第22話

「サポーター!」


〈ランダム錬成開始します〉


「お願い!間に合って!」


〈奈留。望む世界を願うなら確率を〉


「うっ!ぱ、パンツ位幾らでも使いなさいよ!バカァァァ〜〜!!」


〈望む世界への扉、今開かれん。ランダム係数小数点以下繰り上げ。イマジナリーインダクションロック。おいでませ、トロイメライ・リアライズ・クロック〉


 腕時計が出来た。


「嘘やろ?おい!人の履いてるパンツまで使っといて腕時計て…嘘やろ?」


〈奈留、安心して下さい。これは貴女の望みの物です〉


「え?そうなの?………どう見ても腕時計だよ?」


〈それはimaginary realize clock。そのまま意味は幻想を認識する時計です〉


「……すまん。言ってる意味が全く分からない」


〈ですからこの腕時計は奈留の厨二チックな妄想を認識して現実に落とし込む時計です〉


「ん?何だろ?そこはかとなく馬鹿にされた感が拭えないのだけれど?」


〈奈留が馬鹿にされようと馬鹿だろうと私はどうでもいいのですけど、これを使えば奈留の理想が形になると言う事です〉


「ねぇ!今、私の事、馬鹿っていった!絶対に言ってた!」


〈今はそんなどうでもいい事はどうでも良いのですよ。それよりも今すべき事が奈留にはあるのではないですか?〉


「後で覚えて置きなさいよ…」


〈必要としないデータはデリートした後にデフラグしますので〉


「本当に腹立つ!で!使い方は?さっさと教えなさいよ!」


〈事象の改編は対象が広ければ広い程、不可がかかります。ですのでこの森一帯のみを対象にして奈留の理想に変換しましょう〉


「だ〜か〜らぁ〜!つ〜か〜い〜か〜たぁ〜わぁ〜?」


〈では、その腕時計を利き手に着けて文字盤を逆時計周りに1周させて下さい。そして両手を空へと掲げて高らかに叫んでください。

[我、混沌の世界を浄化せし者也。

今この時を持って我は世界を安寧に導く導師となる。

故に我は世界の理を再生せし我が想いの命じるままに扉は開かれる。

開かれるは無限の幻想、照らすは新世界。

今、此処に我は降臨す。

我が名は奈留李依是 可憐都 譜嗚呼素都。

我は世界の祖と成りて世界の繁栄を促す者也]

 Träumerei system Anlaufen.〉


「長いわ!!覚えられるか!」


〈しょうが無いですねぇ〜。

 では私の後から続けてRepeat after me.

 我、混沌の世界を浄化せし者也。

今この時を持って我は世界を安寧に導く導師となる。

故に我は世界の理を再生せし我が想いの命じるままに扉は開かれる。

開かれるは無限の幻想、照らすは新世界。

今、此処に我は降臨す。

我が名は奈留李依是 可憐都 譜嗚呼素都。

我は世界の祖と成りて世界の繁栄を促す者也。

 Träumerei system Anlaufen.〉


「我、混沌の世界を浄化せしって恥ずいな!これ!…一体何な訳この台詞?」


〈詠唱です。恥ずかしがらずにほらほら〉


「混沌の世界を浄化せし者也。今この時を持って我は世界を安寧に導く導師となる。故に我は世界の理を再生せし我が想いの……何だっけ?」


〈ですから我、混沌の世界を浄化せし者也。

今この時を持って我は世界を安寧に導く導師となる。

故に我は世界の理を再生せし我が想いの命じるままに扉は開かれる。

開かれるは無限の幻想、照らすは新世界。

今、此処に我は降臨す。

我が名は奈留李依是 可憐都 譜嗚呼素都。

我は世界の祖と成りて世界の繁栄を促す者也。

 Träumerei system Anlaufen.です〉


「だ〜か〜らぁ〜!長いって言ってるでしょ?大体なんで最後だけドイツ語なのよ、普通にトロイメライシステム、スタンドアップで良いじゃない!」


[トロイメライシステム、起動しました]


〈あ〉


「は?」


〈あ〜あ〉


「おい、どないなっとんねん?起動したんだが!」


〈しちゃいましたねぇ〜。あ〜あ、全く奈留は空気が読めないヤレヤレさんですねぇ〉


「おい…」


〈まあ、後で編集して流しましょう。セリフは奈留ボイスでアテレコで貼り付ければそれっぽくなるでしょう〉


「おい!こら!」


〈何でしょう?〉


「説明しろし!」


〈まあまあ落ち着いて下さい奈留。なんと言うかその不良の事故とでも言いましょうか?〉


「はぁ?何で疑問形なんですか……え?事故?もしかして失敗したの?もしかして間に合わなくなるとか?」


〈いえ、きちんと起動してますので間に合わなくなるという事象は無くなりますね〉


「は?え?でも事故ったんでしょ?何で起動してるの?」


〈え?起動が認証されたからでは?〉


「は?え?は?」


〈最後のセットアップコールでシステムは正常に機能しています〉


「は?セットアップコール?最後の?ならさっきからやたらと繰り返してた長ったらしい前台詞は?」


〈全世界への奈留の声明ですね。奈留が大好きな威厳かつ厨二臭い台詞を頑張って用意してみました〉


「は?」


[起動者ナルリーゼ・カレントファーストのパーソナリティイメージにより改編、侵食を開始。………完了しました。

 現時刻を持って惑星カルマリンドは惑星エデンに上書きされ星刻の夕暮れ世界へと改編されました。

 また星帝ナルリーゼ・カレントファーストにより全世界が治められます。

 時刻は星刻歴元年1月1日午前0時丁度です]


「…は?」


〈おめでとうございます奈留、貴女はこの世界の全てを掌握しました。これで貴女の悩み事は全て解決したと言っても過言ではないでしょう〉


「………は?」


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