第19話 10歳は立派な子ども。
「セシリア様が脱走されました!」
「またか!」
「まったくあのお嬢様は……」
「本当に。それに、今日に限ってどうして……。とにかく、探せ!」
「「「はい!!」」」
そんな使用人たちの声を背に、私は屋敷の塀を飛び越えた。
この世界に転生して、はや十年。
私も立派な子どもになった。
だから、お父様お母様、そしてヘレンにベン。
ごめんなさい。
子どもは風の子なのです。
勉強をサボって遊びに出かけるのもまた、子どもの仕事だから。
今日も今日とて街へと足を運ばせていただきます。
旅人がよく使っているような麻でできたマントのフードを深くかぶり、私は急ぎ足で宿屋へ向かった。
事情を全て把握している店主に少しばかりのチップを渡すと、私は一つの部屋の前へと案内された。
その扉を開けて、私はフードを外した。
「ジャン、待ったか?」
そこには、のんびりとうたた寝を楽しんでいるジャン王子がいた。
そう、あの日。
エドワード王子の生誕祭にジャン王子と出会ってから、私と彼は友人になった。
それから、王城で開かれるお茶会や文通によって交流を深めたのであった。
初めは、エドワード王子たちがボビーお兄様と会うためにやって来るのに便乗して、ブラッドレイ領へと遊びに来ていたジャン王子だったが、七歳くらいからだろうか、一人で勝手にやってくるようになったのだ。
そんな健気な友情に、私も応えなくてはならないと思った。
というわけで、私もまたその頃から屋敷を抜け出すようになったのであった。
こうして、私たちは唯一無二の親友となり、私はジャン王子をジャンと呼べるようになった。
ついでに、とエドワード王子からもエドワード呼びを強制されたのは、また別の話である。
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