第3話トラブル・ストライク

午後6時、僕は授業が終わると

一部の者しか知らない

部活の定期会議を向かう。進行はいい、会議は終わり一人で廊下を歩き、昇降口で靴を履き替える。


「ふわぁー、帰ったら奴が

いるのか」


義妹の瑠香るかが僕の帰宅を待っていると考えると

憂鬱ゆううつになる。

独白を出せるのは誰もいないから

だろう。

両腕を伸ばし外に出る。


「て・・・さい」


「んっ?」


どこからか声が聞こえる。

若い女性の声だ。

声調からして、不穏な予感がした。声の方に近づく。


「できません!」


「頼むよ。少しだけ、試しだと

思ってよ」


どうやら的中したようだ。

声がはっきり聞こえたので

やや急いで走り、その場所は体育館。耳を傾ける。


「何度も仰っても付き合えません。すみません」


「だから、そこをなんとか」


嫌がる女の子をねばりどうにかしようとする男の声。よく聞こえるので迷いなく進むと裏からだ。体育館の裏を回り、少し

膝を曲げ屈む。壁から顔を

極力、見えないよう出す。

今出川菫いまでがわすみれだった。太陽の女神の右手をつかむのは先輩らしき軽薄な男。


「やめてください!

何度、言われても付き合えません」


「なんでだよ。好きだって告白したのにていねいに断れても納得

しないんだよ。

食事だけでもいいだろ」


太陽の女神もガラの悪そうな奴に捕まったものだな。

見ぬふりの選択肢はない。

僕は、立ち上がり走った体で

出る。そして、指を突きつける。


「やめろ!今出川さんが

嫌がっているじゃいか」


「はぁ、なんだよ?

邪魔しないでほしいんだが」


少しキレ気味で睨まれる。

整った茶髪に耳にはピアスした

いかにもリア充らしい容姿。

性格は・・・まぁ最悪だろう。


「・・・貴方は!?」


1番に驚いたのは今出川だった。

ふん、助けに来た安堵ではないのか。まぁ、いい。


「僕は、今出川さんのクラスメイトだよ。声からして無理矢理は

よくないと思うんだ」


「何を言っているんだよ。

人ぎきの悪い事を言うなよ。

無理矢理じゃなくて、お願いを

しているんだよ!」


「なら、その手はなんだ?」


僕は、嫌がる今出川の掴む腕を

指す。ガラの悪い先輩はあからさまに舌打ちして敵愾心てきがいしんを遠慮なく向けてくる。

まさか、こんなに人が変わるとは

別の意味で驚きだ。


「チッ!・・・テメェ、

出ていけよ」


ドスの入った声。今出川は

肩を震えている。


「いやだ!お前が出ていけ」


「なんだとテメェ!」


今出川の腕を離した先輩は、

ゆっくりとした歩行で近づき

僕の頬に左拳が入る。

殴られた衝撃で、僕は地面に尻もちをつき顔を上げる。


「へっ」


もはや、チンピラだな。

きびすを返し今出川の

方へ向かう。今出川は何故か逃げずにいた。突然のできごとに

戸惑っているかもしれない。


「軽いパンチだな。

もう少し強いのはないのかよ

先輩よ。軽いのは頭か顔か?

そのバカな頭に理解できないか」


「あぁ!バカにしやがって」


あおると、チンピラは

激昂した。蹴りを入れられ倒れる僕の腹部に何度も蹴ってくる。

これだけ冷静さを欠ければ、

今出川が逃げる時間はある。

しかし、逃げてくれない。


(なに・・・しているんだよ!)


「へへ、弱いんだよ。

バカにして笑えるほどバカだな」


「や、やめて!

・・・私つき合うから。だから」


(はぁー!?なにを行っているんだよ、この女は!)


涙目で震える身体で今出川は

大きな声でそう言った。


「へぇー、ようやく決心したのか。心の広くって優しい俺に

感謝しろよ」


一方的で自称、優しい俺は

僕にそう言うと今出川に近づく。


倒れる僕は、顔だけ上げたまま

今出川は懸命けんめいりんとした眼差しをして

それでも恐れがあり、一歩と

足が退しりぞくのを見た。

恐くても、僕のためにそんな

ことを言ったのか。

どうして、知らない僕のために!


「うん。付き合う・・・その前に彼を保健室に連れて行きたいの

だけど」


「うーん、それはダメだな。

そこまでケガとか違うから」


「で、でも」


「あぁ!」


「ぁ・・・・・・」


今出川は、否定しようと言葉が紡げず口が開いたり閉じたりと

繰り返す。

まったく、ここまで圧力をかける

なんてみにくい奴だ。

最早、見ていられないなぁ。


「わるいが、付き合うことは

永遠にないぜぇチンピラ先輩」


「あぁ!まだ立てるのかよ」


「っー!?だ、だめぇぇ!!」


僕は、汚れた制服を払い

立ち上がる。またも暴力を振るおうとするチンピラ。

上げたこぶしを放つことはなかった。相手の足元をスライドする容量で足を払う。


すると、相手は顔から地面と

キスのうつ伏せで倒れた。

僕は咄嗟にチンピラ先輩の左腕を

掴み背中側に運びひね

上げる関節技の

ハンマーロック。


「痛え・・・あああぁ、

いててぇーーーよぉぉ!」


情けなく叫び上げる

チンピラ先輩。


「これにりたら、もう無理矢理なんてしないことだなぁ」


開放させ、僕が立ち上がる。

チンピラ先輩は、痛えと睨みながら立ち上がる。


「へへ、バカがあぁぁ!!」


右ストレートパンチ。僕はその

拳を相手の手首を拳で攻撃して

軌道を変える。


「なっ!?」


「2度目はない。どうする」


僕の感情がない、演技ではない

声音で最後通告。ただ、淡々と

相手を仕留めるを込めて。


「ひっ!?あぁぁぁぁーー!?」


悲鳴なのかよくわからない声を上げて必死に逃げていくチンピラ先輩。さて、ここまで恐怖フィアーを与えれば、

当分は今出川を手を出さない

だろう。


「え?・・・あの、助けてくれてありがとう」


今出川は、急変した僕に戸惑いながらも頭を下げてお礼を言う。


「いや、いい。

また、チンピラ先輩が襲ってきたら僕に相談しろ。

そして僕の素顔は秘密にして

くれ」


「あっ、うん。もちろん!

もしかして、貴方は私と

挨拶したいつも1人の人?」


そう認識していたのか。


「ああ、そうだ。

そのいつも1人の仁科虎繁にしなとらしげだ。

教室に入っても僕に声を

かけるなよ」


武力行使なのは正直、好きではない。いや、そもそも好んでする

ような奴は異常だ。

破滅した僕でもそれぐらいの

倫理観はある。

僕は、きびすを返し

家路にくために進む。


「ま、待って!」


「じゃあな」


僕は、今出川をこれ以上は話を

するつもりはなく手を振り

唯我独尊ゆいがどくそんに振る舞うのだった。

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