第52話 女神見習いとサブマスリスト


 さすがに疲れたのか登録後、門で銀貨を返却してもらい家につくとリディはソファで眠り込んでいた……起こさないようそっと抱き抱えリディをベットに寝かせる。うっ、腰が……回復、回復。

 

 「ふぅ……そうだブラン、抜けた羽はリディの部屋の机の引き出しに入れておいてほしいんだけどできるかな?」


 ブランは任せておけというように机の引き出しを開け閉めしてみせた。おお、器用だね……出来なかったらなにか入れ物を用意するつもりだったけど必要なさそう。


 「ブランさすがだね……まぁ、今日依頼を達成したからあと1年は街へ行かなくても身分証には困らないし……リディ次第だけどまた行くことがあればブランの羽を持っていって売ればリディの自由にできるお金になるからよろしくね?」


 ブランはいつものように私の周りを1周した……『わかったよ』っていう返事だと受け取っている。時々、顔に翼をバサバサされるのは不愉快だったり嫌な時みたい。

 あとは、リディがいないときは『はい』なら右腕、『いいえ』なら左腕に乗ることで意思疎通をとっている。

 


◇ ◇ ◇



 ギルドにてーー

 今日は普通の薬草を納品。たまにはそういう日もあるよね。だから奥の部屋には行きませんよ。

 一応、掲示板をチェック……持ってる薬草で高く売れるのないかなって思って


 すると、追加サブマスリストの1番上の素材採取の依頼発見してしまったじゃないですか……確かにサブマスリストの買い取り価格と変わらず記されているが、見つけた依頼書には見慣れない文字があった。


 「え……これBランク以上のパーティ推奨なの? しかも特記に採取後、一定時間経過したら買い取り不可ってなってるし……」


 パーティ推奨依頼っていうのは、ソロだとあまりに危険な場所や魔物に対してパーティを組んでやりましょうって事で依頼自体、ソロだとよっぽど認められた人以外(どこかにいるらしいSランクとか)受けることすらできず受付で止められるらしい。

 あとは護衛依頼とかでもあるけど、募集人数が多い護衛依頼はソロでも他に同じ護衛依頼を受けた人と協力すれば問題ない。


 なのに、なぜパーティ推奨依頼をサブマスリストに載せてるのかな? しかもBランク以上だし……


 「いやいや、これサブマスに言われるまま素材出してたら絶対目立つやつじゃん……」


 サブマス……何してくれてんのさ……はぁ。

 もう既に売ったことのあるものは仕方ないけど……サブマスリストの他の素材も注意しないとまずいかも……今のところ他の依頼はないか。


 そういえば、ここのギルマスはソロでもこの依頼を受けられるほどの実力者だったらしい。

 怪我をきっかけに引退してギルドへ勧誘されたらしいけど、今でもそこらの上位ランカーより実力は上だとか……そのまま冒険者を続けていたらSランクになってもおかしくないほどだったらしい。

 そんなすごい人なんだ……ギルドで数回しか見たことないけど、サブマスを制御出来るってスゴイなぁぐらいしか思ってなかったよ。

 確かに最初に見たときは2メートルをゆうに超える大男で、鋭い眼光に顔や体にある傷跡のせいもありどこかの盗賊か山賊だと思ったよね……話してみると優しくて常識人らしいけどね。サブマスの方がよっぽどぶっ飛んでるらしいよ、うん。


 うん、サブマスさんよ……こういうのは実力者のギルマスさんに頼んだ方がいいと思うな。

 でも、そうはいかないってこともわかるんだけどね……ギルマスはかなり忙しくあちこち飛び回ってるみたいだから……なんでも上位ランカーでも難しい依頼を受けてイヤイヤ飛び回っているらしい……くっ、俺ののんびり隠居生活がって口癖のように言ってるらしいよ。


 よし、わたしは依頼書を見付けてない……見てないったら見てない。


 ふぅ……さっさとギルドを出てリディの為の可愛いショルダーバッグを買ってから帰ることにした。流石にいつまでも仕分け用の袋じゃあ、ね?

 私に刺繍の腕があればもっと可愛くできるのに……ミーナちゃんのポシェットみたいに……でも、私がやったら血まみれのショルダーバッグが出来上がる自信がある……ぐすん。


 

◇ ◇ ◇



 リディと街へ行ってから早、半月……


 毎日、リディに浄化をかけて周囲の結界をチェックし、サブマスリストの素材を探したりギルドで買った麻痺回復とか毒回復ポーションのレシピを試してみたり……新たに採取しないといけなかったから結構時間かかったよね。あんまり量は作れなかったし。


 リディも毎日畑のお世話を頑張ってくれたし、ポーションの瓶詰めも手伝ってくれる。お風呂も気に入ったのか毎日、準備を率先してやってくれてる……たまにしか一緒に入ってくれないけど。

 ブランの羽も結構溜まってきている……抜けたんだよね? 抜いたんじゃないよねってくらい。心配になってブランをこっそり観察してみたけどハゲてなかった。よかった。

 でも、私が引き出しを開けて見ようとすると翼でバサバサされる……しかもリディに見えないように。盗むとでも思ってるのかな? 信用してくれないなんて、ひどいよブランさん。


 まぁ、それは置いといて……追加サブマスリストの1番上にあった素材も一応採取してきたけど……かなり生えてる量が少なかったから、少しだけ株ごと採取して畑に植えられるようにした。もちろん採り過ぎには注意したよ。

 


 サブマスリストだけあって私にとっては地図埋めのついでだから何の問題もない依頼だけど……ほとんどの冒険者には危険な場所だったわ。流石パーティ推奨依頼だね。

 薬草の生えてる位置が悪い……まず引き返す目安である霧を抜けなきゃいけないし、足場は悪く、さらには素材を好む魔物が闊歩しているのだから。

 ここ以外にも森の中に群生地はあるらしいんだけど、ここが1番安全に採取できる可能性があるんだとか。

 あ、ちなみに地図埋めはかろうじて見える辺りに瞬間移動してウロウロするのが効率的だと気付いてからそうしてる。だから道中にに崖があろうと川があろうと見えさえすれば失敗しないので問題ないよ。


 サブマスリストはギルドに行った時にサブマスに言われたら渋々売るつもりだけど……だって、持ってないって言ってもバレるんだよ? なんでかな。

 次から次へと言われるまま売っていたらどんどん無理難題を押し付けられそうな気もするし……こら、そこっ! もう遅いとか言わないの!


 少しだけ拡張した畑も野菜だけじゃなくてオレンジやレモンオリーブも順調に育ってひと安心……まぁ、後半のものはまだまだ食べるには至らないけど。

 薬草畑の方も着々と珍しい薬草や素材が増えてきた。


 そうそう、色々実験してみた結果……この素材は採取してから一定時間内に調合しないと効果が消えるみたいで……どうりで依頼書に書かれてたわけだわ。なんの効果もなくなったものは買い取れないよね。

 まぁ、私の場合はストレージに入れておけば特に問題ないんだけど、たまたま調合した時に余った素材をストレージに戻し忘れて発覚……少しもったいないけどわかったことは大きかった。

 さらに実験を続けると……なんかギルドで買ったレシピにないポーションができたんだよ。わーい。


 「今度、マルガスさんに持っていってみよーっと……」

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