第2話リアルはストーリーがない

「ただいま」


玄関ドアを開け帰宅したと言葉を

告げる。

最愛の妹が失い郷愁と寂寥が

心を見えない矢で射貫いぬ

かれたような痛みが起きる。


「おそぉぉーい!

帰るの遅いよお兄ちゃん!」


腰を当てご立腹の新しい妹の

仁科瑠香にしなるか

長い黒髪をツインテールが似合い

戦意がありながら大きく純粋さを

印象を与える目。

華奢きゃしゃ白皙はくせきの肌。美少女の分類される容姿端麗。

前の僕なら見惚れてたり、

ドキッとしていたことだろう。


「はは、ごめん、ごめん。

ちょっと夜風が気持ちよくって」


「もう、散歩するなら

わたしにも言ってよねぇ。

い、一緒に行ったのに・・・」


その言葉に反射的に言葉が出そうになり、なんとかのどから出かかった言葉を飲み込む。

靴を脱ぎ義妹は機嫌が直らず

そんなに僕は作り笑いをする。半眼のままである義妹の背中についていきリビングに

入る。


「まったく、お兄ちゃんは

夜になるとフラフラするんだから。それで、よく成績上位に

キープできるよね」


「あー、はは。影で努力しているからかなぁ?」


義妹は、ソファーに座りローテーブルの前に置かれているファッション雑誌を広げて見る。


「どうして、疑問系?

お兄ちゃんいい加減なところあるけど隠していない」


僕は、一人分の距離を置いて

隣に座る。テーブルの上に

僕が愛読するノンフィクション

小説を手にし、挟んでいたしおりをテーブルに置き

読書に入る。


「えーと、どうして隠しているか。はは、気のせいだろ。

僕が瑠香に嘘は言わないよ」


どこか勘づかれることをしたのか

自分の行いを振り返るが、

一人の夜の出歩きが原因か。


「いや、もう他人行儀するような事ないじゃない!

ほ、ほら・・・わたしとお兄ちゃんって兄妹なわけだし」


・・・兄妹。なにが兄妹だ!


「そ、そうだな。

それじゃあ愚痴みたいなものだけど聞いてくれないか?」


「うん」


義妹は、雑誌を閉じソファーの上で正座にして聞く体勢になる。


「最近、僕の学校で変な噂が

流れていて困っていたんだ」


「なにそれ。ひどいの?」


「いや、すぐに晴天白日の下になる程度のもの」


「ふーん、ならいいけど」


真剣な表情ほ裏腹に素っ気ない

態度。

僕は外を微笑を浮かべ

内は不愉快にで顔をしかめたくなる。時刻が0時に回り僕は、二階の自分の部屋に戻る。

机の引き出しから紅葉の髪飾りを

出す。


優衣ゆい・・・」


父親が、再婚したのは優衣が

亡くなってから3ヶ月後だった。

それで継母と娘。一つ下の妹。

瑠香を話していると、憤りと

罪の意識に苛まれる。

優衣に申し訳ない気持ちと

僕の妹は優衣だけだと伝える。

そして翌朝、リビングで瑠香が

欠伸をして入ってきた。


「ふわぁー。お兄ちゃん

おはよう」


僕の中では、お兄ちゃんという言葉は優衣だけ許された聖なる

言の葉。

作っている目玉焼きを潰し

そうになるのを堪える。

歯を食いしばり、すぐに

表情を変え振り返る。


「ああ、おはよう瑠香。

なんだ?夜ふかしでもしたのか」


「ううん、勉強して遅くなった。

一応わたし受験生だからね」


「あまり根を詰めるなよ」


皿にトーストの上に目玉焼きを

乗せる。二人分を持って

ダイニングテーブルに置く。


「えへへ、ありがとう」


嬉しそうに感謝され、随分ずいぶんと僕に好かれているなぁ

と俯瞰的に冷静に思った。

朝食をほどんど会話もなく食べ終え瑠香は、準備をして途中まで

付き添うことになる。

空を仰げば僕の心理状態など関係なく快晴で、周りも明るく喧騒。

負を感じるものはない。

それが・・・居心地がわるい。


「瑠香、学校は楽しいか?」


何故か、そんな言葉が出た。

つい長くいると親しみの言葉が

出るかもしれない。

当然、瑠香は軽く目を見開く。


「お兄ちゃんが自分から

わたしの事を聞くのって、珍しいよね。・・・・・んっ〜と、

そうだね、普通かな?」


「そうか、普通なのか。

とりあえず普通ってなんだろう」


「あはは、なにその質問」


妹と生産性も向上心など欠片もない退屈な会話を続け、ようやく

開放したと一人、通学路に進む。

燦然さんぜん市立高校が

通う高校生となって、はや一ヶ月。

そして自称進学校。


「おはよう」「おう、おはよう」

「ねぇ、ねぇ見た !」「いや」

「やばみ!」「マジ卍!」


などなど学校が近づくにつれ

五月蝿うるさくなる。

僕は、校門をくぐると生徒実行委員に挨拶され仕方なく挨拶する。

そして、1年一組の教室に入ると

一部の周囲に見られたが、僕だと分かると興味を失う。この扱いに正直に言えば満足している。リア充なんてなるものじゃない。


「おはよう虎繁とらしげくん」


「なっ!?」


まさか、スクールカースト最上位である眉目秀麗びもくしゅうれいの人気者である。 人を

誰隔てもなく優しく接する。

黒髪ショートボブと特徴なのは

言動が自然なさわやか。

真田信綱さなだのぶつな

親しげに挨拶してきた。


「お、おはよょう真田さん!」


僕はここでピエロな気持ちで

上擦った声で挨拶。


「・・・そんなに無理しなくてもいいじゃないか?

虎繁くんは――――」


「そ、それよりも下賤げせんな僕に構わずにお友達と

お話されては」


教室の中央には、真田信綱の

中心としたスクールカーストの

メンバー達。

他の名前は、知らない。


「やば!情けで声をかけて

もらってあわててる。キモイ」


真田スクールカーストに確か

軽薄な茶髪のボブヘア女性。


「それな!やっぱ信綱

すげぇーよ!」


「マジでキモいなアイツ」


高校入学からしばらくしてスクールカーストができる。

学生からすればヒエラルキーが

ある程度、ないと学校生活に

支障がきたす。


僕は、最底辺。

一番下は周囲に人あらずいわんばかり扱われる。そしていじめの対象にされるの悲しい地位。

今やほとんどの学校は

格差社会ではなく階級社会だと

心に刻まれる。


「・・・・・・」


おし黙ったのは、その中心となるリーダー格の真田信綱。

僕は、肩をポンと叩き

通り過ぎる間際、小声で言う。


「落ち着け信綱」


「っ――――!!」


嘲笑と侮蔑の眼差しを一身に受けながら1番後ろの窓際の席に

座る。頬杖ほおづえして

窓からグラウンドを見下ろす。


今出川いまでがわさんだ!」


「やばい!かわいい!」


教室の連中がバカ騒ぎするのは

特定のスクールカーストに所属

せず一人でヒエラルキーの

頂点に降臨する存在。

男女関係なく目を奪われる

絶対的な美貌と風格。


「おはよう皆さん」


「「うおおぉぉぉーーー!

おはよう今出川さん」」


「「キャーーおはよう」」


アイドルのような扱いをされるのは学園で常に上位にいるからだ。

この自称、進学校は仮の進学校に

過ぎず超一流大学に進学した

ことはほとんどない。


(今出川菫いまでがわすみれ。仲間のデータによれば

学力は凄まじく。中学の全国学力テストで9位という。

運動真剣も抜群で部活の助っ人まで頼まれるほど。

とどめにわけのわからない

学園1の美少女ランキングで

堂々の1位。

だからこそ、せない。

奴がここに入学したことが)


こんな、進学校と呼べないものより開成などあるのに

なぜここを選んだのか。

笑顔を絶やさずに手を振る。

天上の存在みたいだ。

僕に目が合うと近づく。


「おはよう」


「・・・ああ、おはよう」


今出川は、天真爛漫な目を軽く見開き呆気に取られていた。

さすがというのか。すぐに明るい笑顔で戻り、自分の席へ向かう。

僕はその背中を見て考察する。


(少し素で答えたのがまずかったか。今出川に挨拶されれば

しどろもどろになるのが当たり前だったことを失念するとは。

これが奴の二つ名である

[太陽の女神]の所以ゆえんか)


腰まで伸ばすストレートロングの

黒髪は黒いダイヤのように

つややでウェーブ

がかっている。


(まぁ、奴とは関わることはないだろう)

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