第6話モンスターは人の心に住み着いている

確か今出川と言ったか奴は何を企んでいるか分からぬまま放課後が訪れる。この時間になれば忙しくなるだろう。僕はカバンを持ちある場所へと向かう。


「仁科くん待って」


(チッ)


背中から奴の声。

内心、舌打ちし顔に出さないよう気をつけて過去の僕を思い出し

戸惑うボッチの反応でやり過ごす!


「わぁ!?い、今出川さん。

な、何かな?」


「・・・えーと、仁科くんだよね?」


「・・・・・そうだけど?」


首を傾げて戸惑うように演出。

少し汗が頬に伝っていくのが感じるなぁ。思考を巡らすのはこの場をどうするかだ。不自然な言動でもやり過ごす。この難題を!


「ほら、あの時と違いすぎて

私なんだか困ってしまって・・・

ううん。そんな事を言いたいんじゃなくて今日は私と帰らない?」


確信した。奴は何かを企んでいる。昨日の慮外者りょがいしゃな告白した男は奴の仲間で僕らの存在を探るでも出たか?


「あ、あはは。今出川さんの前だからカッコつけていたんだよ。

・・・お前、気安く声を掛けるなあ!・・・・そう言えば上手く行けるかな魂胆で」


死にものぐるいで努力したが、このコミュニケーションだけは苦手だ。先天的や後天的というより環境や友達の数や質や勉学などで

良くなると思っているが上手くいかずにいる。だから僕は苦しい言い訳が出てしまう。


「うーん、なんだかに落ちないんだけど・・・」


「た、大変に光栄なお誘いですけど・・・恐れが多いです。す、すみません」


「あっ!待って」


僕は奴の静止をなかば振り切り

教室から廊下に歩く。そして走る。少しして背後から声が響く渡る。


「えぇーー!?ま、待って本当に待ってよ逃げないで」


確か今出川の体育の成績は優れている。僕の成績は最下位である。

成績上なら体力や俊敏力など雲泥の差だろう。多くの人が今出川が追いつくと思うだろうが。

数分後、見事に逃げ切った。


「・・・・・」


(想像したよりも体力があったなぁ。けっこう遅れることになるなぁ)


職員室の前まで走ってしまった。

そのおかげで走るなぁ。と小言を言われた。すみませんと一言で済ませ目的地に向かわないといけない。只管ひたすら、階段を上り屋上に繋がるドアを開けて入る。


夕陽に照らされる屋上。ドアの前に立つ影が二つ。


「どうしたんだ虎繁くん。

まさか今出川さんに捕まったのか?」


心配するは、同じクラスの真田信綱さなだのぶつなだ。スクールカーストの最上位グループと言うのかそこの筆頭的な存在。

そして、クラスが僕に向ける嘲笑や蔑視を憤り悲しんだ優しい友人だ。


「いや、速く走ると目立つからなぁ。僕はすべて最下位の男だらかなぁ」


肩をすくめて返事をする。


「なんだよそれ。きみなら成績一位だって取れるだろうに」


ため息して優しい瞳を向け教室では言えなかった本音を言葉にして微笑む。


「まったくだ。ともかく虎繁とらしげが殴った奴の情報を流していたが止めてやったよ」


イケメンの信綱の隣に立つもう一人は同い年で同じクラス。


されど、基本的にボッチで成績が優秀の孤高の唯一の親友である山本晴幸はるゆき

左に眼帯と褐色の肌。顔立ちはあまり良くなく周囲からそれを

劣っていると扱われている。


ブサイクというだけで下に見る。

晴幸は誰よりも有能だと自信満々に言える。少なくとも僕は。

そんな頼れる相棒の働きで情報を止めてくれた。


「助かる。本当にスゴイ奴だよお前は。伊達に名前が山本勘助やまもとかんすけの本名だけはあるなぁ」


「はは、そう褒めるなぁ。

それがしはまだまだでござるからなぁ」


「いつも思うけど、それって

褒め言葉なのか?」


「「何言っている!!」」


僕と晴幸の声がハモる。


「山本勘助を知らないのかお前」


「し、知っているけど」


僕の問いにたじろぐ信綱。


「知っていてそれとは。

上杉謙信に崇拝しているのか」


晴幸は、目をカッと開き軽はずみな発言をした男を睨む。


「い、いや違うけど。

きみらの戦国武将のリスペクト

普通に引くからなあ」


呆れてしまわれた信綱。そんなやり取りをしていると後ろのドア越しから階段を上がっていく音が耳に入る。


「どうやら最後の一人が来たぜ」


僕はそう言って振り返りドアが開くのを待つ。

そしてドアノブを開き姿を現した長い黒髪を・・・風になびかせる美少女の今出川だった。


「あ、あれ?真田くんと山本来んがどうして仁科くんと」


「・・・どうしてここに?」


今出川は視線を彷徨うように動かし戸惑っていた。そして僕にその疑問を答える視線を向けられる。

返事が質問で質問を返すことになったが衝撃を受けると愚行だと分かってもやるんだなぁと学んだ。


「い、今出川さん!?」


僕の後ろ信綱は驚きの声を上げる。晴幸は前へと出る。


「これは、今出川さんではないですか。ここに何をしに?」


「は、はい」


今出川はずっと僕に向けていたが晴幸の問いに視線を向けざねばならない。今出川は言葉の続きを言う。


「仁科くんを鬼ごっこを」


(はぁ!?鬼ごっこだぁ)


「「鬼ごっこ?」」


次の声を合わせるは晴幸と信綱。


「ち、ちがうの。えーと、追いかけることがそう思って。

それよりも私は仁科くんと一緒に帰るのを誘ったら逃げて」


「へぇー、そうなんだ」


今出川の説明に、奴の後ろから声がした。今出川は屋上の外に出て

もう一人も前へ出る。


「遅かったなぁ」


僕がそう言うと苦笑する。


「いやぁー、屋上に行こうとしたら覗き込んでいた今出川さんに

捕まってね・・・」


コイツは尾田政治おだまさはる。かなり普通の黒髪と顔立ちの容姿。


「なるほど、つまり今出川が

僕にストーキングしたことか」


「ち、違うよ仁科くん!

け、結果的にそうなったけどすごく警戒しているあなたに声を掛けるとまた逃げられそうだったから、それしかなくて・・・・・」


もじもじして事情を語る今出川。

コイツがスパイだろう。

まったく政治はとんでもないのを招き入れたものだ。


「・・・・・な、なんだよお前ら」


三人は、温かいそうな視線をしていた。


「いや、だって学園1の今出川さんと付き合っていたなんて」


尾田政治は目を輝かせる。


「ようやく好きな人ができたのか虎繁」


さわやか微笑みの信綱。


それがしは嬉しいぞ」


晴幸まで自分のことのように

嬉しそうに歓迎してくれた。


「へ?あっ、違うの。

私達まだ付き合ってなくて――」


「ほうそれは後に付き合うと?」


政治は、ニヤニヤして問う。

やめろその顔。


「・・・・・なんだこれ」


強く否定しない疑問もあるのに

政治は何を面白いのかニヤけている。どんどん疑問が増えていく。

僕は嘆き天を仰ぎ見る。

今日は黄昏でキレイだなぁと

現実逃避するのだった。

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