第86話ユウシャちゃんモンスターマスターちゃんに相談される・モンスターマスターちゃんの部屋にて

「(ううう、マホウツカイちゃんにはああ言ったものの、ソウリョちゃんにどう伝えたらいいんだろう)」


「ユウシャさん、ちょっとよろしいですか」


「わ、モンスターマスターちゃんですか。びっくりしました。なんですか」


「とりあえずわたしの部屋に来ていただけますか」


「はあ、いいですけれども」


 ……


「とりあえず、お座りになってください、ユウシャさん」


「それで、なにか用事ですか、モンスターマスターちゃん?」


「その、先程のマージャンを見物させてもらったのですけれど、マージャンってとっても面白そうな遊びですのね。わたし、マージャンはしたことありませんし、ルールもよくわからないのですけれども。前々からマージャンというゲームがあるということは知っておりましたけれど、なかなかやる機会がなくて」


「ええまあ。面白いと言えば面白い遊びですけれど」


「でも、なんだか難しそうですね。いろんな模様をした四角いのがいっぱいあって」


「難しいと言えば難しいかもしれませんねえ。なにせ勝負ごとですから」


「やっぱりそうなの、ユウシャさん。マージャンって難しいのね。なんだかルールも複雑そうですし。そうよねえ。勝負の世界て言ったら、勝つか負けるかで皆さん一生懸命になられますもんねえ。そんな勝負が行われるマージャンを、物は試しにやってみたいだなんてわたしが言ったら怒られちゃうかしら」


「(なにか言いたいことがあるのかなあ、モンスターマスターちゃん。今はソウリョちゃんにマホウツカイちゃんのことでてんてこ舞いだってのに)いえ、そんなことありませんよ。一見難しそうに見えるかもしれませんけれど、試しにやってみればルールなんてすぐに覚えちゃいますよ。誰だって最初は初心者なんですから。それに、勝負を突き詰めようと思ったら難しいかもしれませんけれど、仲間内でワイワイやるのなら、マージャンってすっごく面白いんですよ」


「そうなの? じゃあ、試しにやってみようかしら。でも、わたしみたいなしろうとと一緒にやってくれる人なんているかしら」


「じゃあ、あたしといっしょにやってみますか、モンスターマスターちゃん」


「ユウシャさんがいっしょにやってくださるの、嬉しいわ。でも、なんだか見てたらあの四角いやつをみなさんお上手にかちゃかちゃやっていらっしゃって……わたしがモタモタしてたらお邪魔になったりしないかしら」


「そんなことありませんよ。誰でも最初は手元がおぼつかないものですし、マージャン仲間が増えるのは大歓迎ですから。マージャンに興味があるのならそう言ってくれれば良かったのに。あれ、そういえば、レトロゲームセカイであたしたちがマージャンしているところをモンスターマスターちゃん、よくニコニコしながら見ていませんでした?」


「そうなのよ。ユウシャさんたちが楽しそうにやっておられるのを見て、興味はあったんですけれど、『初心者が邪魔をするのも悪いなあ』と思っちゃって」


「そんなえんりょなんてしなくても良かったのに。


「でも、マージャンって五人でできるものなの?」


「いえそれは……五人でやる風にはマージャンはできていないですね。一人入ると一人抜けることになりますけど」


「あらそうなの。じゃあ、割り込むのは悪いわね。でも、ユウシャさんの話を聞いていたら、なんだかとってもマージャンをやりたくなってきたわ」


「じゃあ、今からやってみますか、モンスターマスターちゃん」


「ユウシャさんが付き合ってくれると言うのは嬉しいわ。でも、マージャンって四人でやるものなのでしょう。ユウシャさんがいっしょにやってくださるのはありがたいですけれど、もう二人はどうすればいいのかしら? その二人に、『モンスターマスターさん! なにをもたもたしてるの! これだから初心者とはやりたくないのよ』なんて怒られたら……わたし、怖いわ」


「(何が言いたいのかな、モンスターマスターちゃん。そんな、ちょっとのんびり牌を持ったりしたりしたからって、それで怒るような人がここレトロゲームセカイにいるわけが……あ、ひょっとして、そういうことですか、モンスターマスターちゃん)そ、そうですねえ。ひょっとしたら、そんなモンスターマスターちゃんを見かねて、割って入る人がいるかもしれませんね」


「そうね、ユウシャさん。わたしみたいな初心者がもたもたしてたら、ソウリョさんやマホウツカイさんみたいなマージャンがお上手な方が見かねてしまうかもしれませんね」


「そ、それじゃあ、今すぐ試しにやってみましょうか、モンスターマスターちゃん。牌……四角いやつのことを牌と言うんですけれど、その牌をポロポロ手から落としちゃったりしないでくださいね」


「わかったわ、ユウシャさん。それじゃあ教えてくださるかしら」


「ええ、今からマージャン卓のある部屋にいきましょう、モンスターマスターちゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る