第14話

―???side―


「はあ、はあ、はあ、はあ」


 どうしてこんなことになったの?


 私達は、ただ家族と一緒に穏やかに暮らしていただけなのに。


「一人も逃すな!抵抗するなら殺してもかまわん!」


 遠くで叫んでいる、あいつらの声が聞こえる。


「は、早く逃げなきゃ」


 お父さんとお母さんに先に逃げる様に促され、家族でバラバラになって逃げた。


 時折行っているハデナ山脈の麓で落ち合う予定になっている。


「お父さん、お母さん無事だよね」


「「「ワンワンワンワン」」」


 あ、あいつら!犬を放っちやがった!


 まだ遠くでも、犬の嗅覚と足の速さで直ぐに追い付かれる。


「く、麓の入り口までもう少しなのに」


 子供しか通れない抜け道がこの先にある。


 そこまで行けば。


「があぁう!」


「あぐぅ!」


 痛い!肩に噛みつかれた!


 もう追い付かれたの!?


「ぐうー!だりゃあ!」


 痛みを我慢して、犬ごと岩場にタックルし、犬を圧死させ引き剥がす。


「きゃいーん」


「はあ、はあ、はあ、はあ、くそ!真面目に痛いんですけど!」


 噛みつかれた所に布を縛り止血する。


 例の抜け道に入り、急いで通り抜ける。


 もうすぐ出口の所で足に噛みつかれた。


「がああううぅ!」


「痛い痛い痛い!痛いっていってるでしょ!」


 噛みついた犬ごと踵落としをして、首の骨を折り息の根を止める。


「はあ、はあ、はあ、はあ」


 血まみれになりながらも、いつもの麓につき足にも布を縛り止血する。


「うぐ。とりあえず、ここまでくれば」


 ここは災厄の森を狩場にする私達一族の安全地帯。


 私達一族が長年築き上げて作り上げた一族の結晶。


 一族意外の認識を阻害して迷わせる結界。


 ここにある結界は一族の村にもあった。


 だけど破られた。


 「あいつらどうやって私達の村に」


 今はそれよりもお父さんとお母さんと合流しなきゃ。


 しばらくしても誰も来ない。


「皆、別の結界に避難したのかな?」


 落ち着いてきたので、別の結界が見える 所 まで山を登ってみる。


「なんだこれ?」


 しばらく登ると青色の壁?


 すごくツルツルしてる。


 よく見るとずっと下まで続いている。


「ん?あれなに?」


 壁を支えにして下を覗き込んでみると建物が見えた。


「え?嘘?こんな森の奥に誰か住んでるっての?」


 人がいる。


 良く見よう体を下に下げて失敗した。


 壁がツルツルしていたのをすっかり忘れていた。


 抑えが効かず下にまっ逆さまに落ちてしまった。


 あ、これ死んだな。お父さん、お母さん先立つ不幸をお許し下さい。


 その後の記憶は次に目覚めるまで無くなったのだった。



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