第11話 森の薬屋さんと初めてのお客さん

「うえーん。うえーん。う、う、ひっく。」


〈いつまで泣いているのですか。そんなにクマさんパンツが気に入っていたのですか?〉


「ばかー。なんでパンツばっかり使うのよー」


〈ですから、奈留が欲していて、なおかつ手に入れた物程、確立が増すのですから仕方がないではないですか。

 今回は特に失敗出来ませんでしたし、さらに一生物ですから。

 それに私はきちんと確認して、了承も頂きましたよ〉


「だからって履いてるパンツまで使わなくったっていいじゃないぃ~!うぇぇーん。うえーん。」


〈ああ、また泣き出しました。弱りましたね〉


「うえーん。うえーん。えんえんえん。ぐす」


〈パンツなら奈留が寝ている時の方が出る確立高いのですから、その内に出ますよ。

 だから、ほらもう泣き止んでください〉


「ぐすん。本当に?」


〈私は2日間で3枚当てた実績を持っておりますが〉


「うう、そうだった」


〈ですから、早く自宅の確認しましょうね〉


「うう。今日もスースーするけど我慢する」


〈奈留は偉いですね。頭を撫で撫でして上げたいですが、手がないのが非常に残念です〉


「撫で撫でとか。うう、そんなの大丈夫だよ」


〈そうですか?すみませんね。話相手ならばいつでもお相手しますよ〉


「うん。……ありがと。えへへー」


〈……奈留。幼児化が過ぎませんか?〉


「誰のせいかな?」


〈まあ、それはさて置き〉


「また、置かれた!」


〈とりあえず、そのウルトラでスリムなのを回収しておきましょう〉


「でも、これ使用済み」


〈そこら辺に捨てる訳にもいかないでしょう。構成物質が色々ヤバめですし、とりあえずストレージに締まっておけば、よろしいかと〉


「きちんと分別してくれるのかな?」


〈一度データ化しますから、以外と再利用出来るかもしれませんよ。実質、清浄化しているので未使用以上に問題はないかと〉


「清浄化?何それ。でもさー、私エリクシール体とかになっているんだよね?この薄いやつって必要なの?」


〈赤ちゃん産めるのですから、必要なんじゃないですか?〉


「そ、そうなんだ。あ、赤ちゃんって……は、恥ずかしい」


〈嗚呼、でもそういった行為をする場合は、気を付けて下さいいね〉


「こ、行為って!」


〈奈留の身体から出る分泌物は全てエリクシールなのですから、貴女の体液を取り入れた相手は、何度致しても瞬時に回復して、延々とし続けますよ。

 加えて、貴女が何度、絶頂しても直ぐに回復するので多幸感により何度も快楽を貪るのを抑えられなくなりますね。

 ですから、何処かで歯止めが利くように精神力を先に鍛えておく事を推奨します。

 でないと、永遠に繋がる快楽を求めて堕落した卑猥な生活を一生する事になりかねません〉


「一生卑猥な生活……って!私がこの子の身体を何処の馬の骨ともわからないのに触れさせるわけないでしょ!」


〈嗚呼、また妄想彼女ですか?成る程、そういう歯止めの仕方もあるのですね。勉強になります〉


「妄想彼女じゃないって言ってるでしょ!」


〈そうでしたね。どうでも良いですけど。

 それで、奈留。

 せっかくの屋敷、そろそろ中に入りませんか?〉


「どうでもって……はあ。そうね」


 目の前の2階建ての建物は二階部分にデカでかと〔奈留の薬屋さん〕の看板が据え付けられている。


 扉に触れるとチリンチリンと据え付けのベルが鳴り、自動で開いた。


 中にはカウンターとその奥の壁に所狭しと薬が置かれていた。


「あれ?商品がすでにある。なんで?」


〈決まっています。錬成内容が奈留の薬屋さんですから、薬があるのは当然です〉


「そういうものなのね」


〈当然です。この錬成はある意味SSRを引き当てたようなものですから〉


「結局ガチャ説明なのね」


〈分かりやすいかと〉


「それもそうね」


 カウンターで阻まれて向こう側には通り抜け出来そうにない。


 無理やり行くならばカウンターを乗り越えなければならない。


「これどうやって向こう行くの?」


〈奈留のテリトリーなのですから、通りたいと思えば通れますよ〉


「どういうこと?」


〈とりあえずカウンターに触ってみてください〉


「あれ?ひょっとして、またすり抜けパターンってやつ?」


〈……そうかもですね〉


「成る程。でもそれって私カウンターに触れないんじゃない?」


〈可笑しな事を言いますね?普通に触れますよ?〉


「ああ、確か思えば通れるって、という事は思わなければ触れると。成る程成る程」


 うんうんと頷きながら、擦り擦りとカウンターを撫でてみる。


 ガチャリ


「んで、通りたいと思いながら、通る」


 ガンっ!


「痛!」


 ドシンッ!


 カウンターに勢いよくぶつかり反動で尻餅をついてしまった。


〈ぷっ、あっはははは!奈留は本当に面白いですね〉


「痛たた。ちょっと!どういうことよ!」


〈いえいえ、奈留は素直で単純ですね。お母さん心配です〉


「誰がお母さんよ!」


〈これから客商売をするのですから、情報を鵜呑みにせずに、精査し、疑う事も覚えて下さいね。

 でないと良い様に丸め込まれてしまいますよ。

 因みに、通れる場所はカウンターの一番右端です〉


 言われて見て見るとカウンターの右端の一部に通路が出来ていた。


「し、知ってたし!」


〈なんと!身を持ってトライ&エラーを実践するその姿勢!私、感服いたしました〉


「くっ、屈辱だよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る