第22話―セカンドポイント―

振られた相手に告白すれば上手く行く可能性があると心理的な戦略を利用すると意味だろう。今出川の提案に。


「だが断る!」


「だ、だよね。荒唐無稽だって分かっていたから・・・変な事を言ってごめんね仁科くん」


せっかく考えた提案を却下され怒るか落ち込むかと思っていたが

悲しげに、儚く、無理をした。

拙い笑みだった・・・想定外な反応に僕は一瞬だけ動揺したことに気づき目を閉じ腕を組んで考えているスタイルになる。


「まだ続くはある今出川、適任は僕じゃないことだ」


「適任じゃない?」


鸚鵡返おうむがえしで呟いた今出川は顔を上げると涙ぐんで上目遣いで溌剌はつらつとした態度が今は影を潜め憂鬱ゆううつになっていた。


「いやぁー、適任だと思うけどなあ俺は」


朗らかな笑みをする政治まさはるはいつもと同じでいつもと違った。声色こわいろには真摯的を僕は感じた。政治がそんな真剣な声に気になる所だが、そのうち訊ねてみよう。


「適任はヒエラルキーをこだわる愚者に従い信綱の方が波紋はもんを呼べるはずだ」


「さ、真田くんと・・・」


心なしか残念そうに見える。


「んっ?何か不服か。信綱なら容姿は優れているだろうし、コミュ力や異性の人気は高い。

信綱となら成功するはずだ」


「そ、そうだよね。が、頑張るよ私!」


両手を拳にして振りながら答える。そこはかとなく自棄になっている。


「・・・どんだけフラグイベントを折れば気が済むんだよ虎繁」


ハァー、っと呆れて呟く政治。

フラグイベントの意味は知っているが、どの会話を指しているのか考察するが浮かんでこなかった。

窓から放つ黄昏色に下を見てみると、部活に励む野球部とサッカー部の掛け声や声援をBGMに流れていく。こう眺めていると平和な放課後だと錯覚させられる。

彼ら彼女らも裏では悩み嘆き憤りなどの負で溢れている。

光があれば闇がある。


「仁科くん!」


隣に歩く今出川は、落ち着きがなかった。こういう形容詞はもじもじが適切だろうか。


「どうした?」


「や、やっぱりプロポーズ作戦だけど真田くんじゃなくて仁科くんが適任がいいと思うの」


「どうしてだ?」


「ど、どうしてて・・・そ、そうだ。噂が流れているから!」


「・・・・・なるほど。解った」


「わ、わかった?」


このスパイ疑惑のある今出川は疑問だと鸚鵡返しするのが多い。


「今後、僕達の関係を変に勘繰りするやからの認識を変えるにはいいかもしれない。

そうすれば、今出川が一方的に話をするのも・・・いいかもしれないが」


「えっ、えーと・・・うん!そうなの。すこぶる頭いいよね仁科くんは」


あせって何度も頷く今出川を横目で見る。もしかしてこの流れにしようと誘導したかもしれない。変な噂を断ってば積極的に話を掛けても周囲は不思議にも思わず前よりも諜報ちょうほう活動しやすくなる。

まぁ、こちらも利用すればいい話だ。


「えへへ、やった!」


「あまり表を出さない方がいいじゃないか」


スパイならポーカーフェイスを貫けなければならないだろう。そこは生徒だから高度なコントロールが出来ないだろうけど。


「えっ・・・わ、私そんなに顔に出ていた?」


「飛び跳ねるような笑顔をすればなぁ」


「えぇーーー!!?ち、違うよ。嬉しくなんてあるけど、とにかく違うから!!」


「フッ、分かった。僕の勘違いだな」


「その笑顔、絶対に信じていないよね」


今出川のポンコツぶりに和む自分がいんでいた事に自己嫌悪になる。

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