第9話―――黄昏会議その3―――

「それで、2年生や3年生の間ではナンパや部活勧誘など悪い噂があるわけだが―――」


ベンチの中央に座る晴幸が入手した情報に耳を傾ける僕達と部外者の今出川。晴幸を囲むように立つ僕らは考察する。説明をあら方、終えると今出川は手を上げた。


「あの、そのナンパや悪質な部活の勧誘だけど私もありましたよ」


「やはりか」


晴幸は重たいため息をする。


「・・・それで大丈夫だったのですか?」


この中で唯一のイケメンである

信綱は今出川を気に掛ける。


「うん、上手く断ったから。

・・・怖い告白があったけど仁科くんに助けてもらったし」


どうやら今出川もあったのか。それよりも最後にこの場にいらない情報を発言したことに意味があるのか?


「今出川さん。それ虎繁に惚れたって遠回しな惚気話のろけばなしじゃない?」


つまらない解釈した政治。


「あ・・・ち、違うよ。惚れたなんて言っていないよ」


くだらん言葉に律儀に応える。


「話が進まらねぇ・・・それで今出川」


中断させる意味と進ませたい両方の目的で僕は今出川に問う。


「は、はい!な、なんでしょう」


姿勢を正して問いを待つ姿勢。

思ったよりもずっと真面目なんだな。


「その告白した相手の学年や年齢。それと部活を教えてくれ。

あと時間帯や場所も詳細に」


「ちょ、ちょっと待って。

そんな一変いっぺんに言われても困るよ」


早口でまくし立てて尋ねるが戸惑わせる事になった。

心なしか残念そうにしている。


「あのなぁ虎繁。こう言うのは

優しく訊くんだよ」


呆れながら言うは信綱。


「優しくだと?」


「訊くにも順序があるだろ。

・・・それで今出川さんは執拗的に声を掛けた相手は覚えていますか?」


なるほど、まずは何度も声を掛ける相手をサイコパスがあると判断してそれ以外は除外しての問いか。必要最低限の簡単な質問とさわやかな対応。


「えーと一年の前田まえだくんと芥川あくたがわくんや藤堂くんや浜田くんや九条くんや立花くんや――」


「わ、分かりました立花さん。

ものすごくモテてらしたのは十二分に理解しました」


お、おう。なんだかすごい人数だな。間違いなく嘘だろうが実際にこれを言うの恥ずかしいとは思わなかったのか。とツッコミたい。


「あっ、もちろん皆さんに丁重ていちょうに断ったよ。

もちろん恋愛経験も無くって・・・

だ、だから仁科くん安心してねぇ!」


「はぁ、左様さようですか」


僕の顔を見て答えるなぁ。どうして僕にそれを伝えようとするかは

スパイとしての活動に好きという理由だろうけど残念だな。

僕は一度もモテったことなどない。というよりも優衣以外には興味もない。


「コホン。それで今出川さん。

常軌じょうきを逸した言動を感じた人はいないですか?」


咳払いして次に問うのは晴幸。

今出川は、指をあごに当てうーんと思い出そうとしてか選んで考える。実際に虚言はあるとしても一般的に美少女と呼ばれる奴なら何かあるだろう。


「上級生のチャラそうな人なら」


「チャラそうって」


ボツと呟いた僕の声を聞こえた今出川は指を向ける。


「だ、だって名前とか言っていなかったし。告白なのにナンパみたいで印象が強かったんだよ」


批判する今出川を僕は横目にし

天才の上にある鬼才きさいの晴幸に僕は言う。


「この場合、生徒会の新の生徒会長である松平副生徒会長と

十時ととき書紀と土方ひじかた庶務らに訊いてみる必要はあるなぁ」


「とくに土方さんは知っているかもしれない。それはともかく現生徒会長の前で失礼はするなよ。

一応あちらが上なんだからなぁ」


あの真っ直ぐな栗色のロングヘアーの左沢あてらさわを思い浮かべて気分を害した気持ちになる。何故か僕にだけ怒るあの無能生徒会長に。


「ハッ、あんな無能な奴に

こびを売るような事をするかよ。松平副生徒会長には尊敬はしているがなぁ」


「「「ハァー」」」


僕が当然の権利として率直で事実の評価に三人は盛大に呆れ果てた嘆息をした。な、なんだよ。


「あの・・・もしかして生徒会とは」


躊躇ためらう今出川は手を上げ尋ねる。どうして生徒会の名前が出たことに気に掛かったのだろう。


「ただの報告と尋ねる程度だ」


僕はそう答えるが今まで黙って頷いただけの政治は今出川に近づき

ひそひそと何か伝える。その間に

晴幸と信綱と話し合いだ。


「ええぇぇぇぇーーーー!?

あ、あの左沢萌歌あてらさわもえかと仁科くんが!」


大いに空に届くほど絶叫。

う、うるせぇーなぁ何を叫ぶんだと瞳に込めて向ける。っと今出川は顔を青くして政治は悪戯イタズラを成功したとサムズアップ。クールにやるなバカ外国人じゃあるまいし。


「そ、その仁科くんって左沢さんと仲がいいの?」


恐る恐ると訊いてくる今出川。

急に言うか迷うよう反応されて少し不安を覚えずにいられない。


「あー、最悪だなぁ。

廊下でばったり会うと話しかけて嫌がらせをする」


「・・・・・それで」


真剣な顔で続きを促す。ど、どうした何を言われたんだ?


揶揄からかって来るしウザいで一緒に食事とか帰宅とか

恥ずかしそうにして周囲を変な噂を広めようとする悪質で無能な

生徒会長だ」


今出川は顔をうつむき肩をぷるぷると震え始めた。

もしかして怒っているのか?

生徒会長を気になっているようだが・・・ハッ!?もしかして片想いか友人など友好的な関係かもしれない。だから怒っていたのか。


「や、やっぱり左沢はいい奴だよ。僕なんかに優しく声を掛けるし・・・その後、小馬鹿にするが。

真面目で見下すことはしない清廉潔白だ・・・僕だけバカにするが。

容姿端麗でいつも明るいからなぁ・・・僕には嘲笑を浮かべるが」


なんだか奴を賞賛することに苛立ってきた。なにが悲しくって褒めないといけない。いや少しアレンジして、なにが嬉しく褒めないといけないんだ。


「そうなの・・・仁科くんは左沢さんが気に入っているんだね」


(いや、全然。何方どちらかと言えば雲散霧消うんさんむしょうしろって願っているほど嫌いだ)


そうは思っても顔に出さずに心に留めて置く。大事な人なら配慮はする。


「ああ。大事な人とまではいかないが悪口を平気で許せるほど

気のおけない友・・・人だな」


くそ。なにが悲しくって友人と言わなければならないんだ。


「くっくく・・・」


「プッ、フフ」


笑いを堪える政治と信綱。んっ?

なにが面白いんだこのやり取り見て。


「仁科くん。わたし生徒会長には負けないからねぇ!」


「えっ?あっそうか。よく分からんが頑張れよ」


闘志を燃やす意味の分からない今出川に僕は頷く。

まさか僕が戸惑うなんてなぁ、生徒会長に根深い恨みでもあるのだろうか?

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