第23話
「ん?星刻の夕暮れ?」
〈………〉
【星刻の夕暮れ】
それは多くのゲームがVRMMOを主流する様になった時代、更に先のクオリティーを目指す為にゲーム内のNPCやゲームエンジンに高性能のAIを搭載する企業が増えた。
その先駆けともいえるセイバー・テクティカル社が新たに開発した最新モデル。
それが【MAAIS】(マルチ・アクティビティ・アーティフィシャル ・インテリジェンス・システム)
VRMMO用の最新型思考AI。
通称マーズ。
そして、その思考AIマーズを搭載したMMORPGのNPCは、そのあまりのリアルな表情、表現や対応にゲーマー達は驚愕し歓喜した。
ゲーム内容の充実度も加味されたそのMMORPGは空前の大ヒット作となり、そこまでリアルに対応出来るならば恋愛シュミレーションならば、そのポテンシャルを最大限に活かせるのではないかとの期待の下に生み出されたのが、このゲーム。
アドベンチャー型・恋愛シュミレーションゲーム。
【星刻の夕暮れ】である。
これは、ヒロイン一人一人に生活圏環境、家庭内環境、友人対人環境、自己容姿環境と様々な環境設定の下、そのヒロインの性格が産まれてから、どの様に育つのかをシュミレートした。
そうすることによりヒロインの性格や話し方、癖や好み等が構築され、それらを身に付けたヒロイン達と、共に語り、共に歩み、思い出を共有する。
そして最後にはヒロイン達と思い思いに結ばれる。
正に恋に恋する恋愛シュミレーションゲームとして、そのゲームは売り出される前から空前絶後の話題作となっていた。
そんなの現実で恋愛するのと変わらないし、意味がないのでは?と言う人達もいたが、様々な性格の現実でも予想されうる、ありとあらゆる言動パターンを披露してくれるヒロイン達が多く用意されている。
その為、逆にある意味現実世界への恋愛シュミレーションとしての期待も高まっていたりもした。
私も、その愛らしいヒロイン達を愛でまくり、共にキャッキャッうふふするのをとても楽しみにしていた。
そう…楽しみにしていたんだ。
だけど、私はそのゲームをする事も、そのゲームの発売を見る事も出来なかった。
「そうだ…私は確か…」
〈………〉
「あの時、姫ちゃんと一緒に新作ゲームの話をしていて、その後…」
〈………〉
「あれ?姫……ちゃん?」
〈………〉
「……そうだ…織姫ちゃん!!」
〈………〉
「織姫ちゃん…そうだ、私のこの姿…姫ちゃん用にと思って考えてたベガアバター……なんで私がこの姿になってる……の?」
〈………〉
「……ねぇ?サポーター。なんでさっきから黙ったままなのよ」
〈…………〉
「サポーター!!」
〈………奈留〉
「どういう事!ちゃんと説明して!!」
〈………禁則事項です〉
「な」
〈………禁則事項です〉
「な…にを…こんな時にまで…」
〈……禁則事項です〉
「巫山戯ないで!!」
〈…禁則事項…〉
「〜〜〜( º言º)何さっきから同じ事しか言わんのや!お前は針の飛んだレコードか!?」
〈禁則事項です〉
「サポーター!!」
〈こればかりは奈留自身で答えを見つけて頂かなければなりません〉
「なんで……」
〈…申し訳ごさいません〉
「………わかった」
〈…奈留〉
「…なんてゆう訳あらへんやろ!!このど阿呆がァ!!」
〈…奈留〉
「バーカバーカ!」
〈…奈留〉
「……むぅ………」
〈……〉
「……ん〜がぁ〜!!」
〈……〉
「……はぁぁぁ〜……わかった、わかったわよ…ねぇ、サポーター。探せば答えは見つかるのよね?」
〈肯定です〉
「……ん。なら良いや。キレてごめんね?」
〈……慣れておりますので、ご心配には及びません。奈留〉
「何よそれ!まるで私が何時もキレ捲ってるみたいじゃない!本当、サポーターって可愛くないわねぇ〜!!」
〈私に可愛さは求められておりませんので、悪しからず。因みに奈留は結構な頻度でキレ捲っておりますよ?〉
「んな事ないわよっ!!」
〈……そうですね〉
「ぐぅ」
こうして、私とサポーターの時間の無駄なやり取りの後、私は私の問題を一旦保留にする事にしたのだった。
なんか良く分からないけど、なんか色々できそうなので、とりあえず生活環境を整える為に頑張ります 。 no.name @fk2310
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