第26話―サードポイント―
もはや教室で今出川が僕に挨拶しても驚くクラスメイトはいなくなった。慣れてしまったのだろう。
ともかく、放課後まで時間はあるので事前にフラグのような出来事のアクションを起こさないといけない。正午になると僕から今出川の机に向かう。お弁当を持って席を立ち上がろうとする今出川に僕は深呼吸したあと表情を作る。
「い、今出川さん!!そぉ、そそ、その、もしよろしければご一緒に食事しませんか!」
僕の言葉に大きく反応したのは近くの生徒だ。「えっ?また告白?」「無理だろ」「いきなりかよ。ヤバイじゃん」など耳に傾けなくても聞こえる声量でひそひそと憶測をしていく。まったく、聞こえているの気づかないのかよ。
当の今出川は、僕のアクションにポカンとなって
「い、今出川さん?」
なかなかフリーズから抜け出さない今出川に僕は疑問を抱き心配そうなトーンで言う。
「あっ!うん、いいよ」
意図を理解したようで、微笑み返事をする。これが放課後の布石とするため。場所を変え校庭にあるベンチを選ぶ。ここなら他の人にも一緒にいることを目にしやすい。噂を自動的に広めさせる狙いがあった。
「今は人が見えないか。今出川、放課後の作戦に滞りはないか?」
「えっ?・・・あぁ、うん。忘れていないよ」
「忘れていたのかよ」
さすが今出川だよ。ここまで落胆すると怒りも起きない。なら普通に誘われたと思ったのだろうか。しかし意図を汲み取った頷くも見た。
「僕の誘いにはどう思ったんだ」
「えーと、何か企んでいるかなって思ったかな」
「そうか」
「えっ!?そうだけ。もう少し怒るとか激怒するとか」
「僕をなんだと思ったか理解したよ。日常茶飯事に怒っているわけないだろ」
「フッフフフ、それなんてギャグなのかな?」
「・・・お前なぁ」
僕は頭痛を覚え左手でこめかみに触れる。
「それよりもお前が提案した策に抜かり無く仲間は用意してくれている。アシスト部として当然の役目を果たしているから、部員でもない今出川はどんどん相談して頼ってくれもいいぞ」
発案者であり作戦の要でもある今出川にメンタルヘアーのような事をする必要性は大きいと思う。
心理学は軽く
「仁科くんって優しいよね」
「またこれは的外れな」
「ううん。全然、的外れじゃないよ。だって一緒に同行して解ったけど暴力とかもする悪質ナンパに助けようと向かって行って、好意を自分から壊すし。
なかなか出来ないよ」
今出川菫は決して僕の評価を下げようとしない、させない意思表示を感じた。まるで、優衣のような優しさを向けられたような・・・
一瞬とはいえ何を考えているんだ僕は。
「仁科くん?」
「なんでもない。今出川、放課後は近い・・・何か僕にすることはあるか」
「何も。あっ!やっぱりあります。仁科くん相談とか色々と話とかしたいですので・・・・・その、
た、たまにいいでので、こうして一緒に食事したいかな?」
「承諾した」
そう答えたのに、何故か今出川は照れていた顔から一変。頬を膨らませ不機嫌になる。っと思えば嬉しそうに笑った・・・情緒が不安定だな。
そして放課後が訪れた。このチャイムが犯行の開始でもあった。
だからこそ、今出川の作戦をさっさと終わらせパトロールせねば。
しかし焦らず今出川が声を掛けるまで待機する。下からちょっとした見渡す景色が見える窓際の一番後ろの席で待つこと3分後に教室が、ざわつく。
(ようやく来たか)
後ろの引き戸から今出川菫がいた。緊張感で右足と右手が一緒に前に出て僕の机前に向かう。
「その、仁科くん少しいいかな?」
告白作戦(命名したのは今出川)が始まる。今出川が告白して僕がそれを断る。学園一の美少女である今出川がフラれた後だと虎視眈々と狙う
「えっ?今出川さん・・・も、もちろんいいよ」
僕は腰を上げてそわそわと示す。
「その仁科くんに伝えたい事があるの・・・・・」
「・・・・・」
「・・・その、えぇーと。いい天気だね」
「そ、そうだね?」
それは朝か昼などにする話の振りだろうがぁ!もしかして慣れていないのか照れている?
「そ、その仁科くん好きです。
つ、つつじ、付き合ってください」
胸元を両手で握り上目遣いの涙目。なかなか迫真の演技だ。
「そ、その今出川さん・・・ごめん。僕にはもう好きな人がいるんだ」
「・・・あっ!そ、そうなんだ。
じゃあねぇ仁科くん」
言うが早いか今出川は早足で教室を出た。ここからは信綱がやって来て慰めるように周囲に見せて護衛する。離れた距離から晴幸と政治もついて護衛をする。
告白作戦の第一段階はクリアーした。しかし今出川の表情は演技とは思えないものだったなぁ。
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