第七十六札 さぷらいず!! =驚き=
まえがき
「読み手の皆、俺の事忘れてないだろうか?」
「いやぁ、元々物語におってもおらんでも影響なくない?」
「えっ? そこまで!?」
「多分アンタの代わりに流那その場所におっても大丈夫なレベル」
「いや、鬼にパァンとかは死ぬと思うぜ」
「大丈夫、そのシーンだけスタントマン入れるから」
「いやこれ映画じゃないから」
※本編とは全く関係ありません。
「えー……
「情報に誤りですって? 一体どんな誤りでそんな被害が出るんですか!?」
怒気を
「恐らくですが現地駐在の法術師からの「情報が誤っていた」のではなくて「悪意を持った人間が意図的に脅威になる存在を
「悪意を持った人間? 何を以ってその様な憶測を? その根拠はおありなんですか?」
「実はその時にここにいる
葉ノ上の名が出たことによって一同の視線が
「漣君のご子息である
「黒子に氷鬼……? その話に
「その場にいたほぼ全員が強力な妖気を感じたのに加えDランク上位の
「接戦、と言う事は黒子の力量的にはDから良くてCという事ではないのかのう?」
「私も最初は
「なるほどのう。洲崎とやらが接戦の末追い払ったと嘘をついておると言う事じゃな?」
「そうとも言い切れませんが、その可能性の方が有り得るかと」
「なぜそんな嘘を?」
「それは分かりませんねえ……。報告が嘘だという証拠もありませんし、本当だという証拠もありませんからね」
「フン。何にせよ下の者二名を死なせておめおめと逃げたのには変わりはないがの」
洲崎の行動に対して東厳寺が鼻で笑う。
命あっての物種だけど、と思った葵だったがそれも口には出さない。
「その悪意を持った人間の目的は葉ノ上宮古だった、と言う事でしょうか?」
「いえ、どうやら黒子が襲おうとした目的の人物は他の様でして……」
「他? どういう事ですか?」
歯切れの悪い葵の様子に、若干の苛立ちを感じながら皇王院が答えを急かす。
「そ、それが……この件は各管轄長からの情報提供も頂きたい案件なのですが……
、実はとある洋館に気が付けば住みついていた青年がいまして、その人物の情報を頂きたいのです」
そう言って葵が「配って差し上げて」と言うと漣がゆっくりと立ち上がり、全員の周りを歩きながら書類を机の上に置いていく。
「
「逢沢利剣ですか……私も東厳寺さんと同じで知らないですね」
「この青年がある洋館に住み着いている事に何か問題でもあるのでしょうか? そもそも先程の黒子の件もまだ終わっていませんよ!」
書類をトントンと指で叩き、皇王院が理解出来ないと言った風に眉間に
「その家は、三年前の野島一家殺害事件のあった洋館です」
「な……!!!!!?」
葵が告げた言葉に、漣を除く全員が驚愕の表情を浮かべる。
「な、何であの家に住んでいるんですか!?」
「野島の縁者かいのぉ?」
「いえ、縁者に逢沢はおりませんな。それにそんな話は私も初耳です」
「葵さん、一体どういう事なのでしょう!?」
口々に驚きと疑問の声が飛び交う中、葵は沈静化を図ろうと両手でまぁまぁと四人を宥める。
「報告の順序が前後してしまい、申し訳ありません。ただ青龍管轄としてもその者の詳細を調査しましたが、戸籍・所有権共に東京都と国が認めているだけに、どんな魔法を使ったのかが全く分からなくてですね……」
漣からおおまかな内容は聞いていた葵が心底困ったような雰囲気を演じてポリポリと頭を掻く。
葵のその様子が可笑しくて吹き出しそうになりながらも漣は必死に奥歯を噛みしめて渋い顔をしていた。
「葵管轄長、その青年とコンタクトは取られたのですか?」
「取りました。実はその件に関してまだご報告が……」
「はぁ……、今度は何なのですか?」
次々と出てくる葵からの報告に、若干あきれ顔の皇王院が報告を催促する。
東厳寺と白神はと言うと今の報告が衝撃的過ぎて、話の内容と疑問が消化しきれていないようだ。
「実は逢沢利剣君の住む洋館に、殺害された野島一家の一人娘である野島咲紀さんが……幽霊の状態で存在していまして……」
「は?」
「え?」
「うん?」
「何!?」
葵の言葉に四者がそれぞれの表情で耳を疑った。
「そこで館の中をくまなく探した結果――」
「ま、待って……、待って下さい葵さん! 野島家のご息女が霊体で発見ですって!?」
「は、はい。そうですね」
「そんな重要な情報を何故今の今まで
「そっ、そうですよ!!
皇王院の詰問を聞き、一緒になって白神も葵を責める。
「本来であればそうするべきだったのですが今回は事が事だけに公には出来ず、青龍管轄が責任を持って対応していました」
「説明になっていませんよ!」
「そうですよ!」
「どういう事か詳しく説明してもらえまいか……?」
熱くなっている皇王院と白神とは真逆に、隆臣が冷たい視線を葵に向けて静かに語りかける。
演技とは分かっていながらもその圧力と雰囲気に葵の背筋に冷たいものが走る。
「ま、まず話は三年前に起きた事件まで
「……はい」
事件の説明をしてくれるかも、などと淡い期待を抱きながら話を振った葵だったが、漣は肯定しただけで説明をしてくれる気配はない。
胸中で漣さんめ、後で何かご馳走してもらうからねと思いつつ続けて口を開いた。
「さ、三年前の野島家に起きた事件ですが表向きには式呼びの儀で呼び出した鬼が予想外に強く、咲紀君が食われた事に慌てた両親がその命と引き換えに祓ったという「事故死」扱いで終わっていますが当然我々はそう思っていません。札を手配した者が事件後に服毒自殺で命を絶っている点も不自然です。これには事件性があると考えるのが妥当かと思いましたので……」
「つまり、我々を信じていない、と?」
不快感を隠すこと無く露わにした皇王院が睨み付けてきたのを受けて葵はかぶりを振る。
「皆様を信じていない、と言う風に捉えられるのであれば仕方がありません。しかし殺害された野島家も、札を取り扱っていた業者に裏切られて命を落としています。誰が味方で誰が敵なのか正直分からない状態で咲紀君の情報を無闇に広げたくなかったという事はご理解頂きたく思います」
「……納得はしておりませんが話の内容は分かりました。それで? 野島咲紀さんの霊体は何か事件当時の事を覚えていたのですか?」
「それが何も覚えてはいませんでした。……ですが霊体と肉体を結合させて、無事現世に戻ってきました」
「…………は?」
皇王院、白神、東厳寺の口から発せられた「は?」は今だかつて一度も聞いたことがない程に間の抜けた声だった。
あとがき
ここまでお読み下さりありがとうございました。
ようやく文字数が復活した感じです。
これからも余裕を持って頑張っていきたいと思います!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます