第3話鎧姿のjkゴッ殿!

アクマでもマジ!シャン物語3


第十六章 決闘。


「ちょっと今から変身するから。」

「は?変身ってそりゃファンタジーな頭だな。」

「魔法使いに言われたくないねー。」

「女子高生殴って警察沙汰とかになったら面倒くさいから本当に戦いたくない。」

「俺をただの女子高生だと思ってるん?」

「まぁ軽く手加減してやっから、とっと終わろう。」


すると、ゴッ殿が一呼吸開けた。


「逆装!」

ゴッ殿はセーラー服姿からいきなり空中から鎧が飛んできて全身に鎧を纏った。

俺は残りMPが少ないので素手で勝つつもりだったのだが、そうは問屋がおろさないらしい。

「どうしたおっさん?かかってこないならこっちからいくぞ!」

ゴッ殿がこちらに直進してきた。俺は見切れずに顔面に鉄拳を食らってしまった。

「いって!」

こりゃ一回殺して蘇らすパターンでいいかと思い。MPドレインの呪文を唱える。左手を対象方向に向ける。詠唱は短くカスタマイズしてある。

「ガチでマジで?」

俺の左手から射程12メートル直線の生き物はMPをドレインされる……はずなのだが?


「左レッグ逆装!」

ゴッ殿は寸前で鎧の左レッグをパージして、右方向へ飛んでMPドレイン呪文を避けた。なんたる離れ業だろう。関心してたら、「右レッグ逆装 !」と追いかけざまに、今度は背後を取られた。

「これで終いだ!逆装!」

残りの鎧がゴッ殿から弾け飛び俺に着弾する。やべぇ痛いぞこれ。ゴッ殿はセーラー服姿でつかつかこっちに歩いてくる。勝利を確信したのだろう。だが……!


「HPドレイン!」

「う、なんなん?」

「詰めが甘いぜ?お嬢ちゃん!」

「うそやん?う……」

「ペテンシじゃないよ?アクマでもマジ!シャン!」

俺は残りMPを全て消費し慣れない術式を組んだ。呪文も適当にそのまんまを付けた。慣れない術式で手加減が効かなかった様だ。ゴッ殿は気絶してしまい。俺は大量にHPドレインを出来たHP満タンだ。


†††


勝負はあっさりついてしまった。

俺はゴッ殿を背負ってコンビニ表のベンチに放置した。放っておけば目を覚ますだろう。

(やっぱりおじさんが勝ったねー)

(流石のゴッ殿も魔法使い相手はきつかったか。)

幽霊達がガヤついてるが、コンビニの中を見渡すとそこにはもう、ユルシちゃんも母親も居なかった。

お目当ての商品を買って、さっきの公園に戻る。


†††


「ママ?おじさん勝ったよ?カッコよかったよ?」

(本当に魔法使いだなんて、この子に近づけさせない様にしないと!)

「ユルシちゃんもうあのおじさんと遊んだらダメだからね?」

「え、遊びたいよ……」

「ダメなんだよ。約束だかんね?」

「う、うん……」


†††


公園に着いてキョウが灰になった辺りのベンチに座り、コンビニで買った焼き鳥とコーラを飲み食いする。MPは飲み食いしたり寝たら回復する。そして焼き鳥の串を幽霊になったキョウの心臓に突き立て、タバコを吸いながら蘇生呪文を唱える。

「焼き鳥の焼き直し!フェニックス!」

続け様にレンにも呪文を唱える。

「焼き鳥の焼き直し!フェニックス!」

こうして二人を蘇生した。

キョウとレンが深々と頭を下げた。特にレンは喜んでた。

「ありがとうございます!レンちゃんまで蘇生させてもらえて、嬉しいです!」

「やった。これでキョウちゃんのお嫁さんなれる!ひゃっほい!」

「コンビニの飲食代くらい出せよ?」

「そのくらいなら、はいこれで足りますか?」

復活させたキョウから千円札を渡されたまぁ足りるは足りる。

「分かればいい。それと幽霊だった嬢ちゃん。これからどうするんだ?」

「どうって、キョウちゃんの家に寝泊まり。」

「状況を分かってないらしい。幽霊だったら戸籍ももう無いし、生き返らせた俺が言うのも悪いんだが、戸籍の無い人間ってのは悲惨だぜ?」

「どうにかなるってレンちゃん。」

「おじさん名前は?」

レンが不安そうに尋ねてきた。

こうして俺は新たな火種を残して去っていく。

「アクマでもマジ!シャン!」


第十七章 黒猫。


コンビニで餌を貰ってた猫だった。突然だった。家に俺が帰ったらテーブルの上に居た。しかし妙だ。猫が何故ここに居るんだ?

「猫に聞いても分からないしな。」

「ゴッ殿が世話んなったな!」

猫が喋った!しかもヤンキーっぽい事言ってる。

「猫の恩返しならぬ、猫のお礼参りか?」

「おうよ!この俺がしばきにきた!」

「面白いなお前、名前は?」

「秘密だ。」

「ここまで堂々としといて、今更秘密って?」

「だから、名前が秘密って名前だ!」

「秘密か、なるほど。」

嫌な予感がした。魔術的な匂いのするもので、名前があるようで無いものは相当強い場合がある。この黒猫の言うお礼参りも案外ハッタリでは無さそうだが?

「ふん、察しがいいな、俺は魔法の世界では名が知れてる猫だ。まぁお前さんもかなり有名人だけどな、俺は全ての生き物の中で最強だから泣きを入れるなら今だぜ?」

流石に盛り過ぎじゃないだろうか?それとテレパシーは猫には通じるのか?小さな脳味噌ならテレパシー強攻撃使ったら即死しそうだが?

「ふん、察しがいいな、びびって声も出せないか?」

ヤバい。テレパシー通じてない。俺は秘密と友達になりたかった。テレパシーが垂れ流しで疲れているから、普通に会話出来るなら猫相手でも良い。

「ゴッ殿に詫び入れたらお前と友達になれる?」

「ん?いきなりなんだ?ビビり過ぎだろ?」

「俺お前と友達なる!」

「んだと?お礼参りに来てるのに調子狂う奴やな?帰るわ!」

「まあ、ゆっくりしてけ。」

「次ゴッ殿に何かしたら、地球史上最強の生き物が相手をする事になる事を覚えておけ!」


秘密と名乗って黒猫は瞬間視界から消えていった。テレポート系の能力だろう。案外ハッタリでは無いかもしれない。地球史上最強の生き物ってのは、よほど凶悪な能力なのだろう。


†††


次の日気になったので、コンビニに向かった。用事があるのはコンビニ裏の野良猫の餌場だ。

お目当ての黒猫が居て、ついてると思い近付いたら、急に居なくなった。またテレポートだ。

「お前何のつもりだ?」

虚空から声が聞こえる。どうやら木の上にテレポートした様だ。

「ゴッ殿がもうすぐ休憩に入る時間帯だ。大人しく立ち去れ。」

しかし、タイミング悪くゴッ殿が休憩に入った。コンビニ裏に直行してきた。

「なんだ。このにゃんころはナイト気取りのチキン野郎なん?」

「いや、違う。今から俺のカッコいいところ見せる!」


どうやら秘密と俺がタイマンを張る様な空気になってしまった。


秘密はテレポートして、俺の目の前に現れた。俺は猫如きとタイマン張るとか、情けないって思ってたんよ?ところがギッチョン!

「巨大化のカケラ発動!」

「な、でか!」

「なんなん?」


目の前に黒いライオンが居た。青い目をして、黒い鬣を風に靡かせてる。全長は30メートルほどある。まさかこれでテレポート攻撃ってオチは無いだろうな?

「グワァーヲン!」

咆哮と共にテレポートした?洒落にならないぞこれ?どこだ?どこから来る。

俺は咄嗟にコンクリート壁の角のところに走った。これならテレポートしてきても正面か上からだろうから、まだ衝撃波呪文が間に合う。

しかしいつまでも秘密は攻撃して来ない。やべぇトイレ行きたくなった。そう思った時背中から衝撃が走った。コンクリート壁の裏にテレポートした秘密が、そのまま体当たりしてきただけだ。俺は倒れて必死で立ち上がり、回復呪文を唱える。

「本当に最高なう!」

HPを回復した俺は秘密に突進して行ったところを、止められた。

「そこまで!この勝負は勝負無しで終わり!」

「ゴッ殿なんで止めるんだ?だってコイツはゴッ殿を本気で殺そうとしたんだぞ?」

「死んでないから、それに強い奴は男でも女でも猫でも好きだから、この勝負無し!」

「まぁ、助かったのか、ありがとう。」

「お前ついてるなこの街でゴッ殿に認められるってのは権力者とイコールなんだぜ?」

「猫の姿には戻るまで時間がかかるのか?」

秘密はテレポートしたかと思ったらその場に現れた時には猫に戻っていた。

正直骨の折れる相手だったので仲裁はありがたかった。


「ところで彼氏とかいるのゴッ殿?」

「居ないけど?なんで?」

「俺カッコ良かったやろ?付き合ってよ!」

猫なのに人間と付き合おうとか無謀な事を軽く言っている。

「ん、なんていうかー、無理。」

人脈出来て一言多かった俺が軽く口走った。

「彼女が居たりして?」

「もう、なんなん!?」

「ズバリ図星かよ?アクマでもマジ!シャン!」


こうしてゴッ殿、秘密、俺は五分のキョーダイ分にやり、コーラの飲み干した。


第十八章 カルト宗教団体マジシャンズ。


あれから数日が経ち、俺はカルト宗教団体マジシャンズメンバーと共に本を街で売り歩いていた。カルト宗教団体マジシャンズの経本である。『実践的魔導書』を売り捌いているのだ。製本版は一冊五千円と超強気なお値段だが、図書館に置いてからは、ちょっとは売れる様になっており、カルト宗教団体マジシャンズの活動資金にもなっている。

簡単な図式を軽く説明すると、実践的魔導書の購入イコールカルト宗教団体マジシャンズメンバー入りという事だ。

「魔導書はいらんかね?この世で最も珍しい実践的魔導書だよー」

街行く人々は皆華麗にスルーだ。その時である。ユルシちゃん母娘が通りかかったのだ。

「あ、おじさんだ!ユルシにも本見せて!」

「ちょっとユルシちゃん行くわよ!」

「ユルシちゃん、図書館にあるから探してみなさい。」

ユルシちゃんに会えたのは嬉しいが、いつも母親のおまけ付きでは、話すに話せない。もどかしい気持ちで一杯である。

「この本読んだらユルシもマジシャンになれるの?」

「そうだとも!アクマでもマジ!シャン!」

「ユルシちゃん!そうだ。手品師の本買ってあげる。この本は読んだらダメだかんね?」

「えー、おじさんの本がいい!」

どうやら母親は俺が本物の魔法使いである事を知ってしまったらしい。せめて意味が違うマジシャンになって欲しいのだろう。

「ユルシちゃんはマジシャンになりたいんでしょう?このおじさんの本はユルシちゃんにはまだ難しいからさ?ね?」

「う、うん……」

こうしてユルシちゃん母娘は立ち去ってしまった。マジシャンはマジシャンでもユルシちゃんは手品師を目指してしまうのかな?

カルト宗教団体マジシャンズのメンバー達が心配そうに声をかける。

「尊師様大丈夫ですか?」

「誰も損しない、誰も損しない、誰も尊士無い。アクマでもマジ!シャン!」

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