ACT.3

 五日後、俺は神奈川県横須賀の裏町のビル。


『山中銃砲店』の店内に居た。


 右足を引きずって入って来た時、”オヤジ”は何か銃をいじっていたが、俺の姿を見るなり、苦笑いとも憐みともつかぬ表情を浮かべ、


『だからいったろ?婆さんの扱いには気をつけろって』


 唇をへの字に曲げ、俺は右手に下げていたケースをカウンターの上に置く。


『こんな目に遭ったんだ。リース代はまけて貰うぜ。』

 俺は通常の半額の金を無造作に投げ出した。


 オヤジは肩をすくめ、


『お前さんが承知の上でこれをえらんだんだろ?』と、ちょっと唇をゆがめて答える。


『リヴォルヴァーがなんて、始めての経験だ』


『そんならこれに懲りてオートにモデルチェンジするかね?今ならグロックの出物があるが?』


 彼にしては珍しく、にやつきながら俺を見る。


『懲りる?誰にモノを言ってるんだ。俺は熟女が大好きなんだ。使えば使うほど味が出る』


『ほっとけ』


 オヤジはそっぽを向いた。


『まあ、認めたくはねぇが、今回は俺のミスでもある。仕方ねぇ。修理代と込みだ。まけといてやるよ』

 オヤジはケースをしまうと、入れ替わりに俺の親愛なる相棒、S&WM1917を引っ張り出してきて俺に手渡す。


(よう、久しぶり、綺麗になったじゃないか?)

 シリンダーをアップして一回転させ、ハンマーを起こしてみる。

 前よりもスムーズだ。


 トリガーを落としてみるが、妙な引っ掛かりもない。

 

『有難う』


 俺はそう言って、丸出しの万札を4枚、引き換えに置いた。


『?』


 オヤジが不思議そうな顔をする。


『チップだよ。』俺はホルスターに拳銃をしまうと、そういってウィンクをして見せた。


『なら最初から出しゃいいものを』


 ぶつぶつ言いながら金をしまう。


 俺はそのまま、足を引きずりながら店を出た。


 空は何時の間にか鉛色になっている



 ええ?


(あの後どうなったか)って?


 簡単なことだよ。


 太ももに命中した俺の弾丸タマは、見事に貫通していて、俺は病院に運ばれた。


 警官おまわりたちはいつものように頭ごなしに罵声を浴びせたりせず、


(調子に乗って拳銃振り回すから罰が当たったんだ)なぞと、いかにも、

ざまあみろとばかり嫌味を浴びせた。


 俺の傷は結局全治一か月というところだったが、半月で退院した。


 当り前だろう?


 俺達自由業は、そう暢気にいつまでもよこになっちゃあいられない。


 あ、あのストーカー男か。無事駆け付けた機動警らに引っ立てられていったよ。


 さあ、荒事が一つ片付いた。


 明日から、また頼むぜ。相棒。


 

                                終わり


*)この物語はフィクションであり、登場人物その他全ては作者の想像の産物であります。


 


 

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第二の拳銃(あいぼう) 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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