第9話

「とにかくです。この子が何も分からずに今の環境に投げ出されたら余りに可哀想だし、生活環境整えて、基本マニュアルの作成とかしておいてあげなきゃ」


〈本気でおっしゃっておられるのですか?〉


「勿論本気よ」


〈そうですか。それでその妄想彼女が帰ってきたとして〉


「妄想彼女いうな!」


〈それで……帰って来たとしてです。奈留はどうなるのですか?〉


「それは、元の身体に戻れば」


〈戻れるのですか?その保証は?宛は?そもそもこの世界は貴女の世界では無いのですよね?この世界に貴女の元の身体があるなど、何処に保証があるのですか?〉


「それは」


〈そもそも、それは貴女の身体ですよ 〉


「そんなはずないわ!だって私この身体が体験したはずの過去を知らない。

 覚えているのは3日前からよ。

 それに私はこの世界を知らないけれど、前居た世界の事なら知ってるもの」


〈そうですか。

 ならばこの世界での身体はどうしますか?

 他の身体を探しますか?

 なんなら機械の身体でも探しに銀河鉄道でものりますか?〉


「懐っ!てか古っ!なんであんたはそんなの知ってるのよ」


〈いえ、最近再放送してたので〉


「再放送?」


〈いえ、何でもありません。忘れて下さい。それで?どうされるのです〉


「うう、それは追々探すわよ」


〈例え仮に貴女の言う身体が見つかったとして、更に更に仮にその身体の持ち主とやらが帰って来たとして、全部上手く行ったとしても、何でもかんでも用意されてると、それが当たり前の我が儘お嬢様になること請け合いですけどね〉


「なんなのよ!さっきから、生活環境拡充のサポートがあなたの仕事じゃないの」


〈左様ですが、私は貴女のサポーターです。そこの処、お間違え無く〉


「言うわりに私を虐めて楽しんでいる癖に」


〈それは否定しませんが〉


「否定しろし!」


〈とにかく、何処の誰かではなく、私は貴女の、奈留さんのサポートを引き続き致します。

 それによって、貴女の妄想のお手伝いになってしまったとしても、当方は一切関与致しませんのであしからず〉


「ふーん。なによ!何だかんだいって、あなたも相当なお人好しじゃない。ニヤニヤ」


〈べ、別に貴女の為なんかじゃないんだからねー〉


「いや、誰もツンデレとか求めてないし。しかも棒読みじゃない」


〈肯定。私は奈留の為の、貴女だけのサポーターです〉


「なっ!恥ずかしい事言うの禁止!」


〈どこら辺が恥ずかしいのか分かり兼ねますが、とにかく奈留が生活向上を目指すなら、私はサポーターとして全力でサポートいたします〉


「むー。ふん。よろしく」


〈はい。奈留。おまかせください〉


「でも、何かする時は先に言って!事後承諾はもう懲り懲りよ」


〈その程度でしたら、委細承知いたしました〉


「お願いね」


〈はい〉


「じゃあ、とりあえずストレージの中身確認してから、家建てるわ」


〈ランダム錬成で今日必ず建つとは限りませんけれど……ふむ。いざとなれば確率を上げられますし、まあ、よろしいかと〉


「何か、嫌な言い方するわね」


〈いえいえ、ただ時間は有限というだけの話ですよ〉


「とにかく、ストレージの中身確認から!」


〈はあ、まあ、どうぞ。全く奈留はつまらない子ですねー〉


「どういう意味よ」


〈いえ、別に〉


 そそくさとストレージ検索する。


「な!ちょっと!どういう事!ショーツが3枚もあるじゃない!ブラも1枚あるし」


〈やれやれ、せっかくのサプライズが台無しです〉


「要らないわよ!そんなサプライズ!」


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