第15話ルカデート2

僕と瑠香には恋人として見えているならこれ以上ない屈辱だ。


「お兄ちゃん!」


左腕を抱きつく瑠香。今すぐに引き剥がした衝動に駆られそうになるが顔に表れる前に我慢だ。


「なんだい瑠香?」


「わたしと一緒で楽しい」


楽しいわけがない。


「ああ、楽しいよ。どうしてそんなことを」


「えーと・・・うん、どうしてだろう。お兄ちゃんは楽しいにしているのに、そう思えてならないっていうか」


「はは、なんだそれ」


なに!?どこで勘づくかせるような事をしたのか。検討もつかない。ショピングモールの3階に飲食店など見て歩いて退屈な会話に襤褸ぼろが出た覚えはないはず。


「あはは、わたし気のせいだから気にしない!お兄ちゃんはすぐ深刻そうにするんだから」


「あ、ああ。そうだな。それよりも、こうして僕なんかに歩くなんて楽しいのか?」


裏はなく表しかない疑問を瑠香は

上目遣いで一般的に言う可愛げに恨めしそうにする。


「お、お兄ちゃんが一緒だから

こうしているのが、楽しいのぉ!」


甘えと怒りを対となる感情が一体となった表情。さて、どう反応して返してやるか。思案する悠長はないので即断即決せねば。

楽しいと言うか?それとも、

かわいいと褒めてとりあえず頭をなでるか。


「そうか、それは可愛い瑠香の頼みなら光栄だね」


「そうよ。光栄に思いなさい」


上半身を反りそうな態度だな。

変に高飛車にもなるからなぁコイツは。


「はは。僕は楽しい。今日は誘ってくれて、ありがとうなぁ瑠香」


ここで、僕は瑠香の頭を上を優しくでる。こんな偽の妹に撫でることに優衣に対し強い罪を意識する。けど、内心はこの妹には本当の笑みをこぼしたことなどない。だから、許してほしい。


「ふぇ!?な、なにをしぃるのよぉ!!」


もしセリフだけの文章だけなら分からないだろうが、声音こわねは少踊りしそうな歓喜な高さ。表情は雪化粧ゆきげしょうごとくな顔をあわい赤色になっていく。して表情は困惑の裏に喜んでいるような印象。

あまりにも分かりやすい反応だ。


「なにって可愛い瑠香を褒めているんだが」


「ア、アンタねぇ・・・もういいわ。す、好きにしたら・・お兄ちゃん」


「そうする」


なるべく嫌がらない程度に照れさせ続けさせて瑠香を大人しくさせてもらう。その結果はすぐにもたらすことになる。映画を見ようと、ボソッと言った瑠香に賛成して4階に上がる。


(最近は行っていなかったが、色んなアニメの映画があるんだなぁ)


壁に貼られているポスター。

過去と決別して見なくなったが、有名な監督や好きな声優さんを見ると興味が湧いてくる。

もし、優衣といれば一緒に観ていたのだろうか・・・。


「お待たせ、お兄ちゃん。

少し早いけど中に入っ・・・て・・・・・お兄ちゃんどうしたの?」


花を摘みにいくとトイレに行った瑠香がハンカチで手を拭きながら戻ってきた。


「な、なにを?」


「さっきまで、見たことないほど苦しいそうで・・・悲しそうな顔をしていたよ」


チッ、油断したとはいえ顔に出てしまったか。どう切り抜けるか。

しかし僕は瑠香を見て憤りを覚えた。

瑠香は、まるで自分の事のように悲痛そうにしていたからだ。


(おまえに何が、分かるんだ。

勝手に知ったような態度をしやがって)


語る価値はないんだよ。僕自身だってそうなんだから。


「それは・・気のせいだろ。

瑠香そろそろ行こう」


「・・・お兄ちゃん。わたし義理の妹だけど、今はお兄ちゃんだって思っているよ。だから、わたしに相談とか愚痴ぐちるのもいいんだよ」


そうかよ。僕は義理の妹さえ思っていないがなぁ。一人だけそう思うなんて滑稽こっけいだよ。まったく、滑稽だよ今の僕は露悪ろあく的で滑稽だ。


「あれ?そこにいるのって仁科にしなくん?」


破滅的な欲動よくどうに支配されそうになる一歩手前で背後から迷惑で勝手についてくる奴の声を。


「はい?」


前の名字である武田瑠香は同じ名字の仁科に反応して返事して硬直する。赤の他人か長い人生で2度と出会えないだろう美少女が原因かは知らないし興味もないが、

もうその反応で奴の可能性が上がった。違ってほしいと願いながら後ろへ振り返ると・・・今出川菫だった。


「ハァー」


「あはは、露骨ろこつにため息をしますか。仁科くんらしいけど、失礼じゃないかな?」


何が楽しいのか楽しそうに笑みを浮かべる今出川に、暴言を吐きそうになるが・・・口に出しかける言の葉は、なんとかみとどまる。瑠香がいる中にいる僕を振る舞わないと。


「や・・・やぁ、今出川さん。

奇遇だね。今日は一人で」


教室でも素でも見せていない対応に今出川は当惑する。


「え、えーと何か変な物でも食べた?」


本気で心配しないでもらいたい。

ほら、瑠香がいるんだ。気づいてくれないかな?


「食べていない・・・ません」


「・・・あー、まさか仁科くんってデートでもそうしているの?」


次の問には大きな変化が起きた。

笑顔は変わっていない。されど表面上には変化をしていないだろう・・・普通の人なら。今出川の目には少し笑っていない。不満なんだろうっと直感でそう思った。

それと、右足を踏むな痛い!


「・・・ふーん、仲がいいんだね。

この人は誰なの?」


くっ、瑠香が明らかに彼女とかそんな疑いの眼差しを向けている。

甲斐性かいしょうがない振る舞いしたから疑われないと思ったんだがなぁ。


「えーと、この人は同級生の今出川・・・さん。ちなみに恋人でもお付き合いもしていない。

僕には恐れが多いからね」


「だよね。あのお兄ちゃんが、あんな飛びきりな美少女と知り合いな・・・ん・・・て・・・・・」


どうして言葉が途切れていたのか、その視線に向くと今出川が

顔を赤くなっていた。

ま、まさかなぁ。


「はぅ、まだその関係じゃない

今出川菫いまでがわすみれと言います」


僕の目と合うと、ぎこちない動きする今出川は瑠香へ向き名前を律儀に名乗り深々と頭を下げる。


「これは、ご丁寧にどうも。

わたしはお兄ちゃんの妹の

瑠香と言います」


その礼節に瑠香は挨拶と真似って頭を深く下げる。今出川は、素早く頭を上げると、僕と瑠香の交互を見る。比較しているのか?


「えっ?い、妹さんなの!

仁科くんの妹さんなんですね」


「えっ、あっはい妹です」


今出川の明るくなった問いに瑠香は戸惑いながらも返事する。

今出川は、困惑中の瑠香の右手を両手でつかむとブンブンと握手しての激しく振る。


「よかったら一緒に笑顔を観ませんか?」


「え?今はお兄ちゃんと・・・」


「だ、だめですか?」


今出川マジか。おまえは今日、知り合った女の子に上目遣いと涙目を行使するのか!?恥ずかしくないのか。


「ううーん、いいですよ」


「やった!」


やった!じゃない。バカなのか、おまえは。違った手遅れだったんだな。


「その代わり・・・お兄ちゃんの事を教えてください」


瑠香、条件付きで同行を画策したのか。将来は権謀術数を駆使して謀略ぼうりゃくを巡らす政治バトルでも繰り広げそうだ。


「はい、構いませんよ」


僕が構うんだよ!・・・・・ハァ、

どうしてこうなったのやら。

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