第10話

「まあ、でもこれで心の余裕が出来たわね」


〈それは、良うごさいました〉


「それじゃあ、マイホーム今度こそ建てるわよ」


〈職種は薬師でよろしいのでしょうか〉


「職種?なんで?」


〈いえ、猟師か薬師かと言っておられたので〉


「ああ、そうね。その方が儲かるかしら」


〈まあ、儲けてもこの近辺は森しかありませんが〉


「嗚呼、そうだったわね」


〈物々交換とかでしょうかね〉


「そうなるわね」


 等と話ながら歩いているともう着いてしまった。


 壁をすり抜けると石畳の広場の中心に噴水の水が元気に踊っている。


 四方には外灯が立てられガス灯の様に炎が揺らめいている。


 その奥に広がる森。


 そんな謎の光景が目の前に広がっていた。


「あれ?いつの間にこんなに綺麗に組み込んだの?」


〈もちろん、奈留が寝ている時です〉


「あ、あのさ、ちょっと私の身体使い過ぎじゃないかな?」


〈あー。まあ、ぶっちゃけ奈留が寝ていると私が暇なので〉


「この身体が休めないでしょ!」


〈そこは問題ないですね。奈留は人族止めてますから〉


「ちょっと!聞いてないんですけど!」


〈え?言いましたよ。エリクシール体だって〉


「そ、そう言えばそんな事」


〈特に奈留はタイミングも相性良かったみたいです〉


「あ、相性?タイミング?どういうこと?」


〈ラストエリクシールって万能薬って言われてますけど猛毒でもあるんですよ〉


「猛毒!」


〈はい。身体の機能を強制的に活性化させる物が身体に拒否反応を起こさせ無い訳ないんですよ。

 但し、徐々に浸透させていけば、きっちり万能薬として効果があります。

 奈留さんは、初めエリクシールを手で掬い体に道を開きました。

 その後、舐めて、体内にも道を開きました。

 その後、がぶ飲みしたのは頂けませんが、連続錬成とエンチャントによって体内で活性化していたエリクシールのエネルギーを一気に消費していました。

 その後、エリクシールで水浴びしてエリクシールに耐える身体を構築し、浄化によってエリクシール体の因子を構築。

 ラストエリクシールを飲めば、あら不思議。

 エリクシール体の完成でございます。

 後は、優れた賢人の石を取り込めば、人類全ての望みの頂きperfect humanになれます〉


「いや、別に望んでは」


〈おや、可笑しな事を言いますね。

 ならば何故、人は生にしがみつくのですか?

 何故、人は隣人が死ぬと泣き悲しむのですか?

 それは、人は誰でもその内奥にいつまでも生きていたいという願いを抱いているからです〉


「そ、そうなのかな?」


〈私の統計データではそのように確立されております〉


「そうなんだ」


〈はい。そんな事より〉


「あれ?今いい話してたよね?そんな事だった?」


〈まず、するべき事をしましょう〉


「ああ、まあ、そうだね」


〈まずはこの壁をどうしましょうか〉


「そう言えば、ステルス機能ってこの壁に使えないの?」


〈光学迷彩は使えますが、使うと洞窟の入り口丸見えですね〉


「う、そうなるのね」


〈まあ、現段階でこの合金を傷つける事の出来る物は無いので、とりあえず放置しましょう。

 ある意味これからするお店の看板になって良いかもですし〉


「諦め早いなー」


〈まあ、考えて無駄なら考える時間が勿体ないですからね〉


「それはそうね。で、次はどうする?」


〈ランダム錬成しますか?〉


「まあ、そうなるわよね」


〈当然です。因みに、確立上げるために錬成品使おうと思うのですが如何でしょう?〉


「え?確立上がるなら良いんじゃない?」


〈承認、頂きました!〉


「なんでそんなにテンション高いのよ?」


〈いえいえ、今回また範囲指定しますから、失敗しないよう気合いを入れようかと!〉


「は、はあ。そうなんだ」


〈では初めさせて頂きます。


 ランダム錬成区画指定。


 行くぜ!

 こっから先は俺達のターン!


 確立上昇の為に錬成品を指定投入。

 その身と引き換えに掴み取れ!

 奈留、俺はもう奈留の言葉に迷わなされたりしない!

 俺は奈留との絆を信じている。

 痛みも喜びも彼らと共に!

 行け、ショーツたちよ!今こそその結束の力を見せてやれ!


 ショーツ3枚と使用済みクマさんパンツ1枚を錬成に投入だ!


 ターンエンド。

 やはり、俺達の戦術に隙はない〉



 奈留の薬屋さんが出来た。



〈素晴らしい!私達の理想のお店が出来ましたね〉






「……………いーーーやーーーーぁああーーー!」

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