第6話 災厄の森と大きな壁

 とにかく入り口を目指す為に……


 バスローブを脱いで服に着替える。


 とりあえず、いつ戻るか分からないので、錬成ガチャで出来た物をポーチに入れる。


 物はポーチに手を当てて仕舞いたい物を見るとポリゴン状になって消えて行く。


 モニターにストレージ表記がなされ入っていることが確認出来た。


 若干面白くなってしまい、水晶や鉱石、湖の水を半分ほど吸い込ませてしまった。


 若干やり過ぎた気がして反省はしたが、後悔はしていない。


 面白い事にストレージ表記は個数表記ではなく、グラムやリットル表記だった。


 当然と言えば当然だが、どうしてもゲーム脳で考えてしまう。


 「さて、行きますか」


 ダッシュで一本道を出口まで走る。


〈早くして下さい。いつこの洞窟が見つかるハラハラします〉


「家を建てるにも材料は必要でしょ?」


〈言っておきますが、この洞窟内の物は一切使えませんよ。全て伝説級の物質ばかりですから〉


「え!そうなの!早く言ってよ」


〈何の為に偽装工作しようとしているのかを、お忘れですか?〉


「そうでした。すみません。あれ?じゃあこの服とかも不味いんじゃ」


〈その服は浄化前の錬成ですから問題ありませんが、バスローブはアウトです〉


「ああ、そうですね」


 走ること10分程で到着した。


 眼前は緑が非常に濃い。巨木が3本見えた。


〈不味いです。奈留、直ぐにあの巨木3本をデータ化してストレージ入りして下さい〉


「うえ?な、なんで」


〈説明は後です!〉


「おおう。ストレージイン」


 3本の巨木は粒子となって消えた。


「で、なんだったの?」


〈奈留の浄化が外に漏れたようです。あの巨木は世界樹の若木になっていました〉


「えーと、世界樹は不味いの?」


〈世界樹は成長途上にあると周りの草木の養分を根こそぎ奪って成長します。

 それが3本もあれば半径数百キロメートルに及び枯れた土地を拡げるでしょう。

 そうなれば、森はおろか、動物も人も国さえ飢饉によって滅びかねません〉


「うわ。世界樹さんパナイです。異世界小説だとエルフの神様的な物なのに、この現実とのギャップ怖!でも言われてみればな感じもする」


〈とりあえずの危険は処理しましたので、早速入り口を偽装しましょう〉


「そうだね。って思った以上に入り口が大きいのですが、これ隠すの無理っぽくないですか?」


〈そうですね。大体高さ10階建て横幅10室程でしょうか。縦幅はまあ、お好きにですかね〉


「いや、簡単に言わないでよ。団地?てかマンションクラスなんですけど、そんな建物建てたら見つけて下さいって言わんばかりじゃないですか」


〈お店するなら良いのでは?〉


「いや、独り暮らしよ!独り暮らし!お店構えるにしたって大きすぎるわよ!もういっそのこと要塞でも造ろうかしら」


〈! それ良い考えですね!〉


「え?」


〈対抗手段があるなら抑止力になりえます。要塞化アリですね!〉


「本気で言ってる?」


〈肯定です。要塞化するなら洞窟内のレアメタル使いましょう。勿論偽装はしますが〉


「まあ、錬成はランダムなんだし思い通りになんてならないでしょうけど」


〈確かにそうでしたね。うっかりです〉


「ほんと、うっかりね」


〈ランダム錬成しますか?〉


「お願い」


〈ランダム錬成セット。規模範囲指定。錬成開始。錬成完了まで後150秒。146.88〉


「やっぱり大きいと時間掛かるのね」


〈肯定〉


 青い分厚い金属の壁が出来た。


「マジですか」


〈これは良いものが出来ました。これで入り口は完璧に塞げましたね〉


「いや、良いものって!壁だよね?壁でしょ!これ!むしろ壁としかいいようがないよね!」


〈まあ、そうですね〉


「住めないじゃん!しかもレアメタル剥き出しだよ!そして、うちらも中にも入れなくなったじゃん!」


〈口調乱れておりますよ〉


「いや!乱れると言うか、意味分かんないだけど!」


〈いえ、意味はあります。そして、きちんと入れますよ。此処から〉


 壁の一部が点滅している。


〈そこに両手を触れて下さい〉


「この光ってる処?」


〈肯定〉


 両手で触れると手のひらをスキャニングされ、次いで赤い光が全身をスキャニングし、仮面越しなのに網膜トレースされた。


《お名前をどうぞ》


「え?」


〈お名前をどうぞ〉


「一ノ瀬 奈留」


《一ノ瀬 奈留をマスターとして登録しました。ようこそマスター》


「なんかマスターとか言われたのですけど」


〈肯定。一ノ瀬 奈留はマルチギア デンドロビウムtype9の正式なマスターに登録されました。おめでとうございます〉


「意味不明なんですが」


〈まあ、あらゆる意味で強力な後ろ楯を得たと言うことです。直ぐには使用する事は無いでしょうが〉


「はあ。まあいいや。で?」


〈で?とは?〉


「どうやって洞窟入るの?」


〈嗚呼。そのまま通り抜けられますよ。勿論、奈留だけですが〉


「え?そうなの?」


〈はい。不安であれば指先だけでも壁に触れてみてください〉


「指先……」


 指先を壁に触れようすると壁の中にすり抜けた。


「うえ?凄!マジで!どうなってるの?」


 壁を行ったり来たりしてみる。


〈いつまで遊んでいるのですか。このままでは野宿ですよ!今度こそ屋敷を建てましょう〉


「あ!そうだった」


〈ランダム錬成しますか?〉


「ん。お願い」


〈ランダム錬成開始します〉


 街灯が出来た。


〈ランダム錬成しますか?〉


「よろ!」


〈ランダム錬成開始します〉


 街灯が出来た。


〈ランダム錬成開始します〉


「え?勝手に?」


 街灯が出来た。


〈ランダム錬成している〉


「してたんかい!」


 街灯が出来た。


「いや!街灯ってそんな確率高いの!」


〈失礼しました。思った以上に厄介でした〉


「まあ、そうね。諦めが肝心というか、無欲がいいというか、物欲センサー絶対あると思うよ」


〈そうですね。ではランダム錬成しますか?〉


「よろしく」


〈ランダム錬成開始します。〉


 噴水が出来た。


「よし、次行こ!次」


〈ランダム錬成しますか?〉


「あのさ、それ毎回言わないと駄目なの?」


〈使用なので〉


「でも、さっき勝手に錬成してたよね」


〈使用なので〉


「うわ、うざ」


〈ランダム錬成しますか?〉


「ハイハイ。よろしく」


〈ランダム錬成開始します。〉


 石畳の広場が出来た。


〈申し訳ございません。本日分の錬成は終了いたしました。以降は課金が必要です。課金しますか?〉


「するか!ぼけ!あー阿保らし、洞窟帰って寝るわ」


〈また言葉が乱れておりますよ〉


「うっさいわ!」

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