第6話 ラングアニス大陸。

しかし、そんな綺麗に分割され、それぞれに適した大地を与えられたラングアニスの四種族たちは、一度も刃を交えたことはない。


それぞれの種族に思うところはあるようだが、可もなく不可もなくやっているらしい。


ドワーフ族は、宝石やアクセサリーを他の種族に売ることで衣食住を揃え、獣人族は、海に時折現れる海賊たちを討伐することで力を発散している。

また、エルフ族は西の砂漠を資源豊かな森にし、自給自足の生活を行っており、ヒト族は三種族の間を行ったり来たりし、少しでも生活を良くようと忙しない。


種族間の差別もなく、またラングアニス自体、必要な資源は自分たちで賄えるという完全なる自給自足の大陸であるため、貿易という概念すらないようであった。


海の向こうへと馳せてゆく冒険家は時折現れるようだが、誰もこの大陸へと帰ってきた試しはなく、誰もラングアニス大陸以外のことを知らないらしい。


このように、とても閉鎖的な大陸ではあるが、ラングアニス自体がとてつもなく広大なので、今まで誰も疑問には思わなかったのだろう。


ちなみに、南の大地に現れるという海賊たちは、基本的に皆ラングアニスの者たちであり、他の大陸から略奪者が来たことはない。


そして、このような平和な現状をこの大陸の者たちは、神の加護であるとし、毎夜眠りに着く前に祈りを捧げるのである。


この世界なら本当にゆったりまったり余暇を過ごせそうだと、ベンとボビーお兄様の様子を窺いながら、私はにんまりと口角を上げた。

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