第5話

「誰が変態よ!」


〈私無しでは生きられない身体になってしまったのですよね?〉


「そんな身体に誰がした!って何の話よ!」


〈そんな事より〉


「そんな事扱いされた!」


〈この地下洞窟も封鎖した方が宜しいかと、この空間はこの世界にとっても異質です〉


「元々の世界でも十分異質ですけどね」


〈この空間はこの世界の住民にとって宝の山です。気付かれたら最後、貴女ごと全て奪い尽くされる危険性100%です〉


「うえ。マジですか」


〈マジです〉


「そんな事言ってもどうすればいいのよ」


〈極めて簡単です。洞窟の入り口を塞げばいいのです〉


「なる程。でもそうしたら、今度は私が入れないじゃない」


〈なにも、岩や土で遮るだけが塞ぐ手段ではありません 〉


「例えば?」


〈建物を建てて個人宅にすれば宜しいかと〉


「成る程!流石サポーターを名乗ってないわね。それいただき!」


〈しかし、洞窟の外は鬱蒼とした森、そんな中で屋敷なんて建っていたら、怪しいことこの上ないですね〉


「むー。確かに」


〈それに建物の中に入られると洞窟の存在がバレる恐れがあります〉


「ふむ。建っていることが怪しくなくて、しかも家の奥には入られない建物……」


〈無いですね。こんな危険性の高い野獣の多い森の奥に建物なんて、怪しい通り越して危険視されます〉


「でも、それが腕の立つ猟師や薬師の家なら何とかならないかな?」


〈そうですね。問題はこの土地が誰かの所有地ではないと宜しいのですが〉


「ああ、確かに。上手くやれても突然立ち退きとか言い出されたら面倒よね」


〈はい。ですので早々に土地の所有権を確保する必要があります。もし出来ないならば、洞窟内にある全ての物を回収しませんといけませんね〉


「そんな事出来るの?」


〈はい。幸いな事に貴女は「奈留」……なんでしょう〉


「貴女とか毎回言われるの何だか嫌。一ノ瀬 奈留。私の名前」


〈そうですか。そうでしたね。一ノ瀬 奈留〉


「なんでフルネームよ!奈留でいいわ。それで続きは?」


〈では奈留。貴女はポーチを錬成していましたね〉


「ああ、あったわね。病みってるときに。いえ闇かしら」


〈黒歴史かどうかは置いておいて〉


「失礼ね!まだ黒くは無いわよ!灰歴史ぐらい?」


〈それは滅亡しているのでは?〉


「いいから!続きは!」


〈先ほどから会話を遮っているのは奈留なのでは〉


「悪かったわ!早く続き!」


〈ふう。仕方のないお嬢様ですね。とにかくポーチです。あれもエンチャント出来ます。〉


「そうなの!どんなの?」


 ショルダーポーチ


 〈エンチャントしますか?〉


 ①空間掌握


 ②圧縮データ化


 ③ストレージ整理


 ④圧縮データ解凍


 ⑤タイムラグ管理


「おお!まさかのアイテムBOX!全てエンチャントで」


〈エンチャント開始。予定終了時間は約60秒です。残り56.88〉


「でも持って行けるなら、此処に留まる事ないんじゃない?」


〈それも一つの案ですが、此処である程度の生活基盤を用意した方が、後々の為になると思われます。このポーチはどんなものでもデータ化出来れば仕舞えますから〉


「成る程成る程。例え退去命令されたとしても、洞窟内も建てた家も全部持ち運べるって事ね」


〈exactly〉


「いや、なんで唐突に英語?」


〈何となくです〉


「そですか」


〈それと、ラストエリクシールをもたらしているperfect philosopher's Stone〔優れた賢人の石〕をデータ化するとその間に齎されるであろうラストエリクシールが手に入らなくなりますので〉


「パーフェクトなに?」


〈perfect philosopher's Stoneです〉


「あーそれそれ。で何それ?」


〈perfect philosopher's Stoneは優れた賢人の石と呼ばれ、哲学者の石やティンクトゥラ、又は賢者の石とも呼ばれる物のクラスアップ遺物です〉


「ランクアップの次はクラスアップですか。え?それじゃあ、元々賢者の石がそこにあったって言うの?」


〈肯定です〉


「それじゃあ、この洞窟元々誰かの所有物だったんじゃ」


〈肯定です。しかしこの洞窟内の物質は全て奈留の浄化によってクラスアップ又はランクアップして別物になっております。なので、製作者は奈留ですので何の問題もありません〉


「成る程。……?そうなの?」


〈はい。無問題です〉


「なんで突然中国語?」


〈気分です〉


「そですか」


〈とにかく、洞窟入り口に建物の建設が急務だと進言します〉


「alllight」


〈何故に英語ですか?〉


「空気読んだのよ!」


〈空気は吸うものです〉


「そですね」

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