第100話 女神見習い、少女と冒険者ギルドへ(2)


 「ふぅ……はい、確かに……で、次はこれですね」


 あ、よかった。カーラ、元に戻ってくれたっぽい。


 「うん。ダンジョンでドロップした素材ですね」

 「わかりました。あら、種類別に分けてくれたんですね!」

 「ん、お茶でも飲んで」

 「わぁ!ありがとうリディ」


 ちょ、ちょっと!そのお茶入れたの私だからねっ?

 カーラはひと息ついた後、黙々と素材を確認している。


 「はっ……やはりメリンダさんの言う通りだ」

 「え、メリンダさんがどうしたんです?」

 「い、いえっ……鉱石がなかったので……」

 「あー、それはそうか。ドロップ品仕分けたのカーラだもんね」

 「ええ……」

 「鉱石は人にあげたんだよね。ほら、それでリディの短剣を作ってもらったの」

 「ん……誕生日プレゼント」


 リディがカーラに短剣を見せている横でブランが得意げにしている。はいはい……ブランとの共同プレゼントだもんね。


 「わぁ……すごいですね。相当腕のいい職人さんですね」

 「ん、料理もできる……」

 「そうだねー。リディの料理の先生だもんね」

 「ん」

 

 あ、やばい……さっき食べたばっかりなのに思い出したらまたよだれが……じゅるり


 「カーラのお父さんの料理も美味しいけどユリスさんの料理も美味しいんですよねー。リディの料理も美味しいし、ますます料理から遠ざかっちゃって」


 スキルがあるのに全くレベルが上がらないんだよね……


 「……ユリスさん?はっ、名前か。メリンダさんに報告しないと……いやすでに知ってるの、か?」

 「カーラ……何をぶつぶつ言ってるの?」

 「ん、なんか変」

 「えっ、声に出てました?いやー、ちょっと思い出したことがあって……」

 「そう……」


 挙動不審なカーラ……じー……


 「えっと、すべて買い取りでいいんだよね?」


 カーラ……露骨に話題をそらしたね?ま、いいけどさ……


 「うん、必要なものは残してるから全部買い取りで……」 

 「はい。では全部で銀貨6枚と小銀貨8枚ですね」

 「わぁ!そんなになったんですか?」

 「うん、おかげさまで私たちも潤ったよー。言っとくけど、エナのそのバッグが異常なんだからね?あんなに持ち帰るなんてないんだよ?普通はこの半分以下なんだから」

 「へー……了解」

 

 カーラから代金を受け取り……ついでに口座に金貨1枚と銀貨10枚を入れたところまた少し特許料が入ってた。さすがに最初と比べれば僅かだけど……不労所得ってなんかいいよね。


 「そうだ……もう少ししたらジャックが来る予定なの。もしよかったら会ってあげてくれない?」

 「そうなんだ……もう復帰したの?」

 「ううん、まだ。もうすぐ……かな?今日は顔見せってところかなー」


 リディさえ良ければ挨拶くらいしてもいいけど……


 「ん、誰?」

 「ほら、この間ポーションの材料をとりにダンジョンに行ったじゃない?そのポーションが必要だった男の子なんだけど」

 「……元気になった?」

 「エナのポーションのおかけで今はもう元気だよー……本人はすぐにでも復帰したいみたいだけど、周りの方が慎重でね……」

 「ん、いいよ」

 「えっ、いいの?」

 「……ん、ちょっと興味ある」


 そっか……もしかしたら呪いっていう同じような経験があるから興味が湧いたのかな?

 ……ブランさん、取り乱しすぎ。なんか娘が男に取られるって感じの取り乱し方なんだけど、挨拶するだけだからね?


 「そう?よかったー……ジャックが来たら案内するね」

 「はーい……でもこの部屋にそんなに長居して平気?」

 「うん、平気だよー。なんたってエナは公認さんだからね!」

 「公認ってそんなとこも優遇されるんだ……」

 「そうだよ。それだけ公認はすごいことなんだから!じゃっ、ちょっと待ってて」

 「わかった」

 「ん」


 カーラが部屋を出て行き、ブランがようやく落ち着きを取り戻した頃ーー


 「エナ、リディおまたせー」

 

 カーラがジャックを伴い部屋に戻ってきた……あ、ジョセフもいる。ジョセフは心配でついてきたのかな?


 「受付に行ったらみんなに捕まってたんだよ」

 「みんな心配してくれてたからな。仕方ないさ」

 「エナさん、この間はありがとうございました」

 「いーえ、元気になったみたいで安心したよ」


 うん、あの時と比べて顔色もいいし、やつれてた顔もだいぶふっくらしたね。異常はないか念のためこっそり鑑定すると、なんと状態異常耐性を持っていた。多分あのことが原因だと思う。冒険者になるならありがたいスキルだと思うよ?


 「あの、俺ジャックって言うんだ。よろしくな」


 リディは突然話しかけられたことにびっくりしたみたいで後ろに隠れてしまったけど……

 

 「リディ、ほら」

 「ん、……私はリディア、こっちはブラン……よろしく?」

 「おぉ、リディに初めての同世代の人間のお友達がっ」


 ミーナちゃんは同年代っていうにはちょっと歳が離れてるもんね。ブランの目が鋭い気がするけど……き、気のせいだよね?


 うん、ジャックが10話しかけてリディが1返すって感じだけど……リディも嫌そうにはしてないから大丈夫かな?


 「そうだ……俺たちまた今度ダンジョン行くんだけど、よかったら一緒に行かないか?」

 「ん?ジョセフさんよ、それはマジックバック目当てかな?」

 「違うぞ?この間とは違うダンジョンなんだけど……エナが一緒なら面白いこと起きそうだし」

 「んー……考えとくね」

 「おう!ま、俺たちは定期的にダンジョンへ行くから気が変わったらいつでも言ってくれよな?」

 「はーい」


 ジャックやジョセフ、カーラと別れた後1度家に戻り、商業ギルドへダッシュ……無事お茶と交換し、ポーションを10本ほど売却。うん、これでがぶ飲みしても大丈夫。野草とか煮たら美味しいお茶できないかなー……さすがに無理があるか


 もちろん帰りは扉から帰ったよ。その数時間後にはヒノキ風呂に入りに戻ったけど……うん、なかなか良かった。時々ヒノキ風呂にに入りにこよーっと……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る