第21話―あの頃を思いを馳せて―

僕は自室でスマホをタップして画面を見てイヤホンに耳を傾ける。


『お、お兄ちゃんスマホで撮られると少し恥ずかしいのだけど』


実妹の優衣が照れ笑いを浮かべ振り返る。今になって動画を撮っていて良かったと思う。


『い、いや・・・えーと、だな。

風景と優衣がこれ以上ないほどマッチして写真を撮るよりも動きも収めたいと思ったんだ』


『えっ?そ、そうなんだ。へぇー』


『優衣?やっぱり嫌だったよなぁ。今から消して――』


『いやじゃないよ!むしろ残してほしいかな。・・・いつか思い出として笑って一緒に見てみたいから』


『思い出か。そうだな』


『うん。そうだよ』


『よし!そうと決まれば、春夏秋冬の映えるだろう季節感のある場所で優衣を撮って撮りまくるぞ!』


『あ、あはは。お兄ちゃんシスコンすぎるよ』


呆れと困りながら明るい笑みをする優衣。お互い中学一年だった未来が明るいと歌川か頃の動画を色んな感情になりながら観た。


(もう優衣とは思い出を語ることは二度と訪れない・・・どうしてこんな事に)


やるせない気持ちになりがらも次の動画に再生する。もう戻ってこない最愛の人を過去の容貌を見て荒んだ心は浄化する同時に恋を抱いていた心は苦しく無声で悲鳴を上げるのだった。


「・・・・・」


数日後が経過する。変わらぬ喧騒と絵を書きたくなるであろう青空を見上げながら学校を向かう。お馴染みの生徒会メンバーに挨拶をすませ教室へ前の引き戸をくぐる。ちなみに誰かが開けてオープンになっている。


(遅めに登校したが誰にも挨拶はしないか・・・いや、奴がいるか)


「おはよう仁科くん」


誤解を招きそうな満面な笑みでおはようと言うのは今出川だ。


「おはよう今出川さん。そ、その・・・・・何でもないです」


身の程知らずにもヒエラルキー上位にいる今出川に世間話を敢行した愚かなぼっちを振る舞えた事に僕は満足度で嬉しかった。

少々、喜ぶ点がズレているけど。否、かなりというべきか。


「ねぇ、ねぇ。何を言おうとしたの?」


椅子に腰を下ろすと今出川は机の前で屈んで顔を覗き尋ねる。あれほど人がいる場所には積極的に話しかける。


「な、なんでもないよ今出川さん」


「えへへ、そうなのかな。

ねぇ、ねぇ本当は何かあるよね」


あっ、これ知っているぞ。俗に言う、ウザかわという属性だ。けど、その属性って後輩なのが多いんだけど。そんなくだらないことよりも今出川が面白がっている事が苛立つ。教室では弱々しく振る舞っているのを楽しんでいるんだ。


「ほ、本当に何もないです。

その失礼します!!」


緊張状態を装って教室を出る。


「あっ、待って。私も行くから」


追ってこなくても。仕方なくひとけが無い踊り場で今出川に会話をせざるえなくなった。


「なんのつもりだ今出川」


「提案があるの」


尋ねると返ってきた言葉が提案。

あのウザかわに接したのは場所を変えていいアイデアを伝えるためか?


「提案か。聞かせてもらおう」


腕を組み聞く体制になると今出川は面接試験に励む受験生のような緊張の面持ちのようにガチガチとなっていた。


「そ、その・・・今日はいい天気ですね」


「そうだな」


「よ、よかったら今日も昼食しない?」


「断る!」


「・・・・・」


「・・・・・」


今出川が、今にも泣き出しそうな目で見てくる。かわいいアピールしても通じる訳がないのをそろそろ学習するべきだと思う。沈黙と嗚咽まで時間が掛からない様子に。


「ハァー、わかったよ。一緒に食べてやるから悲しい顔はするな」


「うん!えへへ悲しい顔は迫真の演技だよ。嘘なきだからねぇ」


(軽くハンカチで拭いたらアウトだろ。普段は嘘をついていないんだろうなぁ)


「・・・確認だが、これが提案じゃないだろうなぁ」


「も、もちろんだよ。あっはは」


頬を赤らめて顕著に戸惑い始める。僕はジト目を作って無言の圧力攻撃を仕掛けることにした。


「・・・・・」


「うっ、そう怒らないでよ」


「普通に誘えばよかっただろう。急にどうしたんだ。どんどん情緒不安定に進んでいるぞ」


「それ仁科くんにだけは言われたくは無いかな!」


的はずれな発言したつもり無いのだが目の前スパイ疑惑ある今出川は頬を膨らませ憤激する。


「はぁー。百歩譲ってそうだとして、慌てふためく?」


「あ、慌てふためいていない!!」


「おーい、今日も痴話喧嘩か」


一寸も触れていない発言して階段を駆け上がるは仲間の政治だ。


「ち、違うよ。大事な話があってケンカなんかしていないよ」


かあぁーと頬を赤くどんどん染まっていき言葉もなんだか逸らそうと感じるのは僕だけだろうか。


「あはは、冗談だって今出川。

えーと居ないほうがいい?」


軽快な言葉を翻弄される今出川。

尾田政治は指を自分の顔に向けて明るくそう言った。


「う、ううん。私は気にしないけど仁科くんは?」


「好きにしろ」


「よし、告白をじっくり観察させてもらう!」


「ち、ちぃぃがうよ!」


生真面目な性分である今出川は律儀に政治の冗談を返事する。

疲れるのによくやることだ。その点には尊敬する。本人は絶対に言わぬが。


「コホン。えぇーー、その・・・提案の事なんだけど」


「提案?」


傍らにいる政治を今度はスルー。

いや答えれる余裕がないと言うべきか。今出川は顔を下げて上目遣いになる。


「仁科くん。放課後に私とデートしてくれない!」


「デートだと」


「うわぁー、マジか!本当に告白だったよ」


女が3人でかしましいよりも定評がある政治は口を大きく開いて驚愕した。僕は嘆息して言葉を選んで発する。


「どういうことだ?」


「め、目立って仁科くんとデートするの。そこから私が告白して仁科くんが振るの。そうしたら好機だと思って話しかけてくると思うの」


これが今出川の提案の内用であった。

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