第3話 女神見習い、爆誕?(3)
「そうだっ」
廊下に人の気配がなくなったのを確認し、面倒な編み上げサンダルを履き直してそーっと辺りを伺いつつ部屋を抜け出し……トイレへダッシュ。
忍び足で部屋に戻り、体がベタついて気持ち悪かったため試行錯誤しつつ、さっと汗を流し、ベットに腰を下ろす。
「ふぅ……疲れた。女神様に今後のこともどうしてこうなったのか。とか色々と聞きたいけど、どうやすれば連絡取れるのだろうか?」
すると突然、目の前に透明な板のようなものが現れ……さらにその画面に【交信】と浮かび上がってきた。
「そういえば今日、加護や回復魔法ってどうやって使うのかな? って考えた時もこんな感じだったっけ……」
あの時はいっぱいいっぱいで余裕がなかったから助かった! なんとかなるかも。って飛びついた記憶があるけど、冷静に考えたらおかしな話だよね……まあ、私がここにいることを考えたら不思議でも何でもないか。
「それはともかく【交信】ってなんだろう?」
------
【交信】
神やその部下(眷属)との連絡手段として使用できます。
ただし、相手と連絡先を知らなければ使用不可。人間相手には使用不可。
------
「おお、説明出てきた」
試しに「女神見習いとは?」とつぶやいてみた。
------
【女神見習い】
女神の代わりに仕事を代行する存在。
女神ができることは多少劣るもののある程度、使用可能。
魔法レベルが上がれば上がるほど本物の女神に近い効果が出るようになる。
------
「これ、便利機能っぽいな?」
何回か試すうち、声に出す必要はないようで、例えば女神見習いについて知りたい場合には……
『女神見習い 調べる』
『女神見習い 検索』
『女神見習い 参照』
『女神見習いとは?』
『女神見習いって何?』
すべて試した結果、問題なく辞書のように詳細が表示されたので特定するワードさえあれば基本的に何でもいいのかもしれない。
しかも、タッチパネルみたいに触れることもできた……が、人前では不審者になりかねないので十分気を付けた方がいいかも。
ある程度のことはこの画面でわかるようなので、できる限り活用していこうっと。
「あ、もう。また忘れるところだった。女神様に聞きたいことが山ほどあるのに」
------
【交信】
連絡先一覧
《慈悲の女神 フィラ》
《慈悲の女神部下 コルド》
《慈悲の女神 フィラ》を選択しますか?
[はい] [いいえ]
------
「えーっと……[はい] これでいいのかな?」
本当にこれで連絡できるの? それに会ったことないけど知り合いってことでいいのか……
『はぁ~い。女神様ですよ~。見習いちゃんなかなか使いこなしてるね~』
おっ、すごい! ちゃんと連絡できたっ!
ただ頭の中で声が響いているのはちょっと違和感あるね……
「女神様、あのどういうことですか? きちんと説明してほしいんですけどっ。それになんで私が女神見習いになったんですか?」
『まぁまぁ、見習いちゃん落ち着いてよ~。はい! 説明するよ。え~っとね……コルドが「女神見習いでもいれば仕事が楽になるかもしれないのに」って言ってたからそれ採用してみた。えへっ、私って部下思いだよね~? それで適当にくじ引きしてみたらあなたが当選者たっだの~。でもね、せっかくあなたを女神見習いにしたっていうのにコルドったら全然喜んでくれなかったの~「私の仕事を減らすどころか余計な仕事が増えただけです」かいうのよぉ』
まさかのくじ引きですか……運がいいんだか悪いんだか……
「それで、私はこれからどうすればいいんでしょうか?」
『う~ん、それはわかんないよ~。さっきはしっかり女神様してねって言ったけどアレ強制じゃないから~。無理して私の代わりはしなくておっけ~ってことでよろしくねぇ。とりあえず私はまだまだ降臨しないつもりだし好きにしたらいいよ! うん! 全部、見習いちゃんに任せるね~。困ったら部下のコルドに連絡してね~じゃあね~』
「えっ、ちょっ、ちょっと待って! まだたくさん聞きたいことがっ。それに女神を絶対やる必要ないんだったらさっさと元の世界に返してくだ……あっ、切れた」
全部任せるわ~って、女神様放り投げすぎ……はぁ、なんか一気に疲れが……なんの解決にもなかってないし。
------
【交信】
《慈悲の女神 フィラ》との交信を終了しました。
------
「へぇ、お知らせ機能までついてるんだ……でも【交信】て傍から見たらひとりでぶつぶつ話してちょっと不審者ぽいな」
【交信】するときはなるべく人気の少ないところでしようと心に決めた……するかわかんないけど。
「ん?」
-----
【交信】
《慈悲の女神部下 コルド》から交信されています。
[はい(許可)] [いいえ(拒否)]
------
「選べるんだ。 [いいえ]とか押してもいいのかな?」
なんかさっきの女神様ならやりかねないような気が……
容易に想像できてしまい、苦笑いを抑えつつ、画面の[はい]を押す。
『先ほどは大変失礼いたしました。改めまして、わたくし女神様の部下をしておりますコルドと申します。まさかわたしが呟いたひと言を女神様が実行なさるとは夢にも思わず……エナ様にはご迷惑をおかけして申し訳なく思っております。女神様には後でしっかり話しておきます』
部下のコルドさん、心なしか声が疲れている気がする……苦労が絶えないのかな?
まあ、コルドさん私にとっては女神様の次に元凶とも言える存在なんだけど……なんかコルドさんを責めるのもお門違いな感じがするんだよねぇ。
「いえ……コルドさんが止める間も無かったようですし、仕方ないというかなんというか……ところで、先ほど女神様には好きにすればいいと言われたのですが、本当にそれでいいんでしょうか? それともうひとつ、私は元の世界に戻ることは可能なんでしょうか? 女神様に質問する前に【交信】が切れてしまったので」
『女神様がそう仰ったならば、エナ様好きにしていただいて結構です。ただし、こちらの世界の法に触れない程度にお願いいたします。基本的にはエナ様のいらした世界よりも法規制は緩いので元の世界でしてはいけないことはしない。程度で大丈夫です。そして、エナ様が元の世界に戻れるかどうか。ですが……なにぶんわたしの権限外でして……これからこちらで詳しく調べて何か分かり次第報告ということではいかがでしょうか。それまではこちらの世界で過ごしていただきたく……』
すぐに元の世界に帰れるかもしれないというわずかな望みかけて質問してみたけれど、答えは何とも微妙なものだった。なんにせよ、時間がかかりそう。
「……わかりました。ありがとうございます。またご連絡しますね」
落胆が隠せなかったけど、仕方ない。仕方ないったら仕方ない……
『わからないことなどがあればステータスプレートや心眼で調べてみてください。それ以外で質問や困ったことなどあればいつでもご連絡ください。それでは失礼します』
------
【交信】
《慈悲の女神部下 コルド》との交信を終了しました。
------
ステータスプレートってさっき出てきた板と似たようなものだよね? 一応確認しておこう。
「ステータス……やっぱ出てきた!」
------
【ステータス】
種族:女神(見習い)/人族
氏名:エナ・ハヅキ
状態:通常
体力:20/230
魔力:48770/55000
運:75
スキル
・火属性魔法レベル1
・水属性魔法レベル1
・風属性魔法レベル1
・地属性魔法レベル1
・光属性魔法レベル1
・回復魔法レベル3
・状態異常無効レベル1
・接触防衛レベル1
・火属性耐性レベル1
・水属性耐性レベル1
・風属性耐性レベル1
・地属性耐性レベル1
・光属性耐性レベル2
・闇属性耐性レベル2
・体力自動回復(中)
・魔力自動回復(大)
・成長経験値上昇(大)
特殊スキル
・女神の祝福レベル3
・女神の浄化レベル2
・女神の調合レベル1
・女神の心眼レベル1
・女神の聖域レベル1
・言語翻訳
・感謝ポイント〈106ポイント〉
ー称号ー
巻き込まれし者・当選者・女神見習い
ー加護ー
慈悲の女神フィラの加護・慈悲の女神の部下コルドの憐憫
その他機能【交信】【履歴】
-------
「魔力多っ! それにやたらスキルがあるんだけど、これって普通なのかな? 絶対使いこなせないよ……」
気になったところはとりあえずタップ!
火魔法レベル1《
もう一度タップすると詳しい説明が表示された。そのほかにもイメージ次第でかなり自由が利く様子。
「あー、使える魔法がわかるのか……便利だね。それにしてもなんで既にレベルが上がってる魔法があるんだろ?さすがに1日で上がらないよね……」
コルドさんの言っていた心眼というのは特殊スキルの女神の心眼というもののようだ。
アイテムの名前や効果、人物の詳しい情報を調べられるみたい。かなりレベルに左右されそうだけど。
次に【履歴】を確認してみると……
-----
使用者登録完了【エナ・ハヅキ】
初期設定より一部女神仕様に変更し、補正が入ります。
【交信】
連絡先一覧
《慈悲の女神 フィラ》
《慈悲の女神部下 コルド》
ー履歴ー
【女神の知識】が付与されました。
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。
【感謝ポイント】2ポイント獲得しました。累計 3ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 5ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 6ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 7ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 8ポイント
【感謝ポイント】2ポイント獲得しました。累計 10ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 11ポイント
【感謝ポイント】3ポイント獲得しました。累計 14ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 15ポイント
・
・
・
-----
その後もずらっと主にポイント獲得の履歴が続いていた。
どうやらこの【女神の知識】っていうもののおかげで検索とかできてたみたい。
それに、最初からレベルが上がった魔法があるのを不思議に思ってたけど、履歴にある一部女神仕様に変更ってとこで女神として最低限、加護や回復魔法が使えるように補正がかかったのかな……
うん、女神なのにそこらの人より魔法が使えないんじゃ目も当てられないしね。
「【履歴】をずっと見てたら、なんか目がチカチカしてきた……時々確認する程度でいいや」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます