第4話ユルシはアイスがお好きらしい?
アクマでもマジ!シャン物語4
第十九章 ユルシちゃんの日常。
あれから半年が過ぎた……
ユルシは今年で8歳になる。そんな誕生日の日にママから誕生日プレゼントでトランプを買ってもらった。
「ママありがとう。これでユルシも立派なマジシャンになるよ!」
「大事にしてね。ユルシちゃんが手品師になれるようにママも応援するけんね!」
「おじさんみたいな立派なマジシャンになるんだー」
「ユルシちゃんは手品師になるんだよ、魔法使いになったらダメよ?」
「う、うん。」
こうしてユルシはママと約束して立派な手品師になるのが夢になった。おじさんみたいな立派なマジシャンになるんだ。
ユルシには迷いは無かった。
折角だから手品はまだ出来ないけどトランプでゲームをする事になった。色々やってみたけど、ユルシは簡単なのしか出来ない。ババ抜きが一番得意になった。
「ユルシちゃん強いね、またババ引かされた。」
「ママに勝った!やった!」
二人でトランプやってもあまり楽しくないなぁ、おじさんが居たらなぁ。
ユルシの家はパパとママが離婚して母子家庭なの、ママがユルシを大学まで行かせるって張り切ってるけど、ユルシはマジシャンになりたい。まだ小学生だけど先の事は色々決められてる。ユルシの家はお金が余りないからユルシが勉強を頑張るしかないけど、そんなに頭良くないしなー。
「ユルシちゃん今度の日曜日映画見に行こう。」
「う、うん。夏休みの課題まだ終わって無いけどいいの?」
「後どのくらい?」
「頑張れば今日か明日には終わるよ。」
「じゃあちゃっちゃと片付けなさい。」
「はーい。」
†
こうして言い付け通りに夏休みの宿題を済ませ様としたら、読書感想文が残ってた。
「明日図書館に行ってみよう。おじさんに会えるかな?」
ユルシはお風呂に入って念入りに髪の毛を洗ってトリートメントした。寝る時もおじさんの夢が見れる様に願った。
夢の中
「ユルシちゃん。夢の中で会えるなんて、嬉しいな。」
「おじさん!おじさんはユルシの天使だから。」
周りを見渡すと宇宙だった。だだっ広い黒い宇宙に二人きり。
「おじさんは天使なんかじゃないんだよ。悪魔なんだよ。」
「そんな事無い!明日図書館で会おうね?」
「分かったよ。明日会おう。」
おじさんは段々と黒い宇宙に溶けていった。取り残された私は寂しいなぁって思ってた。
夢から覚めたら、ママはもう仕事に出かけていた。私はおじさんに会えるかな?って思って図書館に向かった。
†††
図書館に着いてもおじさんは居なかった。夢の中で待ってるって言ったのに……
仕方無く、夏休みの宿題の読書感想文を書く為に適当に本を読み漁る。すると、実践的魔導書というタイトルの本に目がいった。そこに書いてあるのは紛れも無い、本物の魔法使いになる為の内容だった。本の内容を良く読んで実践したものを読書感想文に書く事に決めた。
「でもこれを借りたらママに見つかったら叱られる。」
ユルシは困ってしまったが、まぁ明日も図書館に来ようと決めた。
長い時間読んで見たけど、内容がユルシにはちょっと難しい。でも最初辺りの簡単な部分を実践してみよう。
実践的魔導書は食べ物が大事と書いてあった。この辺はおじさんに会ったら聞いてみよう。あっおじさんにバレンタインのお返し貰ってない。
そんな時だった時刻は夕方。おじさんが図書館にやってきた。
「あれユルシちゃん?夏休みの宿題?」
「うん、読書感想文書きにきたよ。」
「どの本にしたの?まさかな?」
「実践的魔導書って本にしたよ。おじさんは魔法使いなんだよね?この本難しいから教えて。」
「ちょっこれ俺が書いた本じゃん?」
すっごーい!やっぱりおじさんが書いたんだ!
「そうなんだ!ねぇねぇ食べ物が大事って書いてるね。おじさんはユルシにバレンタインのお返ししてないよ!」
あ、これってユルシからお返し求めたらマズイのかな?
「コンビニ付いてくる?お返しまだだったし。」
やった!嬉しい!
「うん!」
††
コンビニに付くとおじさんはソフトクリームを2つと缶コーヒー2つを買ってきた。レジでゴッ殿お姉ちゃんが、相変わらずお客さんにタメ語で話してる。
「ユルシちゃんこれくらいしか買ってあげられないんだ。」
「あ、ありがとう。」
おじさんはソフトクリーム2つ入ったレジ袋をユルシに渡した。どういう事だろう?
「アイスだから愛する?って事?でも何で2つなの?」
「それは違うよ、ただのアイスだよ。」
「2つは食べれないから1つはおじさんの分!」
「それはダメだよ。」
おじさんは慌ててる。やはりこれも魔法と何か関係してるのかなぁ?
そういえばおじさんの思考は筒抜けだったから、集中して聞いてみる事にした。
(やべぇ、アイス2つ食べたら愛する帳消しで想いを消せたのに、ユルシちゃんからアイスを1つ返されて食べたら逆に両想いになってしまう。危なかった。)
「おじさんがアイス1つ食べないとユルシ今日帰らない!」
「えー、困るよ。」
ユルシはキレた。生まれて初めてキレる。
「おじさんはユルシの事嫌いなんだね!ユルシの想いが消えてしまえばいいんだね!」
「ごめんよ、ユルシちゃん。年の差が親子以上に離れてるんだよ。気持ちは嬉しいけど……」
「ユルシはおじさんの事こんなに好きなのに魔法で気持ち消そうとするなんて、最低!」
「ごめんよ、アイス溶けちゃうよとりあえず1つ食べよう。」
「嫌!要らないから返す!」
「魔法使いになれたかも知れないのにね。」
!!
「アイス食べるだけでなれるの?」
「食べてみないと分からないが、魔法が発動するかもしれない。」
ユルシは迷うよ。
「じゃあ、アイス食べて魔法使いになって、おじさんを惚れさせる!」
ユルシは迷ったけど、決めたもん。
「分かった。じゃあアイス。」
おじさんからアイスを貰って一つ食べてみる。すると……何も起こらなかった。
「おじさんの嘘つき……さっき言ってたよね?アイスを2つ食べたら恋心も消えるって……」
「うん。それで良いんだよ。」
ユルシはむしゃくしゃしてたの、だから……2つ目のアイスも食べたんだ。そしたら……
「あれ?ユルシもしかして氷が出せるかもしれない?」
「ま、まさか、ユルシちゃん!今ならまだ間に合う。すぐに心を鎮めて、忘れる様に念じるんだ。魔法が使えると思ったり、思い浮かべたり、思い上がったりしたらいけない!」
「そうなんだね。分かったよおじさん。おじさんの恋心が詰まったアイスだったんだね。魔法使いが思いを込めた食べ物を受け取って、思いを込めて食べたから、だから……ユルシは魔法使いになるんだ。ううん、もう、なった!」
ユルシは氷が自在に操れる。水分を氷に出来ると強く思い込んだ。自分は魔法使いなれたのだと強く思い込んだ。そして念じた。唱えてみる。
「おじさん〝アイス〟おかわり!」
「え!」
おじさんの持っていた缶コーヒーが氷付いた。
わたしはもう魔法使いなんだ。
「おじさんもしかして、わたしがおじさんへの気持ちが冷めるって念じてアイス食べさせたのなら、わたしはおじさんを嫌いになる。」
「それで丸く収まりそうもないな、もう一手ある。ユルシちゃんにあげた缶コーヒーを飲めばいいよ。」
わたしはおじさんの心に聞いてみた。
「それでまたおじさんを好きになれって言うの?」
「そうだ。」
わたしに迷いは無かった。
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