第4話 女神見習い、爆誕?(4)


 

 ポンッ、ドサッ。


 「うぉっ、ビックリしたー」


 私が落ち着いたところをまるで見計らったかのようなタイミングで、いきなり音を立て何もない場所からショルダーバッグが出現した。

 それとほぼ同時にひらりと紙が舞い落ちる。


 「え、あっ、これ私のだ……多分」


 なぜ多分なのかといえば……私が元々持っていたショルダーバッグは白地に赤のロゴマークが入ったシャカシャカした軽い素材のものだったけど、これは明らかに違う素材の布でできている。

 白地も素材が変化したせいか生成りになっているし、赤のロゴマークも朱色っぽくなっていた。

 それでも隅にあるロゴマークだけはきっちり再現されている。


 「いや、こんなところにこだわらなくていいから」


 舞い落ちてきた紙を拾うと


 『エナ様 転移時に所持していた荷物についてですが、こちらの世界に存在しても問題ないと判断されたものは素材などをこちら仕様に変更しておりますが、お渡しします。金貨は私からのお詫びもこめて女神様の分も多めに入れておきます。 コルド』


 「へぇ……これはかなり嬉しいかも」


 とりあえずベッドの上にショルダーバッグから手当たり次第に荷物を出していくことにする。


 素材は違ったけど、だいたいこんな感じ。

 元はチュニックとジーンズだった服は生成りの上着に濃紺のズボンになり、靴下と一緒に布の袋に入れてあった。

 ファスナーのついたポーチは布の巾着袋に変化しており、大きい方は元々電子機器などを入れていたため空っぽ。

 小さい方にはタオルハンカチやティッシュ、手鏡や櫛などのが素材を変更されて入っていた。

 買い物用のマイバッグは丈夫そうな布で出来たものに変化し、スニーカーはこげ茶の編み上げのショートブーツに。

 筆箱は革の入れ物になって、筆記用具は万年筆のようなペンに、ハサミは鞘入りの小振りなナイフになっていた。


 「うん。ハサミ、原形をとどめてないな……」


 さすがに電子機器など(スマホ、音楽プレーヤー、電子辞書、腕時計、折りたたみ傘)は無かったもののその他はほとんど揃っていた。


 「あっ! これ……」


 中でも特に嬉しかったのは手帳に挟んであった数枚の写真。

 それも写真ではなく精巧な絵に変わっていたけど……見つけた瞬間涙が出そうだった。

 友達からはスマホがあるんだから、いらなくない? って笑われたけど気に入った写真を入れておいた自分を褒めたい。

 だって、今は鮮明に思い出せるけど、これがあれば例え年月が経っても家族や友人を簡単に思い出せる……


 あとは財布だけど……革に型押し模様のある凝った巾着袋になっており、中には見覚えのない硬貨が30枚ほどジャラジャラ入っていた。

 お金は元々財布にいくら入っていたかはよく覚えてないものの、手紙にもあったようにかなり多めに入ってるっぽい。


 「え、これいくら何でも多い気がする……女神様から徴収されたのかな……」



 ひとつひとつの硬貨を女神の心眼で確認して、金貨、銀貨、小銀貨、銅貨、小銅貨に分けることができた。

 内訳としては金貨が4枚、銀貨が12枚、小銀貨が5枚、銅貨が3枚、小銅貨が8枚だった。


 「うーん、とりあえず金貨は全部お詫びっぽいからお金に困らない限りへそくりとしてとっておこうかな。あとの硬貨はよくわからないし、ありがたくそのまま使っちゃおう……うんうん」


 いまいち価値はわかってないけどなんか金貨ってお金持ちのイメージだからって理由でへそくりにした!

 そんな雑でいいのか……


 「うん、これで全部出せたかな。それにしても、そんなに大きくないショルダーバックにどうしてたくさん入るんだろう? 」


 服とか靴とか地味にかさばるよね……疑問に思い、女神の心眼 


------


〈マジックバッグ 小〉

  ハヅキ・エナ専用の女神謹製品。

 見た目よりもたくさんの物を収容できるショルダーバッグ。

 バッグの中に物を入れた場合、時間経過はあるものの、バッグ自体に壊れず、汚れず、持ち主以外の使用不可の機能付。

 本人の意思で預けることは可能。その場合マジックバッグの機能使用不可。売買不可。


------


 「おぉ、ショルダーバッグを造り変えたってこと? これ部下のコルドさんのあとでしっかりお話しておきますとやら、かなり怖い部類のやつだったのかな……よくわかんないけど便利そうだからいいや」


 決して怒られた女神が気の毒とか可哀想とかは思わない。だって自業自得でしょ? 私だって目の前にいたら怒ると思う……


 一応、荷物全てを女神の心眼で確認したら、万年筆だと思っていたものは全くの別物で、魔力で文字が書けるらしい。つまり、魔力さえあればインク切れの心配がないんだって。すごーい。


 

 これらの荷物はある意味かなりの貴重品なのだが、この世界の常識を何一つ知らない主人公はこれを普通のことだと信じるのであったーー



 「とりあえず、かさばるしバックに戻しておこー……ん?」


 バッグに手を入れるとステータス画面に似たパネルが出現し、中に入っているものが表示された。


 画面の右上には〔0/10〕となっていた。

 

 「ここにも謎機能が……」


 確認のためタオルハンカチをつかみバッグに入れてみる。

 画面の右上に〔1/10〕と表示され一覧の一番上に〈タオルハンカチ〉となっていた。


  「へー、すごい。大きに関係なく10個まで入りますってことなのかな? ……取説がほしいよぉ」


 そんなものはないので仕方なく自分で色々と試してみる。


 ハンカチを一度出してから、試しにハンカチが入っていた小さな巾着袋(タオルハンカチ2枚、ポケットティッシュらしき紙束3つ)を入れてみた……


 画面には

 〔1/10〕

  一覧には

 〈巾着袋 小 :タオルハンカチ2、ポケットティッシュ3〉となった。


 今度は同じ袋にナイフとタオルハンカチをひとつずつ入れてバッグへ。


 一覧には

〈巾着袋 小 :タオルハンカチ〉〈鞘入りナイフ〉


 バラバラに収納され画面の右上には〔2/10〕と出ている。


 「ん? どういうことだろ? 一緒には入れられないのかな……」


 その後、何度も試すうち転移時に同じ袋に入っていた物のみ、違う種類でも同一と認識されるらしいと発見した。


 「元々持ってたものが例外で、こっちの世界のものは同じ種類じゃないとまとめて入れられないってことか……それでも十分便利だ」


 結果、同じ種類のものなら袋などにまとめると重さに関係なく1つとして認識されるが、違う種類の物同士だとバラバラに収納される。


 ……え? まとめるための袋とその中に入れる物は別々の種類として数えないのかって?


 気になったものはとりあえず女神の心眼と女神の知識で色々確かめてみる。

 ふむふむ、どうやらまとめる為のツールと判断された場合であれば、それが袋だろうが箱だろうが関係なく収納できるらしい。さすが女神様謹製のマジックバック。

 さらには箱に仕分け用の袋などを詰めてバッグへ収納することも可能だがその場合、枠が1つ埋まるらしい。へー。



 タップでも口に出しても考えた場合でもバッグに手を入れれば望んだものを取り出すことができる。

 つまり、ゴソゴソとバッグの中を探す必要がない。

 ただし入れられるものはバッグの口に収まるサイズのみ。もちろん生きているものは収納できない。


 出したいものは簡単に選ぶことができるし、一覧があるので、中に何が入っているか忘れてしまうこともないので安心だね。


 全てをバッグに戻すと半数以上が埋まってしまったので、今後買い物するときは同じものを買って入れないと。


 「なんて、まだ教会の敷地外に出たこともないのに買い物なんて気が早いか……」



 本当は他にもいろいろ詳しく調べたり試してみたい。

 特に感謝ポイントが気になってる。でも、もう眠気に勝て、る気が……しない


 「そうだ……明日……あした、やろう……あ、ごはん食べてない……お腹空いた、な……」

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