第91話ユウシャちゃんナイトちゃんとプロレスする・ユウシャちゃんの部屋にて
「ねえユウシャちゃん、わたしはユウシャちゃんをわたしとは別なやり方をしているリーダーとして尊敬してるけど、悪く言ってみてもいいかな。本当は悪くなんてちっとも思ってないんだけれど」
「どういうこと、ナイトちゃん、説明してくれる」
「つまり、ユウシャちゃんはセンシちゃんみたいに物理攻撃や防御が得意だったり、ソウリョちゃんやマホウツカイちゃんみたいに回復魔法や攻撃魔法ができたりするわけでもない。それなのに、リーダーとしてパーティーをまとめ上げている。わたしはこのことを尊敬しているけれども……」
「けれども、なあに、なんなの、ナイトちゃん」
「『てめえがユウシャか。物理はセンシに劣る。魔法はソウリョやマホウツカイにかなわない。そんなやつがなんでリーダーやってんのか理解に苦しむね』あ、いや、これはわたしの本心じゃなくてね……ホントだ。ユウシャちゃんが言った通り、正反対のキャラクターで思ってもいないことを言おうとするとスラスラ言える」
「いや、すごかったよ。ナイトちゃん。ナイトちゃんがそんなことを言う女の子じゃないことがわかってても、心にズシンときたもん。そ、それじゃあ、あたしもナイトちゃんのことをそんなふうに言ってみてもいいかな。ナイトちゃんはナイトちゃんにしか装備できない専用装備があってすごいとは思うけれども……」
「けれどもなんですか、ユウシャちゃん。どうぞ言っちゃってください」
「『あんたがナイトか。ずいぶん立派なヨロイやソードですなあ。たいそうゴールドがお入り用だったんじゃあないですかねえ。それだけの金食い虫をリーダーだなんて祭り上げるとは……太っ腹なお仲間がいて良かったですねえ』これ、本当にそう思ってるわけじゃあないよ、ナイトちゃん」
「うん、わかってるよ、ユウシャちゃん。なんだか楽しくなってきちゃったよ。もっとやってみてもいいかな」
「どうぞどうぞ、ナイトちゃん」
「『あれえ、ユウシャさん。専用の特技とかお持ちになっていらっしゃらないんですか。わたしにはあるよ『かばう』というナイト職専用の特技がね。この特技で瀕死のパーティーメンバーを助けちゃうんだ。これぞリーダーにふさわしい特技だね』これってどうかな、ユウシャちゃん」
「いいよ、ナイトちゃん。なんだかゾクゾクしてきた。負けないんだから。あたしも続けちゃうよ」
「おおいにやっちゃってよ、ユウシャちゃん」
「『気のせいですかねえ。ナイトって職業の女の子は、他にも何人かお見かけしたような気がするんですが……そんな何人もいるような職業のお方がはたしてリーダーにふさわしいんですかねえ。ちなみに、あたしは勇者やらしてもらってるんですけれど、ほかに勇者やってる女の子には会ったことないんですよねえ。これって、あたしがものを知らないだけですかねえ。ナイトさんがご存知なら、ほかの勇者を紹介していただけませんかねえ』どう? これってどう? ナイトちゃん」
「すごい、すごいよ、ユウシャちゃん。なんだか興奮してきちゃった。ねえ、ユウシャちゃん。どうせなら、パーティーどうしでの言い争いってことにしない? こんな面白いこと、わたしたち二人だけで独占するなんてもったいないよ」
「それいいね。あたしのパーティーと、ナイトちゃんのパーティーがけなしあうふりをするのかあ。せっかくだから、二人でおおまかな流れだけでも考えてみない?」
「そうだね、ユウシャちゃん。じゃあ、二人で台本書いて見せ合いっこしようか」
「いいよ、ナイトちゃん。わたしも書くからナイトちゃんも書いてね」
……
「ねえ、ユウシャちゃん。会話文だけだと、誰がしゃべってるかわかりにくくない」
「ナイトちゃんもそう思う? 会話してるのが二人だけだったら問題ないのよね。カギカッコが一つ終わったら、一人の話が終わったてことで、次のカギカッコの文はもう一人が話してるんだなってわかるじゃない」
「そうだよね。でも、三人が話してると、じゃあ、残りの二人のどっちが話してるんだってことになるじゃない」
「登場人物が三人でそうなるんだったら、ナイトちゃんのパーティーとあたしのパーティー合わせた八人での会話なんてどうやって文章で表現しろって言うのよ。いや、あたしの頭の中ではこのセリフはこの女の子がしゃべってるんだよってしっかりイメージがあるんだよ。でも、それを文章にしようとすると、とたんにわかりにくくなっちゃうのよ」
「そうだよね、ユウシャちゃん。いったいどうしたらいいのかな。わたしも後で自分の文章読み返して見たら、誰がどの会話をしゃべってるのかちんぷんかんぷんなんだよ」
「いままで小説を読んだことはあったけど、書くことがこんなに難しいなんて思わなかったよ」
「ユウシャちゃんもそう思う? わたしもなんだよ。どうしたらいいのかな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます