 言いにくかったので、私は勢いに任せて一気に言い切ってしまう。

 雨傘は適切な言葉を探すようにしばらく一点を見つめたまま固まっていたが、やがて絞り出すように小さく言った。

「――わかりません」

「わからない?」

「はい。法的には母は――というか私は、誰の認知も受けていません。そして母が父親について私に語ってくれたことは一度もありません。なので自分のことがわからないのです」

「そうなんだ……」

「私自身、それはずっと知りたいことでした。母がとある裕福な方から援助を受けているのは知っていました。でも何故母がそのような援助を受けることができるのかについては、答をもらったことはありません。私なりに想像したこともありました。もしかしたらその人が私のお父さんなんじゃないか、って」

「まあ、自然な発想ではあるよね」


「それでその――事件を起こしてしまって」と雨傘は言い、しばし口を閉ざす。それから気を取り直したように続ける。「すべてを終えたあと、私は独りぼっちで生きるはずでした。そのことは逮捕されたときから覚悟していることでした。――でもそうはならなかった。旦那様が自ら私の前に現れて、ご自分が援助を続けていた人間であることを告げ、お屋敷で働くことを勧めて下さったのです」

「そこはちゃんとフォローしたわけね。虐待はわかってなかったのに」

 雨傘は首を振る。「拾って戴いただけでも、いくら感謝してもしきれません。おかげで私は、寂しい思いをすることもなく社会に復帰することができたのですから」

「うずまきのことで叱られたり、姉さんに敬遠されたり、それなりに大変そうに見えるけど」

「そのくらいのことはどうということもありません。私はそれまで本当に――すみません、このようなことを自分で言うのは恐縮なのですが――本当につらい思いをしてきました。その上で大きな罪も犯しました。そんな私にはもったいないくらいの素敵な生活をさせて戴いています。まるで夢のようです」


「夢、か」と私は繰り返した。そこまで言われると少し照れ臭いものがある。「うちで働いている人がそう思ってくれてるのは嬉しいかな」

「ただ――お嬢様のおっしゃる疑問はむしろ強まりました。どうして旦那様は私にこれだけのことをして下さるのか。ご恩をいただけばいただくほど、もしかしたら、という考えも強くなっていきました。自分が旦那様の娘かもしれないなんて、いまの私の立場においては、とても畏れ多い考えなのはわかっていたのですが……」

「でもまあ、何度も言うようだけど、自然な発想ではあるよ。確かにいまの話を聞いている限りでは、お父様があなた達母子に接近した意味が他に想像できない」

「はい……私もいろいろ考えたのですが、しっくりくる理由を思いつくことはできませんでした」雨傘は言い――そしてこう続けた。「私にだけお務めが回ってこないのも、ずっと気になっていましたし――」


「お務め?」

「あっ――」


 雨傘がびくりを体を震わせる。しまった、という顔をして口に手を当てる。まるで吐き出してしまった言葉をもう一度口の中にしまい込もうとするみたいに。

 しかしもちろん、言葉は元には戻らない。

 私の耳から脳みそに飛び込んできたその言葉は、私の中をこれでもかというほどぐるぐると駆け巡った。何故か、いつも以上に。

「お務めって、なに?」

「それは、あの……」


 雨傘のうろたえようは普通ではなかった。普段からおどおどとしたところのある彼女だが、ここまで動揺しているのは見たことがない。

 その姿が、私の中のある種のアンテナに激しく引っかかった。

「ごめん、食いつかせてもらう」と私は言った。「ものすごく気になる。――お務めって、何のこと?」

 雨傘は目を伏せ、肩を縮こめる。本人にそのつもりは無いのだろうが、まるでそうやっていればやり過ごせると思っているかのようにも見える。

 雨傘のそういうところが、時と場合によっては相手を苛立たせることがあるというのは――正直、少しわかる。


「雨傘」と私は身を乗り出し、向かい合って座っている雨傘の顔を覗き込んだ。「悪いけど、あなたの反応で余計スルーするわけにはいかなくなった。何かすごく大事なことなんだね、そのお務めって。どういう意味?」

 雨傘は泣きそうな顔をする。膝の上でぎゅっと握られた両手が小刻みに震えている。何だかいじめているみたいで良い気持ちではなかったが、私も引くに引けないところだった。

 ――やがて観念したのか、雨傘は自分の心を落ち着けようとするように、ふう、と一つ深い息を吐いた。

 相変わらず目を合わそうとはしない。手も握られたままだ。心なしか顔が赤くなっている。


「……お務めというのは」雨傘はぎこちない声でゆっくりと言った。「旦那様の――ご寵愛を受けることです」

「ご寵愛? ごちょうあい……」

 私は最初、それをうまく頭で処理することができずに、何度か口の中で転がしてみた。

 やがてじわじわとその意味するところが浮かび上がってきて、私の呼吸は一瞬止まった。

「ご寵愛って」

「はい、その……そういう意味です」雨傘が今度こそ本当に顔を赤くする。


「え、ちょっと待って」私は混乱しながら言う。「お父様のご寵愛って――まさかそんな」

 雨傘は黙っている。その沈黙によって、言葉はどんどん重くなっていく。

「あなたにだけ回ってこないというのはつまり、お務めをしてるのは、糸氏さんと――祠?」

 雨傘はこくんと頷く。

 私は軽い目眩を覚える。あたりの空間と自分の意識がずれていくのを感じる。祠がお父様と――そんなことって。


「私が外されている理由については、幾つか考えました」と雨傘は言った。私はばらけそうになる理性を何とかかき集めてその言葉を聞いている。「年齢のせいかもしれないとか。あとはその、私に――女としての魅力が足りないのかもしれないとか。でもそこでもやっぱり、同じことを私は考えました。私が娘だから――血の繋がりがあるからなのかな、と」

「ごめん、ちょっとタイム」と私は言った。「あなたのことと祠のことで頭が分裂してる。ちょっと落ち着かせて」


 私は胸に手を当てて大きく息を吸い、吐く。それを何度か繰り返す。

 わざとらしい仕草は自分への暗示だ。落ち着きなさい真都衣、落ち着きなさい真都衣――と心の中で懸命に自分に言い聞かせながら、私はそれを続ける。

 物事の主観的な大きさというのは、世間一般のそれとは大きく異なるのだということを認識しないわけにはいかない。

 これは雨傘の過去に比べたら小さなことなのかもしれない。でも私にとってはこちらのほうが遥かに衝撃が大きかった。

 いつも自分の趣味に生きていて、男っ気をまるで感じさせない祠。私はその優しい笑顔を思い浮かべ、それからお父様のやはりとても優しい笑顔を思い浮かべる。どちらの笑顔にも裏表をまるで感じさせない力があった。私の前ではすべてをさらけ出してくれているように思えた。

 しかしそんなことはなかった――隠し事は誰にでもあるのだ。当然のことながら。

 でも、その隠し事がまさか、そんな――。


「……信じられない」私はやっと言葉を発することができた。「ぶりっ子したいわけじゃないけど、不潔よ。お父様がそんな人だなんて、考えたこともなかった。……正直、少し軽蔑する」

「あの、お願いです、旦那様をお嫌いにはならないで下さい」と雨傘は言った。「私達は誰もそれを無理には押しつけられていません。お話を持ちかけたのは旦那様ですが、糸氏さんも祠さんも、自らそれを受け入れたのです」

「じゃああなたも」と私は言葉をぶつけるように雨傘に言う。「持ちかけられたら受け入れるっていうの?」

「――はい。旦那様のご命令とあらば、受け入れます」

「おかしいよ」私は頭を抱える。「忠誠心ってやつなの? 私には何か変な宗教みたいにしか思えない。……そう、それにお母様よ。お母様はこのことを知っているの?」

「……確かなことはわかりません。でも、私の目には、とうに感づいておられて、それを黙認しておられるように見えます」

「そんな……」


 私の中で世界の一部が組み変わっていく。

 家族を、この屋敷を、神聖にして絶対のものであるとまで考えていたわけではもちろんない。

 でも少なくとも私の中の家族はそのようなことをする者達では断じてなかったし、この屋敷はそのようなことが行われている場所では断じてなかった。生まれてから十六年間、ずっとだ。

 それがこのほんの僅かな会話で、すっかり崩されてしまった。


「申し訳ありません」と雨傘が言う。「その、やはり何が何でも黙っているべきでしたでしょうか?」

「……いいえ」と私は否定する。「少なくとも、聞いちゃったいまとなっては、知らずにこの屋敷で暮らし続けてる自分を想像すると馬鹿みたいでとてもいられない。まだ頭の中が混乱してるけど、とりあえず、雨傘が謝ることは何もないよ。しつこく食い下がったのは私だし」

「言うまでもなく、旦那様からは決して他言しないよう命じられていました。特にお嬢様方に対しては。――自分でも何だかおかしな感覚です。お嬢様に訊ねられたからといって、すべて話してしまった自分が信じられません。言い訳をするつもりはありませんが……何だか、まるで誰かに言わされたような気持ちです」

「言わされた……」

「いえ、その、何となくそのような感じだという話です」雨傘は少し焦って言った。「話してしまった私も少し混乱しているのかもしれません」

 言わされた。

 ――言わされた?


 ◆


 そのとき、私に閃くものがあった。

 それは論理的な筋道もなければ必然性もない、純粋な勘――思いつきの産物。

 幾つかの発想の断片が急激に結びつきを始め――一つの物語が私の中に生成されていく。

 吹けば飛ぶような根拠薄弱な物語であるにもかかわらず、とても強く込み上げてくる、不思議な確信。


 ◆


「……お嬢様?」と心配そうに雨傘は私の顔を覗き込んだ。「あの、大丈夫ですか?」

「――大丈夫」と私は答える。「雨傘。いちおう確認しておきたいんだけど、このことを関係者以外に話したのはいまが初めてなのね?」

「はい、もちろんです」

「うずまきにも話してないよね?」

「そ、それは当然です! 羽子お嬢様はまだそのようなお歳ではありません」

「それは確かにそうだ。私でも相当こたえたもの。まあ、わかった。ありがとう」


 私は言い、背もたれに寄りかかった。どこかで待ち構えていたらしき疲労感の大群がまとめて襲いかかってくるのを感じた。

 まだ頭はふわふわしている。現実感は完全には戻ってきていない(ここが現実であるかどうかはともかく)。心なしか体が少し熱を持っているような気もする。自分をいたわるように、私はゆっくりと目を閉じる。

「……雨傘」

「はい」

「まあとにかくさ、あなたはこれからいっぱい幸せになってね。心からそれを願ってるよ」

「お嬢様」雨傘は少し驚いたように言い――それから震える声で続けた。「ありがとうございます。私は十分に幸せです」

「もっと幸せになるの」と私は言い、天井を向いたままゆっくりを目を開く。「お互いにね。そのためにも、元の世界に戻らなきゃ。元の世界があるならの話だけど」

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