第12話 攻略対象者たち。

だが、同時にそれで良かったと思う。

下手にゲーム内容を知っていると、巻き込まれる可能性があるからだ。


パッケージにボビーお兄様は描かれていなかったから、モブキャラだろうし。

モブキャラの妹の私なぞ、モブのモブのモブキャラに過ぎないのだから。


安心していい。

私の異世界スローライフ計画には、まだ何の支障も起きていない。


私が目まぐるしく考えを巡らせていたところに、エドワード王子の声がかかる。


「ボビーは、俺と同い年だったよな?」


「ええ、そうです」


「なら、紹介しておこうか。この金色の髪の繊細そうな奴がクリス・ノーラン。エルフ族の者だ」


「初めまして、クリスと申します」


きらきらと輝く金色のロングヘアを耳にかけ、子どもながらに中性らしい顔をしたクリスは、にこりと微笑みかけた。

髪から覗くその耳は鋭く尖っていた。


「で、次に。こっちの黒髪のちっこいのがドワーフ族のオリヴァー・マックイーンだ」


「別に、ちっこいわけじゃねぇ」


そうボソリと文句を言ったのは、五歳児の私と同じくらいの背丈をした男の子であった。

腕や足腰にしっかりと筋肉がついているのは、さすがドワーフ族といったところか。


「で、最後に灰色の髪のがシド。獣族で、確か狼の血筋なんだっけ?」


「……あぁ。シド・モリンズという名だ」


私と同じように鉄仮面の彼は、どうやら狼の獣族のよう。

ボビーお兄様の肩の力が抜けているのは、髪色といい無愛想なところといい彼と私が似ているからだろうか。

それとも、彼のモフモフの耳が気になるのだろうか。……私も気になる。


「こいつらも同い年だから、一緒に仲良くしようぜ!」


エドワード王子の言葉に、ボビーお兄様が嬉しそうに笑って頷いた。


尊敬するお兄様とは言え、まだ七歳の子どもなのである。

友達が出来るのは良いことだ、うん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る