第17話

 私は白の世界にいた。


 何もない真っ白な世界。


 ふと気づくと誰かが還っておいでと手招きしていたので、とりあえず還ってみた。


 気が付くと少女を抱きしめていた。


 だが、先程とは違い、こちらは一面、真っ赤な世界だった。


 抱きしめている少女も意識が無く、真っ赤に染まっていた。


 血だ。


 血だらけだった。


 どうして!


 どうしてこうなった!


 いや、理由は良く分かっている。


 分かっているのだ。


 そう。


 あれは、少女にねだられて頭を撫でていた時、少女がギュッと服を握りしめてきたのだ。


 思わず抱きしめてしまった。


 とても良い匂いがした!


 しかも抱きしめ返してくれた上に擦り擦りと擦りよって来て!


 この時点で私はもう限界だった。


 そう。


 私は大量の鼻血を少女にぶっかけた上に一瞬、昇天してしまったのだ。


〈最低ですね〉


 今度ばかりは何も言い返せなかった。


 どうしようと考えていたら血がキラキラ光って少女に吸い込まれるようにして消えた。


 そして若干痩せていた少女がふっくらして抱き心地が最高に良くなった。


 さらに少女の胸部装甲が当社比1.5倍にupしていた。


「ど、どういうこと?」


〈はて。エリクシールと奈留の願望効果でしょうか?〉


「いやいや。最高が更に最高かよ!になったけれど、真面目にどうしてこうなった!」


〈あくまで予想なのですが、奈留がエリクシール体になったので、奈留の体液が奈留の願望に影響されて奈留の願望を叶えようと奈留の体液が奈留の願望を叶える為に彼女の身体に奈留の願望を実行させたのではないでしょうか。

 奈留の体液は奈留自身でもありますし〉


「なんだって?」


 〈難聴系主人公ですか?述べているのはあくまで予想です。

 何せエリクシール体の事例が少なすぎる為、情報による確立が上げられません〉


「いや、ただ単に私の願望と私の体液の語数が多過ぎて逆に分かりづらいって言いたかっただけなんだけど。

 だけど、ふむ。つまりは被検体による検証例が足りないって事ね」


〈肯定〉


「成る程。まあ、彼女がいたって事は、他にも人がいるって事よね。なら、これから検証のしようは、いくらでもあるってことよね」


〈まあ、そうでしょうね〉


「この子のご家族とか居るでしょうし、だとすれば集団生活してるって事で、なら薬師は必須よね」


〈まあ、そうでしょうね〉


「なら、この子をお家に送る次いでに、ご家族と交流して交友関係を築けば、お互いWin-Winな関係ってわけよね」


〈まあ、そうでしょうね〉


「何よ、さっきから同じ返答ばかり」


〈いえ、ご両親に好印象を刷り込ませて、あわよくば、この子をお持ち帰りとか言う邪な感情が駄々漏れに流れてくるので、〈駄目だこいつ早く何とかしないと〉と思っているだけですが何か?〉


「しょ、しょうがないじゃない!好みだったのが、ふっくらしちゃって更にパワーアップしちゃったんだから!」


〈はあ。それで、さらに向こうへ!プルスウルトラ!的な感じで暴走しているのですね。分かります〉


「しょうがないじゃない!考えるのは自由でしょう!止められないのよ!あの子に手を出していないのだから考えるぐらい良いじゃない!」



「う、うーん。あれここは」



〈あ、起きましたね〉

「あ、起きた?ごめんね。うるさくしちゃって」



「あ、女神様」



「んと、ごめん。女神様って何?」



「貴女は女神様なんでしょ?」



「えと、ごめんなさい。私は女神様ではないわよ」



「え?でもここって天界じゃないの?私、死んじゃったんだよね?」



「えーと。ここは天界ではないし、貴女は死んではいないわね」

〈おや?もしかして脳内メルヘンの住人でしょうか?〉

「失礼な事言うな!」



 ヽ(; ゚д゚)ノ ビクッ「ご、ごめんなさい!」



「あー!ごめんなさい!別に貴女に言った訳ではないのよ。ビックリさせちゃったね!」



「え?あ、はい」



「とにかく、貴女は死んではいないの。そこはOK?」



「えと、はい」



「うんうん。そうだ!お名前!お名前教えて貰ってもいいかな?私は奈留。一ノ瀬 奈留よ。奈留って呼んでくれて構わないわ」



「は、はい。ひ、フィナ……です。」



「フィナちゃん。可愛い名前ね。どうして此処にいたのかな?山菜でも採りに来た?」

〈いくらなんでも災厄の森奥深くに山菜採りはないでしょうに。もしかして奈留の頭もメルヘン脳なんですか?〉

「うっさいわね!」



「ひう!ご、ごめんなさい!」



「あああ!ち、違うの!フィナちゃんに言った訳じゃないの!ごめんね?」



「は、はい」



「そ、そうだ!フィナちゃんは何処から来たの?良かったらお家まで送らせて貰うけど」

〈奈留の今の装備では、広場の結界内から出た瞬間に死に……いえ、死にはしなかったですね。延々と食べられ続けるだけで〉


「どういうことよ」

〈食べられた瞬間に再生して、また食べられて再生のスパイラルですね〉

「何それ!怖すぎるのだけど!」



「えっと。?」



「ああ。ごめんなさい。ど、どうしようか」



「えとえと。きっと村に帰っても誰もいないと思うの」



「え?そうなの?」



「うん。村が夜中に知らない人達に襲われて、皆バラバラに逃げたの。この森は村の狩場だから、狩りの準備や休憩する為の一族しか知らない結界が幾つかあるの。多分皆そのどれかに逃げ込んでいる筈だけど」



「そ、そうなんだ。あれ?でもご両親は?一緒に逃げなかったの?」



「お父さんとお母さんは私を先に逃がす為に囮になったの。でもお父さんもお母さんも一流の狩り師だから上手く逃げれたと思う。私も結界に入れたし。でも入る前にあいつらの放った犬に噛まれて」



「ああ、酷いケガだったもんね」



「治してくれたのって、やっぱり奈留お姉ちゃんなんだよね?」



「ぶふぅー!」

 や、ヤバい!は、鼻血が!

 ま、まさかのここでお、おおおおおお姉ちゃん呼びやとぉおおおおおおーーーー。

 不意打ち過ぎる!けど可愛い!!



「え?え?ど、どうしたの?」



「ご、ごめん。ちょっと落ち着かせてね」

 ハア、ハア、スー、ハー、スー、ハー



「え?えと?う、うん?」



 スー、ハー、スー、ハー

 ヤバい。くらくらする位、良い匂いする。

 

 はっ!だ、駄目よ!落ち着け!落ち着くのよ!私!

「そ、そう。そうだね。治したのは私であってるよ」



「あ、ありがとう。まだお礼言ってなかったから。ありがとうございました奈留お姉ちゃん」



 今日最大の愛らしい笑顔で奏でられたお姉ちゃん呼び!

「ぐあぁはぁー!」

 クリティカル!改心の一撃!マジ、オーバーキル!!


 ふ、燃えたよ…燃え尽きた…真っ白にな……

 ガクッ



「えとえと、だ、大丈夫ですか?」



「は!だ、大丈夫!大丈夫だから!」

〈駄目だこいつ。早く何とかしないと〉

「うっさいわね!ととと、ち、違うからね?」



「えとえと。は、はい」



 ヤバい!おろおろするフィナちゃんも可愛い!

「そうそう!それはそうと、なんでその結界から出ちゃったの?」



「それは、その……噛まれた所が痛くて薬草を探しに結界から出ちゃったんだ。そしたら見たこともない壁があって、壁の下に家と人が居たから覗いていたら滑り落ちたちゃたの」



「ああ、そういうあれですか」



「う、うん」



「じゃあ、とりあえず初めは、フィナちゃんの居た結界に向かおうか」



「壁登るの?」



「いや、壁は流石に辛いから崖に沿って行くとか?」

〈ですから、広場を出れば、あっという間に齧りつかれますよ。

 人の話を聞かない子ですね。お母さん、そんな子に育てた覚えはありませんよ〉


「誰がお母さんだ!そのネタ大分前にやってるわ!だいたい育てられた覚えは一切ないです!」

〈やれやれ。パンツが無い位であんなに泣いていたエロパンツ先生は一体何処へ行ってしまったのか〉

「そんな名前の人!知らない!」



「えーと。奈留お姉ちゃん?」



「は!ご、ごめんね。度々」



「う、うん。……ボソッ(奈留お姉ちゃんて独り言多いなー)」



「んッん!さて、なら解決策はやっぱり」

〈錬成しかないでしょうね〉


「でも、そんな都合良く出来るのかな?」

〈まあ、方向性のイメージで錬成品も変わりますからね。シールドとか聖域とかイメージすれば何かしら使えるものが出来るのでは?〉


「まあ、そうなんだよねー。ふーむ」

〈まあ、いざとなったら、パンツを犠牲に〉


「させね~よ!!」

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