第20話ファーストポイント

「今出川が手に入れた情報のおかげで、これがただのナンパの類じゃないと推測しているが・・・」


コミュ力が高い今出川により一年のほとんどの女子が声を掛けられたことが解った。

一クラスほとんどそうらしい。他のクラスも似た悪質的な告白やナンパにやられている可能性は高い。

真実というパズルがわずかだけど確実に近づいているはず。


「見えなかったことが少しずつ分かってきた。なら次に移すのは仮説を立て真実に近づけることだ。眉唾まゆつばな物でも姿や行動を見えたら調べるのも格段にしやすくなる。だから

僕の見解を述べる」


「ああ」


少し軽快なトークを封じて厳かな表情をする晴幸は腕を組み短く返事。


「うん」


今出川も両方の手を拳にし膝を曲げ可愛らしい仕草しぐさをした。信綱と政治も頷く。

なんだか確認みたいになったんだが、まぁいいか。


「何者かがアジらしたと窺える。短い間にそう告白やナンパがあるわけがない。だから僕の結論は・・・首謀者がいる」


「これをくわだてた奴がいるなら《つじつま》が合うが何か釈然しゃくぜんとしない気がする?」


晴幸は一度は納得するが、違和感があるようだ。それは僕も一緒で目的が見えない。


「まぁ、仮説だからなぁ」


「あの、アジらせるって何?」


挙手する政治に、僕は日が傾く空を仰ぐ。


「アジテーションの略称だよ」


「おぉー、なるほどなぁ。ありがとう」


政治の疑問を嫌な顔をしないどころか屈託の無く笑顔で今出川は答えた。分からなら恥を気にせずが心掛けているが、普段の行いが悪戯いたずらばかりでイラッとはした。


「僕以外の推理や当てずっぽうでも構わない。どんどん言ってくれ」


「当てずっぽうだけど――」


黙って立っていた真田信綱が手を上げて言うべきか躊躇ためらうがそれは秒ほど一瞬のみ。


「スクールカーストの高い連中がライングループで遊び感覚としてやっている線は?」


「確かに。その線は十分にあるなぁ。信綱、悪いがこの手は僕達には荷が重たいから任せていいか?」


「ああ、了解だ虎繁くん」


ショートボブ黒髪が似合う眉目秀麗の信綱はさわやかに返事する。


「あっ、でしたら私にも協力ができる。上級生なら何人か友達はいますし」


「お、おぅ。さすが今出川ヒエラルキー」


「今出川ヒエラルキー!?

わ、私の名前をつけると急にバカみたいに聞こえるけど仁科くん」


「安心しろ。ヒエラルキー最上級って意味だ」


「むぅー、最近の仁科くんって

私をからかい過ぎじゃない」


頬をふうせんのように膨らみ上目遣いで睨んでくる。何を機嫌を損ねたかは分からぬが涙目だと

強気な態度で出られない。言葉を窮した僕はと今出川は目をまじまじと見つめる形となり何故か逸らすと負けみたいに思えて晴幸も静かになる。


「こほん、次はそれがしの推理ターンだ」


咳払いして晴幸は閑話休題させる。僕は視線を晴幸に向けると、隣の今出川は安堵と悔いの2つの混ぜった息をした。晴幸は指を立てながら揺らす。


「ほぼ毎日とあるのは不可思議だ。想いを伝えるのはなかなか出来るものじゃない。なら、実行したのは上の指示されたなら

容易に告白など出来ると推測しているが、どう思う?」


行動原理がそもそも重たくなったなら、実行するのも難易度が低いなら頻繁に目撃したのは納得できる。


「うーん、命令いるってパシリみたいな?」


疑問符を浮かべる政治の問いに晴幸は首肯する。


「ああ、その認識で合っている」


「じゃあ普通なら、どんな好みとか趣味とか聞き出すようにすればいいんじゃない?」


「そうだな。まさか政治に気づかせるとは」


「なんだと、俺もしっかり考えます!」


その後も次々と組み立てた推理を

がむしゃらに説明や欠点を指摘されある程度は見えてきた。

首謀者がいる可能性とSNSなどの集団であること。気づけば日が沈み夜のとばりが降りる。


「あの、もしかするとかわいい女の子だけを狙っているとかは?」


今出川は鼻を鳴らして名案だと胸を張って言った。


「今日は以上だ。みんなお疲れ」


僕は両手を暗闇の上に伸びをして歩いていく。続くように晴幸、信綱、政治は後ろに歩いていく。


「ちょ、ちょっと待ってよー」


今出川は放置されたことに耐え切れずに追いかけてきた。

今日の黄昏会議の課題を上げた複雑怪奇なものは少しずつ、それなりに進んだはずだ。挙げられたいくつかもの中で高い確率順で決行することに意見がそろった。

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