第14話ルカデート

休日を嫌いな人は世界で何人いるか。少なくとも僕はそうだ。偽りの妹である瑠香るかとテーブルを挟んで朝食を食べながらニュースを見て軽い議論を交える。

表では侮蔑な表情をしないように顔の筋肉をいつも以上に使う。


「教諭が犯罪に走るのって、

周囲から聖職として扱われなかったから原因の一つと思うんだ」


「お兄ちゃんの論には一理はあるけど、性根しょうねがクズだったと思う」


教諭としての矜持きょうじが無くなりただの仕事としてなってきていると過去の人が言っていた。今と昔を照らし合わせて

そう考えに至ったのだが、瑠香は

思考放棄した空虚な理論を恥ずかしげもなく言った。


「はは、そうかもしれないね」


知能が低い猿には分かるはずないか。瑠香はウインナーを入れて咀嚼しながら僕の言葉を聞いて

えへんと答える。実際に言う奴は初めてだ。


「お兄ちゃん。食べ終わったら

わたしの買い物をつ、付き合いなさいよ!」


「妹から命令口調で買い物を付き合えか・・・両親が再婚した当初は主君の仇を見るような目だった

瑠香が成長したなぁ」


当たり障りのないよつ接して、ここまで懐かれたのだから理解できん。嫌われる言葉もして、なるべく話さないようしてだ。


「そ、それは悪かったて。

知らない男の人と・・・や、屋根の下なんだよ!怖いし警戒しない方が無理なんだから!!」


確かにそうだ。精一杯せいいっぱいに強気でいたが足はプルプルと震えていたことに。

今や近寄って来てはなはだ迷惑だが。


「あはは、分かっているよ瑠香」


「うぅ〜、お兄ちゃんのいじわる。罰として嫌って言うほど付き合いなさいよ!」


どういう理屈だそれは。とは言えず苦笑して頷いてみせる。


「それじゃあ、食べ終えたら部屋に戻って準備ことで。

それで家の外に待つことで」


決定事項となると、まるで用意した言の葉をすらすらと説明していく。


「ハァー、了解」


僕の中では赤の他人と思っている妹に買い物を付き合うのは拷問に近い。お互い部屋に戻り準備をする。ラフな格好で外に出ると気合の入った瑠香がいた。

玄関の前で、顔をニパッと花が照れるだろう笑みを浮かべた。


「・・・・・」


言葉を失うようにリアクションする僕。


「お、お兄ちゃん?」


狙い通りに不安そうに尋ねてきた瑠香。ここで僕はハッとして驚きあせり戸惑う。


「そ、その、すごく可愛くて動けなくなっていたよ」


散々さんざんと今出川といたら軽薄な言葉を掛けるやからを参考にして使う。

白のフリル多めのロングワンピースの上にベージュ色のムートンコートを組み合わせた物。しかも明らかに安物ではなくモデルが着るような高級感のある。そんな気合の入ったファッションすれば

褒め言葉を送る配慮しないといけないだろう。


「そ、そうなの・・・かわいいんだ。えっへへへ、まったく嬉しくなんかないけど、ありがとうお兄ちゃん」


(いや、ものすごく喜んでいるだろ!)


そうツッコミそうになる衝動をぐっと堪える。家から最寄りの

ショッピングモールには喧騒としていて賑やかだ。中に入れば僕と瑠香も立派な往来の一員。

これが苦手なんだよなぁ。

二階にはアパレルショップがメインのエリアとなる。他もあるが

雑貨屋など隅っこにある。


「お兄ちゃん、これとこれ・・・

どれがいいと思う?」


心底どうでもいい事を訊いてきた。こういうのは男に正しい選択など難しいのだ。だけど、ある程度なら望みの言葉を言える。


「ほぉ、流石さすがは瑠香だ。こんな可愛いファッションセンスと審美眼しんびがんだ。脱帽だつぼうしたぞ瑠香の高いレベルを」


買ってという意味をはらんでいるのは順位が低い。この短い言葉に可愛い物を選び自慢行為に近い。もちろん例外もある。

ちなみに最愛の優衣ならそんな汚い裏を言わない女神ごとくだ。


「そ、そんなに褒められると照れるよ。えへへ、でも本当にどれにしようかな?よし!会計を済ませに行くね」


「ああ、ここで待っているぞ」


咄嗟に訊かれたから、嫌われる答えをすればよかったと後になってそうするべきだった悔やむ。

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