第19話ビーター風景

「お前が聞いた女子には告白した者にほとんどが何らかのトラブルや問題点がある者があることか」


僕は階段を登りながら今出川いまでがわが訪ねて集めた情報を耳を傾け聞いた。確認の意味で得た情報を言葉を発し間違いはないかを。


「そうみたい。上級生だから断るのを失礼だって事で、少しだけ試しの付き合いとかしている人もいるみたいだけど・・・ヒドイ目に合ったみたいなの」


なるほどなぁ。たちの悪い奴が告白していたのは予想していたが、ほぼ確定だ。そして、そのヒドイ目に合ったのは猥褻わいせつ行為の可能性はある。その場合、警察などで対処を検討もせねばならない。

ともかく可及的に速やかな解決は大事だ。それに焦燥感しょうそうかんに駆られないよう一人で決断はしないことも気をつけないと。今出川を屋上に案内するがいつもの無駄な明るい奴が鳴りを潜めると調子が狂う。


「今出川のおかげでピースが少しずつ揃えてきている。だから、なんだ、感謝する」


「ぇ・・・・・」


足音がポツンと止まり僕はおどり場で足を止め振り返ると口をあんぐりと開き瞬き以外しないほど驚いていた。


「なんだ?どうした、何か変な事を僕は口走ったのか」


「あっ、ううん。そうじゃないの・・・えーと、急に褒められたから驚いて」


「どんな奴でもそれぐらいはあるだろ。何を大袈裟おおげさな」


その行動力に感嘆すればフリーズしたと分かると足を止めるのもバカバカしくなり階段に足を踏む。


「ごめん。だって仁科くんって、

役に立った、そうかだけで返す事が多いから」


「そうか。閑話休題かんわきゅうだいだ、今出川は、これをただのナンパや告白だと思うか」


「ハァー、またそうか・・・そうだね。私はそうだと思うけど、希薄きはくと感じたかな?」


人差し指をおとがいにあて思ったことを言葉した。


「希薄?ナンパじゃなくどこか誘導ゆうどうことか?」


「それは分からないかな。

けど前に告白した先輩は話すのはたぶん初めて。そして好意的だったけど必ず成功するって自信に満ち溢れていたのを感じたの」


「必ず成功?自信に満ち溢れてていた・・・・・」


今出川に告白したのは如月蒼汰きさらぎそうたの事だろう。ピアスや茶髪のいかにも典型的な軽薄なリア充。


「あはは、でも私の勘違いかもしれないから忘れて」


「・・・果たしてそうか。何か引っかかる」


「引っかかる?」


「もし絶対的な自信があれば告白やナンパも多いのは分かるが、

複数での現場で目撃した事は説明がつかない。一体なにが?」


告白が絶対的に成功と分かって複数で行く意味はあったのか。

いや、親友でも邪魔になるだそうし行くとしても遠巻きで見守るなら分かる。疑問が真実に近づき新たな謎が浮上。


「なんだか仁科くんって、カッコいいね」


「あっ?カッコいいだぁ。何を言っているんだよ」


「だ、だって誰かのためにここまで真剣に悩むなんて・・・カッコいいじゃない・・・えへへ」


いや照れ笑いするぐらいならやめろ。思案を巡らしてたが、集中力が途切れた。まぁ、深く考えても答えに辿り着かなかったし晴幸達の意見も必要だ。屋上に繋ぐドアをくぐればメンバーはすでに集まっていた。


「おぉー!虎繁とらしげが彼女と来たぞ」


政治まさはるいじってきた。


「か、彼女!?ち、ちがうよ。まだ彼女じゃないよ」


「政治そんなこと、あるわけないだろ。くだらないぞ」


「・・・・・だ、だよね」


今出川がションと落ち込む伏せたのはよく分からんが今に始まったことではない。


「うわぁー、えげつないなぁ」


爽やかリア充の信綱が、引きつった笑顔して呆れ呟く。


「仕方あるまい。虎繁はそういう奴だからなぁ」


腕を組んだ晴幸が苦笑して信綱にそう答える。なんだか集中砲火を浴びた気持ちなんだが。

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