第16話 救出と代価

―???side―


「知らない天井だ」


 目が覚めると共に呟く。


 回りを見回してやっぱり知らない場所だと確認する。


 もしかして自分も捕まってしまったのだろうか?


 だとしても、状況的に身動き出来ない訳でも、扱いが酷い訳でもない。


 ならば、私は誰かに助けられたのだろう。


 そう結論付けて、あり得ないくらいのふかふかな寝床から出る。


 今気付いが、干し藁を布で覆った寝床では無いようだ。


 なにせ、チクチクしないし、なのにこの押し返してくるような弾力感。


 中身は一体どうなっているのだろう。


 好奇心に囚われつつも更に情報を集める為に部屋を出ようしたが、出入口がない。


 一部透明な壁で外は見えるが出られそうにない。


 まさか、やっぱり閉じ込められている?


 そんな考えに至りそうになった時、話声が聞こえた。


 声の聞こえる壁に耳を当て内容を聞き出そうと試みる。


「な!なんで考えている事、分かって……なぁぁぁァァァー!お前、最悪じゃあー!」


 突然の叫び声に体がびく付く。


 思わずその場で、へたり込む。


「うえ?あの子起きたの?……ひええ。ど、どうしよう。ま、まだ、心の準備が。……うん。それは、うん。……分かった。で、でも、ちょっとだけ待って!ちょっとだけだから!すーはー、すーはー、よし!」


 また声がしたので壁に耳を当てようと恐る恐る顔だけ壁に近づくと壁が急に迫ってきた。


 ガンッ!


「ふぎゃ!」


 突然に迫ってきた壁に頭を殴られ悶絶する。


「痛ぅーぅ」


 予想外の攻撃と抜けた腰では一切対応出来なかった。


「え!ご、ごめん!大丈夫?なんでドアの前にいるの!勢いよく開けちゃったよ!」


 涙目になりながらも頭を手で抑え声のする方に目を向けた。


 女神様がそこにいた。


「ふえ」


 思わず痛みも忘れて惚けてしまった。


「ご、ごめんね!痛かったよね!ああ、どうしよう」


 女神様はあたふたしている。


 おさえていた手を下ろしたままポカーンと口を開けて見つめてしまった。


 すると女神様は御手を下ろし私の頭を撫でて下さった。


「ごめんね。本当に、そこに居ると思わなくて」



 撫でて貰うのが気持ち良くて何だか痛みそのものがが無くなっていき、思わず目を細めて撫でられるままになってしまった。


 ああ、私はやっぱり崖から落ちて死んでしまったのだろう。


 女神様がいて優しくしてくれる。


 きっとここは天界で私は召されてしまったのだ。


 先立つ不幸に両親に申し訳なく思いながら、でも撫でる手が気持ち良くて、嬉しくて撫でる手に思わず、すり寄ってしまう。


「うぐっ。か、可愛い」


 頭を撫でる手が止まってしまったので見上げるとと女神様が顔を真っ赤にしてぷるぷるしていた。


「め、女神様?」


「ふえ!何?女神様?」


「女神様。もう少し撫で撫でして下さい。駄目……ですか?」


 優しさに甘えておねだりしてみる。


 ずきゅーん!!!!


 見上げてお願いしてみたら、女神様は固まってしまった。


 どうやら我が儘だったらしい。


「我が儘……ですよね。無理言ってごめんなさい。」


「いやいや!無理じゃないし!我が儘じゃないし!むしろwelcomeだよ!」


 そう言ってまた女神様は頭を優しく撫でてくれた。


 嬉しいしとても暖かくて気持ち良い。


「ありがとうございます。女神様。私、悔いはいっぱいあったけど、でももう……」


 そう呟いて女神様の服をギュッと握ってしまった。


 女神様はそんな私の呟きを聞いてギュッと抱きしめてくれた。


 私もギュッと抱きしめ返し女神様の胸に顔を埋めて擦り擦りした。


 その柔らかさと暖かさと気持ちよさのあまりの心地よさに良い匂いが加わり、私はまた眠りに落ちてしまった。


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