第25話―計画性と欺瞞の告白―

色々とあった4月から5月上旬となり何か変わったと問われば何も変わらず行事や季節など意識を向くだけ。朝早く目覚めた僕は

洗面所で顔を洗う。蛇口に出る水の丁度いい冷たさにリラックスして昨日の汚れたとか落ちていくような心地になる。洗顔クリームを塗ってもう一度、洗う・・・これで

本当の意味で目覚めた!


「僕ならできる・・・強いは力の根源へとなる」


鏡に映る自分に対しては鼓舞して居間に向かい朝食とお弁当を作る。僕はキッチンの壁に貼られている難読英単語をときどきとチラッと暗記したりして調理をする。

唐揚げと卵焼きを両方で作りそれを終わると次の料理を作る。


(作ろうとキッチンに向かうときは億劫おっくうだったが実際にやると楽しんだよな。いつも)


優衣ゆいの部屋にあったレシピノートには山ほどあった。

料理が慣れた今ならどれほどすごい事なのか理解した。ノートには、お兄ちゃんが褒めてくれた!好きらしいなど記されていた。読んでいて心が温かくなり後から虚無感が溢れてきた。大事な妹を思いを馳せて料理を続ける。優衣が残してくれたレシピノートを全部、作っていきたい。


「ふわぁー、お兄ちゃんおはよう」


欠伸あくびをして眠たそうに入る瑠香るか。懐かれる前に戻ってほしいと思う。しかしいさかいを起こして犬猿の仲にするよりも現状を維持がベスト。小さく深呼吸して笑顔を作れるようにする。


「・・・ああ、おはよう。

まだ、眠たそうだな」


「うーん、うん。どうして朝早く学校に行かないといけないんだろう。そこは、不満」


「はい、はい、大変だね。

早く顔を洗って食事にしよう」


「はーい」


ゆっくりと洗面所に向かい、洗顔や髪をく間に、テーブルに目玉焼き、味噌汁、ごはんと並べて最後に定位置の近くにお弁当を置くと、狙ったようなタイミングで瑠香が満面な笑みで入ってくる。


「お兄ちゃんが作ったのはオーソドックスだね」


「オーソドックスが朝の雰囲気にいいからなぁ」


いつも疑問に思っているのは、瑠香がどうして僕を懐いたのか不思議でならなかった。折角せっかくだ理由を聞いてみよう。


「なぁ、瑠香」


「んっ。なに、お兄ちゃん?」


僕はイスに座り定位置の向かいに座る瑠香。


「どうして、僕にここまで懐いてくれたんだ」


「えっ、はあぁ、懐く?どう意味なの」


「ほら、僕と生活するようになってから素っ気ない態度で無視するし、露骨に警戒心を向けていたのに気になったんだよ」


憶測ならいくらでもあるが、やはり本人の口から聞いたほうが手っ取り早い。どんな応答するか。


「そ、そんなの言えるわけない。お兄ちゃんのデリカシー無し!」


「なんだか理不尽なんだけど」


どうして怒られたのか理解できずに苦笑を作って答える。


「そ、それよりも!お兄ちゃん彼女とか好きな人とかいないの?

も、もういい年だし」


強引に話題を変えた感はあったような気がしたが、質問する瑠香は

途中からあせりのような言動が垣間見たような気がした。


「彼女も好きな人は・・・・・いないな」


好きな人は優衣。この世から亡くなりもう僕の恋は終わった。二度と恋愛はしないと決意している。


「そ、そうなんだ・・・えへへ。

モテないお兄ちゃんのために、わたしが情けで偽デ、デートとかしてもいいのよ」


「キャラが変わってないか。

別にいいんだけど」


取り繕った表情と心に思っていない言葉を並べた朝食。登校が別の道まで一緒に外に出る。眩しいほどの快晴で群青色の

天井を見上げリラックスを図る。


「お兄ちゃん聞いてよ。わたしって学校ではモテモテだから色んな男子から告白のラインとかレアなラブレターももらうんだよ」


門をくぐり僕は見上げた顔を横の瑠香に向ける。


「へぇー、そうなのか。

モテってスゴイんだなぁ」


「どうして笑顔なのよ!イライラとかしないの?」


「イライラ?いや、妹が人気で兄としては誇り高いんだが?」


理想の兄として振る舞っていたが、不満を買うような発言をどこかでしたのだろうか。


「もう、いいよ・・・お兄ちゃん」


「えーと、ならいいけど?」


呆れさせたことになり、どうすれば正解だったのか分からず沈黙が生まれると考察するのだった。


別の投稿路になり、手を振ってお互い向かうべき学校へ歩む。

サラリーマンやOLが多かったが、学校に近づくにつれ僕と同じ制服の生徒が少しずつ見えるようになる。どうせ話すことなんて無いからどうでもいいんだが。案の定、今日も生徒会以外には、おはようと挨拶はなかった。


「おぉ、おはよう虎繁」


後ろから挨拶するのは、武士道が大好きの山本晴幸。ローファーから上履きに変えようと手を止めたのを再開する。


「今日だな」


「ああ、で広まったか?」


主語がない会話。僕の問いに晴幸は不敵に笑う。


「抜かりはない」


「ああ、助かる」


主語や省いた会話は周囲から分からないようにした言葉。

内容は今出川が放課後に2組で告白するをフェイクニュースとして広めた。嘘の情報とひと目で分かるように怪しく内容は、ハッキリしていない。半信半疑よりも下をしたのは人があまりにも集まり過ぎないようにだ。廊下を歩く虎繁と晴幸。


「それはそうと、このノンフィクション小説、面白いから読んでみるといい」


晴幸はカバンから取り出した本の表紙を見ると室町幕府らしい。

前に室町幕府の小説が流行した時期があったなぁ。


「ああ、ありがとう。晴幸が勧めるなら楽しみだな」


「そこは保証するぜ。くじ引き将軍で有名な足利義教あしかがよしのりとか詳しく書かれていたぞ」


「ああー、暴君で有名な将軍か。

室町幕府の最盛期が3代将軍の足利義満よしみつと言われているけど一部の学者や歴史好きには最盛期が7代の義教とか分かれてあるよなぁ。

晴幸はどっちだ?」


それがしは義教だな。お主は」


「僕も義教だ」


それから昔の僕を知る晴幸と歴史の話で花を咲かせ教室に入る。

僕と晴幸が入ると何人かが視線を向けたが落胆して視線を戻す。

信綱はウインクして挨拶の言葉の代わりにする。


「おはよう仁科くん。空は青の快晴だね」


一部だけ除いて今出川は満面な笑みで挨拶する。今日はとくに明るい。僕らしく、しどろもどろに挨拶を返そう。


「お、おはよう。今出川さん!

ヤバイ、天気ですよね。本当にヤバイぐらいで」


そんな挨拶に今出川と晴幸が思わずフッと笑った。

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