閑話!! ~法術師のあれこれ~ (本編とは関係ありません。)

まえがき

本編に組みこんで説明会話にする程の事でもないかなと思い、ご興味のある方だけ

お読み頂ければいいかなぁ、と思い記載しました。






 何か色々な事が立て続けに起こってたから、全然読んでなかったなぁ…。

 ある日。

 俺は部屋の隅に放置していた「法術師の手引書」の存在を思い出して手に取っていた。 


「…目だけ通しておくか」


 理解出来るかは別として。

 これを読むことで法術が使えるようになればいいんだけど。


 そんな事を思いながら俺は手引書を開いた。


「法術師の登録、おめでとうございます!」


 セリフの吹き出しの中にやたら可愛い文字でデカデカとそう書かれていて、その下に目がクリっとした二等身キャラが男女一人ずつ描かれている。

 ホウちゃんとジュツくんらしい。

 安直ゥ!!


「こんな事に俺の三万円を使うなよ…」


 実際に登録料として支払った三万円がどういう用途に使われているかは知らないが、恐らくこう言った資料や広報にもあてがわれているのだろうと推測する。


 まぁ、お金の話はどうでもいい。

 俺はどんどんと読み進めて行く事にした。


 まず法術とは?という項目があったのでさっそくそこに目を通す。



 ――法術とは陰陽五行いんようごぎょうに基づき自身の内にある「法力」を起点として周囲の五大元素に働きかける事で様々な術を顕現けんげんさせる儀式である。


 神として五神(五聖獣)があがめられており火・水・土・金・木の五属性が存在する。



 法術に携わる者ならば既に知っていると思うが五神とは、



 青龍 … 東方を守護する神であり、適正は木や風・雷とされる。


 朱雀 … 南方を守護する神であり、適正は火とされる。


 白虎 … 西方を守護する神であり、適正は金とされる。


 玄武 … 北方を守護する神であり、適正は水とされる。


 麒麟きりん … 中央を守護する神であり、適正は土とされる。


 の事でありそれらの適正を顕現けんげん、具現化させる人間の事を「法術師」と呼ぶ。


 法術師は人によってまちまちだが、五神の恩恵(祝福)と5属性のいずれかの適正を持ち、術師によって得手不得手がある。


 玄武(水)の恩恵を受け、水に適性のある法術師の水術が最も強く、


 朱雀(火)の恩恵を受け、火に適性のある法術師の水術が最も弱い。


 恩恵や適性は必ず一人1神・1属性ではないようだが、適性は外見や法力からは分からない為、あくまで術を使用した際の発動量や範囲、速度・威力等から推察される。


 信仰や理解により威力が増減する説が最も有力だが、個人の法力量にもよるという説もある。




「なるほどなぁ。ってことは風を操る静流は青龍の恩恵? があるんだろうなぁ」


 陰陽五行ってたしか、☆みたいな五芒星ごぼうせいの奴だよな?


 俺もファンタジーとかゲームでしか知らんけど、火→金→木→土→水→火の順番に強いみたいな。


 という事は青龍の静流に勝つ為には、金だったらいいって事なんだろうか?


 うん、金ならある。


 多分そういう事じゃないと思うんだが。




 俺は適度にチュートリアルを読み飛ばし、気になった項目の書かれた頁を開く。


 そう、「法術」だ。


 ここに使い方とか詳しい事が書いてあれば俺も何らかの覚醒をして使えるようになるはずだ。


 さてさて…。




 ――法術とは自身の法力を起点と(消費)する事で発動する。


 多用しすぎると法力切れを起こして意識を失う等の様々な症状が出る為、細心の注意が必要である。


 法力の許容量(キャパシティ)については増やすことが可能とされている。


 逆もまた然り。


 いわば筋肉のようなもので毎日法力を使い術を使い続ければ洗練され、許容量も増える。


 まったく修練を行わなければ霧散し、許容量も減る。




「やべ、全然そういう訓練してねえぞ……」


 くそ、もっと早めに読めば良かった。


 って言っても術を使ったりがそもそも出来てないんだけどな!


 しかし俺は次の一文が目に止まり、固まってしまった。




 ――法力が元々ゼロだった者が法力を身に付ける事は前例がない為一般的には不可能とされている。


 だが、術をまとった武器を扱う点においては術者が武器に付与(貸与)している為、一定時間の使用は可能。永続的な発動は出来ない。




 法力が元々ゼロだった者が法力を身に付けることは……不可能。


「えっ、つらぁ……」


 って事は俺、恩恵はあるけど使う事は出来ないって事…?


 読むんじゃなかった…。


 俺、もう絶望だよ。


 それなら恩恵とか与えるなよチクショウ!


 そもそもあの恩恵を調べる宝玉自体がバグってたって可能性が出てきた。


「萎えるぅ…」


 今の俺の気持ちを誰かに伝えたいわ…。


 そっと手引書を閉じようとした俺の目に、「次のページは法術師組織についてのお話よ!」と言っているホウちゃんが映る。


 ……正直気乗りはしないが、組織がどんなものかだけ見ておくか……。


 俺はゆっくりと次のページをめくった。




 ――法術師の機関について。


 警察庁が日本の行政機関の一つであるように、我々が在籍している五管轄も同じ行政機関の一つです。


 各警察署にも特別法事件対策課があり、我々法術師はそこに籍をおくことで法術ならびに呪術を使った事件や悪霊・鬼の起こした不可解な事件を解決する為に協力しています。





「あ……俺、知らないうちに警察機関に組み込まれてるじゃん…」


 やべえ、普通に登録して在籍しちゃったよ。


 給料とか出るのかな? いらんけど。


 給料より命の安全が欲しい。




 ――法術師の組織としては頂点に「五彩ごさい」と呼ばれる五人の管轄長をおいて活動しています。


 「五彩」とはすなわち、青龍の青、白虎の白、朱雀の赤、玄武の黒、麒麟の黄の事を指しています。


 2019年現在、警察官が全国で約二十六万人いるのに対し、法術師は約一万二千人が組織に在籍しています。




「多い気がする」


 この日本に一万二千人も椎佳や静流みたいなのが存在しているのか…。


 ピンキリかも知れないけど、何かレア度が一気に失われた気がする。


 俺はそっと冊子を閉じる。


「あぁ……。咲紀の事を色々と調べてやるだけだったつもりがいつの間にか行政機関に組み込まれて……家にも不法侵入されて……」


 何故か天井を見上げる。


「何かずるずると沼に引き込まれている気がするなぁ……」


 そう呟いて俺はベッドに倒れ込んだ。





あとがき

ここまでお読みいただけるとはもしかして貴方様は勇者ですか…。

いつもお読み下さりありがとうございます。

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