第51話 女神見習い、少女を街へ連れていく(2)


 「では、従魔登録に小銀貨1枚頂きますがよろしいですか?」

 「はい」


 小銀貨1枚を出して、カーラさんに手渡す。


 「はい、確かに。登録しますのでしばらくお待ちくださいね」

 「はい」

 「ん」


 従魔登録は魔物の名前、種類、身体的特徴などを登録していくらしい。こちらもギルドのカードにリディが主人、私が後見人として記載されるみたい。ふーん。


 「リディ、これでブランも外に出しておけるね」

 「……ん、よかった」


 ブランも嬉しそうに飛び回ってる……これからはちょっと背後に気をつけようかな。怒らせた時は特に……まあ、そんなことしないと思うけど。


 「では、従魔登録について説明しますね」

 「はい、お願いします」

 「ん」

 「従魔は登録後からは従魔だとわかっていて攻撃された場合、反撃しても罪に問われません。時々、面白半分にやらかす人がいますのでご注意くださいね」


 なんて迷惑な……


 「はい」

 「ん」

 「それ以外で従魔が人を襲った場合、最悪その場で討伐されます。そのほかは街に出入りできなくなったり問題が続くようであればギルドの従魔登録が解除されますのでご注意くださいね」

 「わかりました」

 「……ん、わかった」


 ポーションのお金を受け取っていると


 「そうだ、リディさん……ひとつ依頼を受けてみませんか?」

 「……依頼?」

 「ええ、納品依頼なんですけど……」

 「どんな依頼ですか?」


 カーラさんはちらりとブランを見て


 「Gランクの依頼でキラーバードの羽を納品するというものなんですが……」

 「え、でもキラーバードの羽ってGランクの冒険者には危なくないですか」


 だって、暗殺者アサシンなんでしょ?


 「ご安心ください。別にキラーバードを討伐して素材を持ってくるわけではありませんから」


 討伐って聞いた時のリディとブランの圧がすごかったよね。


 「そうなんですね」

 「ええ、羽は簡単に手に入るんです……かなりの確率で落ちているので」

 「ああ、拾うだけならGランクの冒険者でもできますね」

 「ええ……サイズや色、状態によって追加報酬もあります。ほとんどの場合はくすんだ色やまだら模様が多く、汚れていたり折れていることもあるので羽の状態が良いだけで買取価格はぐんと上がります」

 

 なんでも貴族の間でいかに綺麗な羽を飾り身につけるか競ったり、時には魔道具の素材にもなるらしい……へー。


 「ですから、リディさんの従魔の白くて綺麗な羽はかなり需要があると思います……いかがでしょうか?」


 ブランといえばその名の通り真っ白な体をしている……確かに需要はあるかもしれない。


 いかがでしょうか、リディさん?

 悩むリディを横目にブランはおもむろに自分の羽を抜き、差し出した。

 戸惑うリディにブランは遠慮するな的な感じで迫ってる……うん、そんなにたくさん抜いたらブランがハゲちゃうと思うな……


 「まぁまぁ、ブランはリディの役に立てるのが嬉しいんだよ……リディも受け取ってあげなよ」

 「……ん」


 リディは最初の羽だけを残しあとは売ることにした様子……最初の羽はきっと宝物としてあの袋に入るんだろうな……もっと可愛い袋買ってあげたいな。


 予想通りかなりの報酬を手に入れていた……Gランクの他の依頼が馬鹿らしくなるほどに……


 リディは早速ブランの羽を売ったお金を私に渡そうとしている。


 「それはリディが稼いだお金だから」

 「……ん、でも登録料」


 確かに登録料を払っても余りあるけど……


 「いいよ、今回は。それはリディが好きに使いなさい」

 「……でも」


 なかなか引き下がらない……


 「うーん……じゃあ登録料の半分だけ受け取るよ……だから残りはリディが使って、ね?」


 ブランがちょっと怒ってる。なんとなくだけどそんな感じ……ブランにはリディから受け取ったものは貯金しておいていつか渡すから安心してと耳打ちした。ブランから嘘だったら殺す的な視線を浴びたけど納得してくれたみたい。ふぅ……


 リディは少し悩んだ末に


 「……ん、わかった」


 リディも納得してくれてよかった。


 用事も済んだことだし……今日はさっさと帰ろうかな


 「エナさん、ちょっと待ってください!」

 「なんでしょうか?」

 「実はサブマスからエナさんに追加リストをお預かりしているんです」


 なんだって……サブマスリストの追加があるなんて……いらないな、うん。


 「いや、遠慮しときますね」

 「そんなこと言わないでくださいよー……受け取ってもらえないと、その内サブマスが強引に手渡しにきますから」


 えー、サブマスさん敵に回すと厄介そう……サブマスに振り回されたドネルさんを思い出し身震いがした。


 「わ、わかりました。もらっときますね」

 「よかったです! では、こちらが追加分です」


 いやいや、カーラさんや……追加リストが前のリストより多いってどういうこと? ねえ、どういうこと?


 「ちなみに1番上に書いてある素材はエナさんが持っていたらすぐにでも買い取りたいそうです」


 スルーなんですね……今回は全てのリストに買取価格まで記載されていた……随分と用意がいいことで。

 1番上に書いてある素材って魔物の好物だって聞いたことあるし結構危険なんじゃ……だから買取価格も高く設定されてるのかな?

 

 「あー、これは採取したことないですね……」

 「そう、ですか……」


 基本的にポーションの材料になる素材しか採取してないからなぁ……


 「では、採取した時はお願いしますね」

 「わかりました」

 「そうだ。サブマスさんから伝言で……これはポーションの材料にもなるから色々試してみたら。だそうです」

 「ポーションですか?」


 ポイントで交換したレシピには載ってなかったけど……


 「なんでも特殊ポーションに分類されるみたいですね……ほら毒とか麻痺とかの回復に特化したポーションがあるじゃないですか」

 「……え?」


 なんてこったー! ハイポーションとマナポーション以外にもポーションってあるのかー……


 「……エナ、大丈夫?」

 「はっ、リディ……うん、平気だよ」

 「あの……一般的な特殊ポーションのレシピなら販売してますけど」

 「それくださいなっ!」


 まぁ、レシピはお安くはなかったけど……今度から色々採取して、実験してみよう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る