第18話―見えざる闇―

群青色の空を仰ぎ見て僕はため息をした。いつまでも歩行しながら見上げるのは危険と思い顔を下げて前に向く。そしてもう一度とため息をこぼす。ハァー、どうしてこうなったのか。


「お兄ちゃん、あの今出川さんの事を考えていたよね」


右隣に瑠香がじぃー睨んでいる。

どうして途中まで登校するか理由を訪ねたらこうだ。「き、気分よ!」と半ギレである。


「考えていないよ」


正直ニセ妹とは即刻と離れて一人になりたいのだがショピングで瑠香と周っていると今出川とばったりと合った。あの一件の以降から瑠香は何かを理由を述べては一緒にいようとする。


「嘘!絶対に考えていたよ。

上の空って感じだった、まるで恋煩こいわずらいって感だった!」《ルビを入力…》


「ぼっちの僕がモテるわけないだろ。瑠香の考えすぎだよ」


「わたしだってそう思っていたよ。・・・・・今出川さんのあの態度を見なかったら」


「えっ?なんて言ったんだ」


「お兄ちゃんは、わたし以外の女の子に付き合ったら駄目なんだから!」


「えぇー。いや付き合う人がいないからいいんだけど」


瑠香と頭が痛くなるような取り留めの無い会話を続く羽目となる。

お互い別の投稿路になり瑠香は「絶対に守ってよね!」と再三と言われた。ツッコミどころが多いがともなく一人だ。


これで心置きなく暗記カードで勉強ができる。ポケットから出して英検2級レベルなどのスペルを覚えていく。歩行中で危ないので一瞬だけ見て頭で架空のペンで刹那で目に入れたアルファベットを書いていく。合っているかも繰り返して次のスペルにめくる。


だいたい50を覚えたほどで校門が見える。門をくぐり生徒会の執行部(仮)が生徒をチェックしている。風紀を乱した者が何人か。

一年をナンパした何人かはいた。ともかく生徒会に会釈され僕も会釈で返す。筆頭の土方為次郎ひじかたためじろうはいないか。さすがに朝なら悪質なナンパはないはずだろうと思い教室に向かう。放課後は巡回して色々と噂があるが些細ささいなもので目が怖いとか遅く廊下を歩いていたなどその程度。席に向かおうと・・・したが戻るか。


「ちょ、ちょっと待って仁科くん!」


「今出川さん!?」


逃走を図ろうとしたが失敗。

僕の席に座って何をしているんだと目で訴える。矛盾した行動した僕に今出川は困惑。


「そ、その・・・仁科くんって教室を出るの早いですので、ここで待っていたら嫌でも会えると思って」


「そ、そうですか」


またそれか。このスパイはどうしても情報収集がしたいようだな。

傍若無人ぶりに逆らわずに僕は放課後には一緒に帰宅すると約束した。


「えへへ」


「ただ、条件がある」


「じょ、条件?」


「実は生徒会に呼ばれていて

遅れるかもしれないけど、それでいいなら」


「うん。もちろんだよ。教室で待っているね」


「・・・・・うん、分かったよ」


反応を試してみようと思ったが迷いなく教室で待つだと。

いつ来るか分からないのに。

放課後へと時刻となり教諭の話が終わると席を立ち上がり今出川さんの席の前へ立つ。


「へっ、仁科くん?」


「それじゃあ行きましょうか」


ざわっとする教室の空気。それはそうだろうな、学園一の美少女を誘うなんてざわつかない方がおかしい。今出川は何を言われたか分からず呆然と見つめている。


「今出川さん来ないなら先に行きますね」


「ふぇ、ま、待ってよ」


廊下をゆっくりと出ると今出川は隣に小走りで来た。


「その生徒会に私もお邪魔していいの?」


「それは寸劇すんげきだ。今出川が一緒になら護衛もできて情報収集もできる。面倒になるが構わないか?」


一年の女子の間では上級生に告白されたやヒドイことされたと被害もある。ケアは生徒会などに任せよう。とくにターゲットにされる可能性が高いのは学園一の肩書きを持つ今出川だ。近くに入れば守ることもできる。まずは本人の意思を尊重するが。


「はい、構いませんよ。

仁科くん何をするの?」


にこやかな笑顔だ。忌々しく思う僕に向けるべきではないと、フッとそう思ったが隅っこにおいやる。


「まずは廊下を歩き回って話を盗み聞きと怪しい者がいないか視線を巡らす。かなり疲れるから帰ってもいいぞ」


「帰らないから。つまりひたすら歩いて色んな話を尋ねるのと

強引な人がいないか探すことでいいのかな?」


「だいたいはそれで合っている。成果が無かったら思いつく限り探しつくすことになるが」


「でしたら普通に尋ねたら?

そうすれば早いと思うよ」


人差し指を立て揺らして浮かべた案を述べる。


「フン、残念だな。僕はコミュ障なんだよ」


「コミュ障ってなに?」


首を傾げる今出川。


「まぁ、コミュニケーションが欠如している人を指すんだ。

またそれに近い人にも言う」


「そうなんですね。でしたら仁科くんの代わりに訊いてきます」


今出川はそう言うと1年2組の教室に入っていた。今出川は気軽にギャルギャルとしたグループに話を掛けてきた。ギャルギャルさん達は今出川に驚いて応えている。

くそっ!今出川が入ってから熱狂的な声援が五月蝿うるさいなぁ。アイドルのステージではないのに。


「あっ、すみません」


それでも全員が歓迎ムードではなく廊下に出ようとする生徒はいる。僕は後ろドアに佇んでいて道を開けて頭を下げる。

邪魔にならないよう教室を断りもなく入り廊下側の窓際の壁にもたれる。どうやら聞きたいことは終わり今出川は頭を下げる。


「親切に教えてくれて

ありがとうございます」


「あっ、いえ・・・別に迷惑なんかじゃ」


この距離感だと聞こえた。

今出川が頭を下げてお礼をするとギャル達は慣れない動きで頭を下げる。そのあと今出川はリア充な女子に声を掛けていく。

まさか戦力外と考えていた今出川が思いもせず協力してくれるとは。僕は廊下に行き喧騒な場所で

情報でも集めるとしよう。

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