第15話
庭のリンゴの木には毎日、採っても採っても次の日には実をつける。
まあ、1日一個だけだけど。
なので、収穫は若干ルーティーンになりつつある。
その日も、何時ものようにリンゴを回収していた。
〈親方、空から女の子が〉
サポーターが何かのたまわった。
「はあ?何言ってるの?」
〈親方、空から女の子が。受け止めないと死亡する確立は約80%です〉
「だから何いって、あ!」
見上げると、子供が上から落ちてきていた。
慌てて、落下地点に駆け寄る。
と同時に、どしりと重さが腕に掛かる。
「どっせーい!」
気合いを入れて何とか救出成功。
何だか私の身体の頑丈さと筋力の強さを垣間見た気がする。
〈掛け声がおっさん臭いですね。流石、親方です!筋肉でシャツも弾けさせられますね〉
「誰が親方よ!それに受け止めたのは私なんだから、どちらかと言えばパズー役な筈でしょ!何で親方になってるのよ!大体この子、飛行石とかつけてないから衝撃半端なかったのよ!仕方がないでしょ!」
〈いや、飛行石とか。ネタ的に古いですねぇ。あの雲の向こう側に見たこともない島が浮いていたりするのですか?〉
「あなたが先に振ってきたネタじゃない!それに、あれは名作だから古くても問題ないのよ」
〈成る程。少女が降ってきたとネタを振ったを掛けた高等テクニックだったのですね〉
「そんな事、一言も言ってないわよ!」
〈それより、その子供いいのですか?ケガしているようですが、私としては手当てする事を推奨します〉
「くぅぅぅ💢分かってるわよ!」
血にまみれていた肩と足の布を血は固まりかけていたが、肉がズタズタに食い千切られていた。
「酷い。森の獣にでも襲われたのかしら」
〈そうかもしれませんね。まあ、でも唾付けとけば治るのではないですか?〉
「いや、何処の民間医療の思考回路よ!唾なんて付けたら雑菌が入り込むかもしれないでしょ!」
〈いえ、奈留の唾なら問題無いかと〉
「あー。そういえば、そういうあれなのよね」
〈はい。そういうあれです〉
「まあ、だとしてもなんか嫌なので、薄めたラストエリクシールをちょちょいと」
〈成る程。得たいのしれないガキには何時もリンゴの木に振りかけている栄養剤で十分だと。分かります〉
「言い方!唾つけるより印象良いでしょう!」
〈成る程。しかし我々意外は誰も見ていませんが〉
「いいのよ。TPOってヤツよ。それに、こういうのは気持ちの問題でしょ。気持ちの」
という訳で、せめて綺麗な布に染み込ませて傷口に当ててから、そっと撫でる。
するとズタズタだった皮膚は綺麗な肌に戻っていく。
「うん。これでいいかな。後はベッドで休ませる……か」
〈そうですね。酷い汚れですものね。分かります〉
「いや分からないでよ!たしかに正直、一瞬このままベッドに入れるの嫌だなとは思ったけれど洗えばいい事じゃない、洗えば」
ウンウン一人で頷きながら納得して、子供を二階へ連れていく。
お風呂場に連れていき、服を脱がして気づく。
「あれ?女の子なんだ。この子」
〈私は空から女の子がと伝えましたが〉
「嗚呼、あれネタじゃなかったのね」
湯船に浸しながらスポンジで身体を洗い、頭も2回ほど洗った。
ここまで洗って何故起きないのかという思いと共に、お風呂のお湯が真っ黒になっていき、この後お風呂掃除しないとならないことに、げんなりする。
〈そこら辺に転がしておけば良かったのでは?〉
「いやー。一度拾ったら最後まで面倒みるのは飼い主の責務かと」
〈別に奈留が率先して拾った訳ではないでしょう〉
「でも、あのまま放置してたら死んじゃうじゃない!寝覚めが悪いのよ、そういうの。大体ほっとけないじゃない、こんな小さい子放置するなんて」
〈此方の世界の住人は身内以外には結構淡白ですよ〉
「私だって一年も人と会わない、なんてことがなければ、人恋しさにここまで親切にはしなかったわよ」
〈はあ、そんなものですか〉
「そんなものよ。それに記念すべき第1号目のお客様じゃない」
〈本人に確認していませんので、完全なる押し売りですが〉
「うっ」
〈大体、その子供に支払い能力があるとは思えませんが〉
「い、いいのよ!感謝の言葉だけでも十分な報酬でしょ!」
女の子を湯船から引き出し、タオルで身体を拭いていると、ふと気付いてしまった。
女の子の顔立ちがドストライクであることに。
「……いい」
思わず惚けてしまった。
や、ヤバい。
よ、ヨダレが……
〈奈留、寝ている相手を襲う行為は強姦に当たります。行為を致すのでしたら本人の同意は必要だと進言します〉
「おおおおおお襲わないよお!」
〈行為をする条件として、治療費と安全確保と場所提供等を条件にするのが合理的と愚考します〉
「だから、襲わないわよ!」
〈まあ、だからと言って一切、奈留を止めたりは致しませんが〉
「いや、そこは止めてよ!」
すると美少女が「ううーん」と少し身動ぎをして小さなさくらんぼを向けてくる。
ハッとして慌てて口を閉じながらグッと堪える。
今、この美少女に目を覚まされたら、状況はどう考えても裸に剥いた美少女をこれから手込めにするヨダレを垂らした女の図にしか見えない。
慌てて、バスローブを着せて自室のベッドに寝かせる。
スースーと寝息をたてている美少女の寝顔を見てゴクリと唾を飲む。
大きめのバスローブから、はだけている肩や小さな膨らみ。
先程見た可愛い小さなさくらんぼ。
見れば見る程、考えれば考える程、私の身体が火照ってしょうがなくなる。
〈ですから合意の為の条件を提示すれば……〉
「だから、違うって!」
私、別に百合女じゃないのに!
〈ではロリコンでしょうか?〉
「心を読むな!」
部屋を出て心を落ち着かせる。
「ふう。どうしよう、あの子とこれからどうやって顔をあわせたらいいの?」
〈先程、色々な意味で唾付けとけばよかったですね〉
「そうね……って違う!あーもう!どーしよおー。どうすればいいの?」
〈ご自分の心に素直になられれば良いのでは?〉
「でも、相手は女の子でまだ子供よ。倫理的にアウトだわ」
〈たしかに女子相手では子供も出来ませんしね〉
「いや、そうだけど、そう言う話は今はしていませんでしたよね」
〈左様でしたか?〉
「もー、本当にどうすれば良いの!」
〈とりあえず、お風呂場の掃除をすればよいのでは?〉
「……そうね。そうするわ」
項垂れながらお風呂掃除をしつつ、もう一度湯を張り直し、ついでに自分もお風呂に入る事にした。
「あー。この子とあの美少女と三人で一緒にお風呂入ってイチャこらしたい」
湯船に浸かりながら思わず口に出た百合ハーレム願望に愕然としつつ、サポーターに聞かれていなくて良かったと思った。
あいつ聞いてたら絶対、百合ハーレム願望乙。とか言うわ!絶対よ!
お風呂から上がり、着替えを終えて仮面を頭に付ける。
「ふう、さっぱりした」
〈それは良うございました〉
「心が少し落ち着いてきたかな」
〈それは良かったですね。相変わらず頭の中は百合ハーレム願望ですさまじいカオスですけれど。本当に乙かれさまです〉
「な!なんで考えている事、分かって……」
パクパク口をしていると
〈あ、一方的にリンクしているので、奈留の思考は24時間駄々漏れです〉
「なぁぁぁァァァー……お前!最悪じゃあー!」
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