第18話

「それでは、初めましょうか」

〈家の中では止めた方がよろしいかと〉


「ぐっ」

〈ノリと勢いだけで先走りましたね。分かります〉

「うっ、うっさいわよ!」



 叫んでしまって慌ててフィナの様子を伺う様に振り替えると、首を傾げて見つめられた。



「ヤバ、カワ」


「やばかわ?」


「えええええと、な、なんでもないよ!」


「?」



 ぐっ。可愛いな!コンチクショウ!



「ちょっとお外行ってくるね」



 エレベーターに向かおうとすると、袖をつかまれた。


 振り替えると

「あっ。え、えとえと」

 と袖を離してワタワタしている。



 うん。可愛い!今すぐ抱きしめたい!

 じゃない!



「えーと、一緒に行く?」


 コクコクと首を縦にふり肯定するフィナ。


「そっか。それじゃあ一緒に行こうか」


「うん♪」


 手を差し出すと満面の笑顔で手を繋いでくる。


 私も笑顔でそれに応える。




 どうしよう。私、今日死ぬかもしれない。


 今現在、私の幸運値が全て使い果たされているに違いない。



 だが、それで良い!



 否!それが良い!



 むしろ、昇天してもいい!


〈ですから死なない身体なんですと何度言えば〉



 人のモノローグにいちいち、ちょっかいをかけないで欲しいのだけれど。

 

 外に出て、早速錬成をする。



「材料は何が良いのかしらね」



〈やはり強度と弾性に優れている例の洞窟鉱石がよろしいかと〉



「やっぱりそうなるわよね」



 左手に温もりと幸せを感じつつ外敵から身を守る物をイメージし、錬成を開始する。


〈ランダム錬成しますか?〉

「勿論yesよ!」



〈ランダム錬成開始します。……パンパカパーン。おめでとーございまーす。複数の錬成条件がHITしました。マルチプロセス起動。全プロセスシークエンス実行。マルチランダム錬成開始〉


 目の前に数百にも及ぶ光の粒子の塊が現れては消えていき、11体が最終的に形を成していく。



〈マシンドールでしょうか?〉



 機械の兵隊さん達が出来た。


 隊長らしき機械の兵隊さんが一歩前に出て敬礼をすると、後ろの兵隊さんもそれに合わせて敬礼する。


《デウス・エクス・マキナ・マシンノイド宙空陸海汎用機一個大隊1000機名、只今着任いたしました》



 突然の出来事にフィナは私の後ろに隠れ私の服を握りながら覗いている。



 くう可愛、だ、抱きしめたい!

 だが、落ち着け私!



「えーと。戦機?戦機って言うと戦う機械って事?」



《成る程!確かに我々は戦う機械兵ですから戦機とは言いえて妙ですな!》



〈成る程!戦機と言うことは絶唱してシンフォギっちゃう感じですね!分かります〉

 いや、全然分からないよ。大体、あれ戦機じゃなくて戦姫だし。因みにどう見ても女性型ではないよね。



「は、はあ。それで、貴方方が私達の盾役を引き受けてくれるという事でいいのかしら」



《はっ!ナルリーゼ様の盾となり剣となるのは、我々デウス・エクス・マキナ兵の矜持であります!》



「そ、そうなの」



《はっ!ナルリーゼ様!我々をご指名頂き、感無量にございます!どうぞ、ご命令を!》



「誰?」



《はっ!失礼いたしました!私はデウス・エクス・マキナ・マシンノイド宙空陸海汎用機大隊の隊長を勤めさせて頂いておりますAA-0001であります!》



「ダブルエー?いえ、ごめんなさい。貴方の名前は聞いてはいなかったのだけれど」



《はっ!大変失礼しました!しかし我々に謝罪は不要であります》



「えーと、そんなに畏まわれるのはその。普通に会話してくれると有り難いのだけれど」



《はっ!申し訳ございません!ですが御主君に対し粗雑な言葉使いなど、我々の矜持に抵触いたします!御勘弁を》



「そ、そう。因みに御主君て何?」



《はっ!ナルリーゼ・カレント・ファースト様であります》



「それそれ!誰?ナルリーゼって」



《御主君であります!》



「(なんだろう、この会話出来ているのに全く噛み合っていない感は……)

 えーと、それじゃあ、その人にお会いしたいわ。そのナルリーゼ様?は何処にいらっしゃるのかしら。

 私達の為に貴方方を派遣して下さったのですもの、感謝のご挨拶だけでもしたいわ」



《はっ!……は?一体どういう……いえ!失礼しました!

 御主君!少しばかり思考会議する時間を頂けますでしょうか!》



「え?は、はい。どうぞ」



《どういう事だ?目の前に……ぶつぶつ……もしかして頓知が試されているのだろうか?だが……ぶつぶつ……皆はどう思考する……ぶつぶつ……ぬ、しかし、本当にそれで良いのか?……ぶつぶつ……く、1000機いても良案はそれしか出ないのか。なら、仕方があるまい。

 

 ご、御主君。

 至高の御方が我々では考えにも及ばないものを見据えておられる事は存じております。

 我々も御主君に思考する者とて創造された事は重々承知しております。

 ですが、我々の出す答えが必ずしも御主君の納得の行くものとはならないと言う事もご理解下さい。

 我々では、今回この答えしか導き出すことが出来ませぬ。

 平に御容赦を》



 前置き長いわ!どこぞの校長の話かよ!


 〈私も同意見ですが、頑張って考えてくれたみたいなので、聞いてみては。

 そもそも、奈留が訳の分からない話を振るからこんな面倒になっているのと推考します〉

 


「なによそれ。まあ。どうぞ」



《有りがたき幸せ。では、み、ミラーシールド等は如何でしょうか!》


「え?ミラーシールド?なんで?……まあ、ご挨拶出来るのでしたら何でもよろしいかと思いますけど」


《はっ!では失礼いたします!ミラーシールド展開》


 鏡面のような磁場が発生し、私と後ろのフィナを写し出す。


「えーと何これ?」



《はっ!ミラーシールドであります》



「いえ、そうではなくて、これで誰とご挨拶をすれば、あ、テレビ電話的な?」


 しかし、いつまで経っても私とフィナしか映らない。


「えーと、これで何をすればいいのかしら?」


《はっ!ご挨拶されるとよろしいかと!》


「え?誰と?」


《はっ!御主君かと!》


「えーと、それで、その御主君様は何処に?」


《はっ!目の前であります!》


「…………ああ、そういう事。成る程成る程。この子が」

 とフィナを見つめ

「ん?でもフィナちゃんよね?」


「フィナはフィナだよ。奈留お姉ちゃん」


「うぐ、そ、そーよね」

 ぐ、相変わらずお姉ちゃん呼びは破壊力抜群だぜ!


〈もう、病気ですね〉


「(うるさいわよ。)ん?ナルお姉ちゃん……ナルリーゼ?……ああ!そう言う事!この子か!本体の子!」


〈その設定まだ残ってたのですか?ハア、まあ、どちらにしろ、奈留の錬成で彼等は構築されたのですから、奈留が主君なのは当然かと〉


「でも、ダブルエーさん、私の事ナルリーゼって。と言うことは、やっぱりこの子と中の私は別人じゃない!」


〈ですが、カレント・ファーストって訳すと初めの瀬、つまり一ノ瀬ですよ〉


「うわ、マジですか」


〈マジですね。いい加減諦めましょう〉


「ちぇ、この子とイチャコラしたかったのに」


「いちゃこら?」


〈頭の中が駄々漏れですね〉


「(うっさいわ!)何でもないよーフィナちゃん。さてと、うん、ダブルエーさん、ありがとう。それでお願いがあるのだけど、いいかな?」


《はっ!ご命令をどうぞ!》


「ああ、うん命令ね。命令。では、この森の偵察とマップ制作お願いしますね」


《Yes My Road》


「……それ流行ってるの?」

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