第4話

「ん、ふぁ。ここは」


 ポーッする頭で周りを見渡す。


 うっすらと光る湖が見える。


「ああ、そういえば」


 眠る前の出来事を思いだし、ふっとため息を吐く。


「うう。シャワー浴びたい」


 目の前の湖を見つつ水浴びでも有りかな?と考える。


 服を脱ぎ綺麗に畳んでソファーの上に置く。


 水の中に恐る恐る足先を入れると、以外に冷たくなかった。安心して全身を浸すように湖の中に入る。


 水中に潜って全身を撫でるように擦っていく。


「プハッ。あー気持ちいい」


 背泳ぎ感覚で水に浮かびつつ洞窟の天井を眺める。


「あー。どうしよう。この水、飲料水も兼ねてたよ」


 自分の汚れで汚してしまった事に気付いて、かと言って水浴びしなければ頭痒くて死にそうになりそうだし、彼方を立てれば此方が立たず、むー。


「あ、そういえば浄化!」


 これって私以外にも効果あるのかな?というかどれ程の効果あるんだろう?


「まあ、悩んでいても仕方がないし、浄化お願いします」


〈浄化範囲を設定して下さい〉


「えーととりあえず、この洞窟内全部で」


〈強制浄化開始します。洞窟内の浄化完了時刻は約180秒です。残り176.88〉



 開始直後、自分の身体が淡く光ると白磁のような滑らかな肌が現れ、浸かっていた水が煌めき始め、空気が爽やかになっていく。


 周りの水晶が金色に輝き、壁の鉱石類は淡く銀色に光を放ち、水を滴らせていた天井の赤い石は虹色の様相を放っていた。


〈洞窟内の物質強制浄化により物質のランクが上昇しました〉


「はえ?」


〈強制浄化のリキャストタイムまで後87400秒です。残り87396.88〉


「これは、いったい」


〈浄化終了いたしました〉


「えーと、因みにこの水は飲んでも平気?」


〈飲料可能です。〉


「あ、飲めるんだ。ゴクゴク。プハッ!あれ?前に飲んだときより美味しい。この水どうなっているの?」


〈薬水エリクシールは浄化によってラストエリクシールにランクアップしております〉


「え、エリクシール?って何?」


〈エリクシールは不老不死に繋がる万能薬であり徐々に部位の欠損、不治の病をも癒す効果があります。ラストエリクシールは上位版であり、効果は変わりませんが、飲んだ者をエリクシールにする効果があります。〉


「え?どゆこと?私飲んじゃったんですけど」


〈現在、貴女の状態はエンチャントによる重複効果により体内の状態異常、体外の外傷、全てが瞬時に癒されます。更に状態異常緩和の効果により、病気や毒などの影響から解放されました〉


「えーと、良いことなんだよね?問題有るわけでは無いんだよね」


〈問題ありません〉


「なら、いいけど」


〈私としては、貴女の口調がすっかり変わったことの方が問題です〉


「なんでよ!しょうがないじゃない!追い詰められると何か方言みたいのが出ちゃうの!身体に染み付いちゃてるから、どうしようもないの!」


〈左様ですか。ではそう言うことにしておきます〉


「私としては、あなたが何者なのかの方がよっぽど問題よ!」


〈私は貴女のサポーターです。それ以上でもそれ以下でもありません〉


「ふーん。でも文字だけだと読むの億劫だし、長文になると目の前が見えなくなるのよね」


〈では音声発信いたします〉


「わっ!誰?」


〈私です〉


「お前だったのか!」


〈別に暇をもて余していたり、神々の遊びはいたしませんが〉


「なんで、そのネタ知ってるのよ!」


〈私は貴女のサポーターですから〉


「ほーん」


 思わずジト目を止められない。


「まあ、いいわ。私は今の状況と何故に私はこんな美人ちゃんなのかとか、ここ何処なのかを知りたいだけだから、情報頂戴。」


〈禁則事項です〉


「なんでよ!」


〈禁則事項です〉


「あなた私のサポーターなんでしょう!」


〈禁則事項です〉


「何なのよ。いったい」


〈私はあくまで貴女の生活をサポートする為のサポーターにすぎません〉


「あっそっ」


 すいすいと泳ぎ陸に上がる。


「あー。そういえばタオルが無い」


〈ランダム錬成しますか?〉


「よろしく」


〈ランダム錬成開始しました〉


 バスローブが出来た。


「いや、近いけれど……いや、いいや。無いよりマシか」


 バスローブを羽織り、裾で髪を拭きつつ身体の水分も拭き取っていく。


 顔を拭こうと袖を使うとツルツルと凸凹感が無い。


「あ、仮面付けたままだった」


 仮面を外し水で顔を洗って袖で拭きつつ訪ねてみる。


「そういえば、エンチャント?だっけ、それって仮面付けなくても使えるの?」


 ……


 返事がない。ただの屍……


「あれ?まさか仮面ありきのサポーター?」


 慌てて仮面を付けると


〈お帰りなさいませ〉


 と言われた。


「もしかして、サポーターさんは仮面さんなのかな?」


〈肯定です〉


「あの、じゃあ仮面つけてないと私・危険・増す?」


〈何故片言なのか謎ですが、肯定です。但しサポートが無くとも、今の貴女の状態はエリクシール体ですので、死ぬ事はありません。死なないだけですが〉


「なにそれ!」


〈死なないだけで、苦痛は長く強く発生します。

 緩和されていないので。

 強化系も発動しませんので筋力、体力は一般女性と同じですし、部位の欠損なども時間を掛ければ徐々に治りますが瞬時には治りません。

 探知系もありませんから不意に襲われても対処できません。

 特に貴女の容姿と身体つきでは、襲って下さいと言っているようなものですね。

 ステルス機能もありませんので逃げ隠れの確率が一気に下がります。

 捕まれば、エリクシール体の事もバレて一生飼い殺しのダッチワイフ状態確定でしょうね〉


「止めてよ!もう、あなた無しでは生きられないじゃない!」


〈変態発言ですね。分かります〉

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